第4話「触れる」

 影三えいぞうに誘われた直斗なおとがギターを始めたから、ひとり軽音部がふたり軽音部になった。

「ここはグッといってジャーンとやって、そんでバーンと盛り上がるんだよ」

「なるほどわからん。もう一度やるぞ」

 感覚優先の影三の言葉はさっぱり要領を得ないが、上手く弾けないフレーズを何度繰り返すことになっても辛抱強く付き合うし、直斗はというと、弾けるようになるまで投げ出さずに食らいついていく。

 知ってる曲、好きな曲のがモチベも上がるからと、それぞれ好きなバンドの話をしている間に、二人はすっかり打ち解けていった。

 最後は視聴覚室のスピーカーから流れる音源に合わせて、何となく弾けた気分のなんちゃってライブが始まる。

「いくぜアリーナ!」

 教壇から架空の客席に向かって声を上げる、気分はビッグアーティストだった。


 小雨がぱらつき始めたけれど、帰る途中にCD屋へ寄るのは、二人にとって「いつもの」コース。

「おっ、新譜出てるじゃん」

 棚に伸ばした先で手と手が触れる。視線を辿った先は、ひょろりとした長身の少年だった。着ているのは二人と同じ制服だったが、ネクタイの色が違う。どうやら一年生らしい。

「あ……、ども」

 そろそろと引っ込める相手の手を影三はがっしと掴んだ。

「お前もこのバンド好きなの!?」

 軽音部が三人になった。

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