第2話「透明」

 両親から言われるままに、共学だからと深く考えずに選んだ高校だったから、そこが進学校の部類であると入学してから気が付いた。

 音楽が、ロックバンドが好きな影三えいぞうの言動は、他の生徒からは相当奇異に感じられたようで、次第に距離を置かれるようになり、今やクラス内で、まるで透明な存在であるかのようだった。

 それでもいい、俺にはロックがある。そう強がっていても、やはり寂しいものは寂しい。バンドは、ひとりではできないものだから。

 退屈なホームルーム、担任の話を右から左へ聞き流していると、

「今日からクラスに新しい仲間が増えます」

 転校生なんて、まるで漫画のようだ。そう思いながらクラスに入ってきた生徒を見て、影三は思わず声を上げそうになり、慌てて自分の口を手で押さえた。

「彼は新津 直斗にいつ なおと、親御さんの仕事の関係で転校してきた。皆仲良くやってくれ」

「よろしくおねがいします」

 ぺこりと頭を下げた男子生徒は、昨日傘を貸してくれた彼だった。

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