第5話「蛍」

 二年生が卒業式に参加するのは、来年へ向けての予行演習なのだろう。

 とはいえ、立ったり座ったり、偉そうな人の長い話を右から左に聞き流して、当事者ではない者にとってひどく退屈な時間が流れる。こみ上げる欠伸をかみ殺している直斗なおとの横で、影三えいぞうは大きく欠伸をしていた。

 卒業生と共に歌う蛍の光、指揮棒を振るう音楽教師が、お前歌う時だけは元気だなと言いたげに、影三の方を見て苦笑した。

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