第十六話 時空を超えた二人の巡り合わせに!

 昼間夕子の思惑はことごとく外れた。

女子生徒は着替えを終えている。

夕子と朝霧美夏が最後になった。


「朝霧先生、教師って因果いんがな商売ですよね」

「そうね。子どもたち残して先に帰れないし、

ーー いつも最後になって忘れ物の確認をして、

ーー 日誌と言う宿題が残っているわ」


「昼間先生は、これから、どうされますか」

「そうね、特にないから外食して帰ろうか考えています」

「じゃあ、ご一緒してもいいかしら」


二人は、背中を向けて着替えていた。


「昼間先生、二の腕の痣、私もあるのよ」

「えええ、それ、本当なのですか?」


「ほら、これよーー 最近になって気付いたのよ」


「なんか、声が聞こえていましたか」

「そうね。見つけてーー とか」


 夕子と美夏は同じ声に導かれていた。

夕子は、言葉を失った。

二人は、プールの更衣室をあとに書店があるビルのレストランに寄ることにした。


「朝霧先生、ここで良いかしら」

「私は、何処でも昼間先生にお付き合いしますわ」


 夕子と美夏の遠い前世記憶が一瞬よみがえる。

 いつの時代かしら、知らない街並みの景色が次々に浮かんだ。

 夕子は勇気を起こし美夏に尋ねてみた。


「あの先生は、前世とか生まれ変わりとか信じますか」


「私は、スピリチュアルには関心がありません。

ーー でも生まれ変わりはあると思うわ。

ーー だって魂が生まれ変わら無いと矛盾が生じるわよ。

ーー 人間が人間を誕生させる矛盾よ。

ーー つまり、母親が神さま的存在になってしまう矛盾が起こるのよ」


「私は、三日月未来の小説かぐや姫が大好きで、

ーー よく読むのよ」

夕子の嘘を美夏は見逃してくれない。


「昼間夕子先生、もう一つのお名前は、

ーー 三日月未来じゃあなかったかしら」

夕子の顔色が変わる。


「私の前世記憶は、昼間先生と何度もお会いしているのよ。

ーー 三日月未来の小説そっくりにね」


「そんなこと、あるかしら・・・・・・」

夕子はとぼけるが美夏には通じなかった。


 夕子は、何を言えばいいのかわからなくなっている。

ミイラ取りがミイラになる気分だった。




「昼間先生は、未来ですよね」

「そして、私の前世記憶は、三日月よ」


 昼間夕子の頬を雫が流れて止まらない。

「先生、このハンカチをお使いになって」


 夕子は、朝霧美夏から渡された薄色のピンクのハンカチを見つめた。

ハンカチに三日月の刺繍ししゅうほどこされている。

そこには、最愛なる未来へのメッセージが刻まれていた。


「あなた、かぐや姫なのね」

「違うわ、私はあなたと契りを結んだ三日月よ。

ーー そしてあなたが未来ね」



 二人は、再び出逢った。

長い時の流れの中で。


[未来、おめでとう・・・・・・契り、見つけたのね]

夕子の頭の中から、三日月の声が聞こえた。

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