第十四話 文芸部のプール日和

 猛暑が続く中、昼間夕子は、神聖学園の中の廊下を往復している。

前から夢乃神姫ゆめのしんきがやって来る。


「ヒメ、今日は定例会だな」

「ええーそうでしたっけ!」


とぼけるのが上手うまくなったなあ」

「先生、張り切り過ぎですよ」


「この廊下だって、暑いだろう。

ーー 水浴びは熱中症予防にもいい」

「そうですが・・・・・・」


「水着とバスタオルは持って来ているのか」

「とりあえず・・・・・・」


「まだ渋っているのかな」

「そうじゃないですが、まさか」


「まさかってなんだ」

「だって文化部ですよね」


「そうだが文化部が水浴びしてはいけないのかな?」

「水浴びですか?」


「そうだ、プールで競泳するなど一言も言って無いだろう」

「そうですね」

 

「それとも、水着姿が嫌なのか」

「いいえ、マッチョじゃ無いし・・・・・・」


「ん、ヒメがマッチョに見えないのは分かっている」

「でしょう」


「じゃあ、あとで、部室に集合してくれ」

「じゃあ、先生、あとで」




 放課後、夕子は体育館教師の朝霧美夏あさぎりみかと一緒に文芸部の部室に到着した。

 神聖学園は、女学園から共学に移行した関係で、生徒以外の関係者は教師を含めてすべて女性だった。


 朝霧美夏は、背丈一六八センチにポニーテールの美人教師で年齢は昼間夕子より一歳年下だった。


「みんな、知っていると思うが体育教師の朝霧美夏先生がーー

今日の水浴びをお世話してくれるそうだから心配無用だ」


「じゃあ、日向さん、部員の点呼をお願い」


「夢乃神姫さん、

夢乃真夏さん、

白石陽子さん、

川神遙さん、

山白麗奈さん、

以上、私を含めて六名全員出席しています」


「じゃあ、忘れ物無ければ、プールに行こう」



 文芸部の全員がプールの更衣室に到着した。

「お前たち、帰りによくある忘れ物だが

ーー パンツの履き忘れには注意してくれ」

「ヒメもなーーじゃあ、ヒメは男子更衣室で着替えてくれ」


「先生と残りは女子更衣室で着替えよう」


 昼間夕子と朝霧美夏が更衣室に入り女子生徒たちも続いた。



 夕子と美夏は、流行りのパレオを腰に巻いている。

 夕子のは、オレンジのビキニに赤い花柄のパレオ。

美夏は、ブラックの競泳水着に同じ色のパレオ姿だった。


「先生たち、パレオなの、ずるい」

真夏がほっぺをふくまらませている。


「そりゃあ、先生だからな」


「じゃあ、私は、ここのリクライニングシートで見ているから、みんな楽しんでくれ」

「先生も暑くなったら、水浴びするから・・・・・・」


 朝霧先生がみんなを手招きしている。

「みんな集まって、プールに入る前に、準備体操よ」


 文芸部員は、朝霧先生の準備体操を真似ていた。

ヒメは真夏の横にいる。


「じゃあ、準備体操を終えた人からプールに入ってもいいわよ」

朝霧美夏の声を夕子は、後ろで聞いていた。

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