第3歩 超法的機関の部活テワレス

 ここに来て数日が経ち分かったことだが、この学園都市アースの生徒たちは皆、女神の加護によるという不思議な力を宿しているらしい。

 この紋章は彼女たちの「身体能力」、「判断力」、「思考力」、「空間能力」、時には「異能力」などといったものも含め、ありとあらゆる能力を向上させる特質したものだ。

 聞くとこによれば、生徒にしか与えられない特別な紋章であるみたいだ。

 ──だが興味が唆られるのはそれだけではない。

 この“紋章”は極稀にだが覚醒することがある。死の瀬戸際……つまるところ、自身が窮地に追い込まれれたとき。または精神的に追い詰められたとき──己の殻を破り限界を突破し、紋章は新たなる紋章へと進化を遂げる。

 このときこそ、紋章はその真の効果を発揮する。

 ──しかし、それが愛すべきものを救う“天使の覚醒”なのか……それとも、周りを憎み嫉妬し、憎悪の念を抱きそれに支配され、すべてを破壊し蹂躙する“悪魔の覚醒”なのか、これを判断するには、その時にならなければ分からない……としか言いようがないのである。


 〈日記ノート生徒の不思議:番号001の②ページ〉より


 *    *    *    *    *


「……すみません……少し……取り乱して……しまいました」

「取り乱すのも無理はない。これからどうすればいいんだか」

「──そう言えば、副会長」

「はい、何でしょうか?」

「その〜お隣にいらっしゃる方は一体……」

 少女がそう言うと、残りの生徒二人も美月と私の二人に視線を飛ばす。

「説明がまだでしたね。この方は連合生徒会長がお呼びになった先生です」

「「「せん……せい……?」」」

 美月の発した言葉に3人は頭にクエスチョンを浮かべていた。

「先生は部活テワレスの顧問として、連合生徒会長が自ら決定されました。ですので、この決定は連合生徒会長の意思であり、覆ることが無いことを頭に入れておいて下さい」

 まだ理解が追い付いていない様子の3人に遠慮なく美月は話を続けた。


 ──数分前のエレベーター内にて


「──先生、“超法的機関テワレスの責任者”になって頂けないでしょうか?」

 エレベーターが降下するなか、唐突に美月からそんな言葉が飛び出してきた。

「突然驚かせてしまい、申し訳ありません。言葉が足りませんでした」

 美月は一度向き直り、恐縮そうな顔で私に謝る。

「少し困惑されているようですので1から説明致します」

 そう言うと、美月は話し始めた。

「先生もご存知だと思いますが、この学園都市アース全体の治安を管理するのが、私たち連合生徒会の役割です。連合生徒会には様々な役職があり、またその役職の委員会は年に1つから2つ増えたり減ったりしています。──そして、その連合生徒会の委員会を束ね、圧倒的人気とカリスマ力を兼ね備えたのが──」

「──連合生徒会長、でしょ?」

「はいっ…………ん?」

「……ん? どうかした?」

 エレベーター内に何とも言えない微妙な空気が流れた。

「先生……話せたんですね……」

「……話せるよ?」

「先ほどまで一言も発さなかったので、一瞬自分の耳を疑ってしまいました」

「……ごめんね」

「いえ、謝らなくても大丈夫です。では気を取り直して続けますね」

「うん、続けて」

「現在、連合生徒会にはテワレスという1つの部活が存在します。この部活は今や行方をくらました連合生徒会長が作られた、最高権力が付与された超法的機関及びアース全体に影響を及ぼす唯一無二の特別な部活です。これは連合生徒会長と同等の権利を与えられることに等しいです。主な仕事は情報収集、生徒や地域の人との触れ合い。あとは連合生徒会への書類提出ですね。そして、そのテワレス顧問の責任者(仮)とした呼ばれたのが──」

「──私だね」

「はい、そのとおりです」

(だから、さっき美月はあんなことを口にしたんだね)

「それで先生……顧問になって頂けますか?」

(連合生徒会長がどうしてそこまで、私にテワレスの顧問になってほしいかなんて理由は分からない。……でもこれはきっと何か“意味”があるのかも)

「分かった」

「……!」

 私の答えを聞いた美月は深々と頭を下げた。

「先生。この度は唐突な連合生徒会長の無理難題に応えて下さり、本当にありがとうございますっ」


 ──現在


「なるほど、そう言うことか」

「……連合生徒会長……直々の指名……中々に面白い……」

「だとしても失踪するとか勝手よね〜。まったく」

 彼女たちも各々生徒会長に思うところがあるようだ。

「──それで副会長。こんな話をしたからには、何か案があるってことよね?」

「はい、もちろん。準備は出来ています」

「そう……。で、私たちは何をすればいいの?」

 

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学園戦争(新) 小鳥遊 マロ @mophuline

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