第4話「触れる」
「ここはグッといってジャーンとやって、そんでバーンと盛り上がるんだよ」
「なるほどわからん。もう一度やるぞ」
感覚優先の影三の言葉はさっぱり要領を得ないが、上手く弾けないフレーズを何度繰り返すことになっても辛抱強く付き合うし、直斗はというと、弾けるようになるまで投げ出さずに食らいついていく。
知ってる曲、好きな曲のがモチベも上がるからと、それぞれ好きなバンドの話をしている間に、二人はすっかり打ち解けていった。
最後は視聴覚室のスピーカーから流れる音源に合わせて、何となく弾けた気分のなんちゃってライブが始まる。
「いくぜアリーナ!」
教壇から架空の客席に向かって声を上げる、気分はビッグアーティストだった。
小雨がぱらつき始めたけれど、帰る途中にCD屋へ寄るのは、二人にとって「いつもの」コース。
「おっ、新譜出てるじゃん」
棚に伸ばした先で手と手が触れる。視線を辿った先は、ひょろりとした長身の少年だった。着ているのは二人と同じ制服だったが、ネクタイの色が違う。どうやら一年生らしい。
「あ……、ども」
そろそろと引っ込める相手の手を影三はがっしと掴んだ。
「お前もこのバンド好きなの!?」
軽音部が三人になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます