第13話 新たな生活

 ダンジョン内に入ると、ミサリオが次々に子供たちを転送陣に送り込んでいた。


「兄ちゃん、あれなんだ?」

「あれは転送陣、ある場所に一瞬で行けるものだよ。ほら俺たちも乗るぞ」


 最後となっているニックとともに俺も転送陣の上に乗り込む。ちなみにこの転送陣は俺たち専用のもので、直接ダンジョン奥である俺たちの居住空間へとつながっており普段は隠し扉に隠している。そうしないとダンジョン攻略者が使ってしまっては目も当てらなくなるからだ。



「おっ、最後の子も来たね。こっちにきて」


 転送陣から出ると、ミサリオがニックを含む俺とともに乗った子供たちに向かい手招きをしている。


「さぁ、まずはみんなお風呂に入ろうね」

「おふろ?」


 この世界には風呂に入るという文化がないらしく、当然子供たちは何のことかわからない。


「えっとね。まずは、体をきれいにしましょうね、美味しいご飯はそのあとだよ」


 俺たちは昼前に出発したわけだが、実はまだ昼飯を食ってない。どうしてかというと、俺たちではその飯を用意できなかったことと、ここには昼過ぎぐらいにはつくことが予測できたからだ。どうせならここでうまい飯を食わせてやりたいからな。しかし、ミサリオが言うにはその前にまずは風呂だという。まぁ、ここまでの段階で説明していなかったが、実は子供たちは正直かなり汚い。それはそうだろう、子供たちはこれまで孤児としてまさにストリートチルドレンをしていた。その際に体を洗うなんてことができるわけがない。また、服だって洗えるわけがないためになんというかほんとにひどい状態だ。実はミサリオが顔をしかめた理由の1つがこれだ。といっても別にミサリオが綺麗好きで汚い子供たちを嫌がったというわけではもちろんなく、こういう状況まで放置されていたということに憤りを感じたからでしかない。なにせ、ミサリオは今現在も動けなかった子供を抱き上げている最中だからな。


「さぁみんなこっちだよ。おいで~」


 ミサリオはそういいながらを開け放った。あんなところに扉なんかあったかと思いながら、そのあとをついていく。


「ここがお風呂、こっちが女の子でこっちが男の子だよ。女の子はここにいるメイドさんについていってね。男の子はおじさんたちについていってね」


 ミサリオがいうおじさんたちというのは、もちろん俺たちではなく執事たちのことで、全員がいわゆるイケオジってやつだったりする。というのもメイドたちは俺たち男たちと女性陣の一致により若い年齢としているが、執事たちは女性人たちの趣味で決まっている。うちの女性陣は若いイケメンよりも年上のイケオジの方が好きらしい。とまぁ、それはいいとして子供たちはそれぞれメイドと執事の後について風呂へと向かったのだった。


「それじゃ、もう一度上行くよ。そろそろ向こうも帰ってくるだろうし」

「はい」


 ミサリオは意気揚々と再びダンジョン入口へと向かったのだった。


「ミサリオの奴ずいぶんと楽しそうだよな」

「そうね。子供が好きだって言っていたからね」

「保育士だったみたいだし、仕事がきつかったからやめたと以下言っていたけれど、たぶん相当に未練があったんじゃない」

「だろうな」

「それで、俺たちはどうする?」


 一応の意味でついてきたわけだが、放置されてしまい何をすればいいのかがわからない状態となった。


「とりあえず、買ってきた布をリリアンに渡しておきましょうか」

「そうだね」

「それならちょうどいいしもらうわよ」


 背後からそんな声がしてちょっとびっくりしたら、そこにリリアン本人が数人のメイドを引き連れて立っていた。


「リリアン、驚かさないでよ。どうしたの?」

「子供たちがお風呂に入っているんでしょ。なら着替えがいるじゃない、届けに来たのよ。ついでに子供たちの採寸もしたいし」

「ああ、なるほどね。それじゃ私たちも手伝うよ」

「ありがと助かるわ」


 ということでルナとアカネ、アリアロッテの3人はここからリリアンを手伝い子供たちの採寸をすることになった。

 俺はって、採寸なんてどうやればいいのかわからないから無理。というわけで、今度は俺だけが何もすることがない状態となってしまった。


「仕方ない、それじゃ俺は出迎えの方に行くか」

「そうしたら、こっちの子はまだ1人でも動ける子がそれなりにいたけれど、向こうはほとんどの子が動けなかったからね」

「まじか、それって大丈夫なのか」

「さぁ、それはここについてから医療班に任せるしかないでしょ」

「まぁ、そうだな。とにかく行ってくる」


 そういうことで俺は急いでダンジョンの外へと向かった。ちなみに医療班というのは医療知識を持ったメイドや執事のことだ。俺たちメンバーにはそうした知識はないが、ネット上などからダウンロードはできる。そこでフローレンとガルマジオの2人にインプットしてもらっていたというわけだ。その理由はやはりゲーム内でもキャラが病気になることがあったからだ。そういう場合まさか現実の医者にゲームのキャラが病気に、なんて言えるわけがないからな。一応ゲーム内にも医者というものが存在していたので通常はそこに行く。しかし俺たちみたいにギルドを作っている奴は大体NPCにそうした知識を持たせて対応していた。だからだろう実はゲームの公式ページにかなり詳しい最新医療データがあったんだよな。



 俺がダンジョンの外に出ると間もなくディアルブ達が帰ってきた。


「おう、そっちの方が早かったか」

「そうらしい、それよりリリアンから聞いたが、そっちの子供は結構やばいんだって」

「ああ、ちょっとなミサリオ医療班は?」

「ちゃんと呼んでるよ。みんなお願い」

「はい」


 その後ミサリオの支持を受けたメイドたちが一斉に動き出し、子供たちの元へと向かうのであった。


 それから、医療班によって手早く簡単ではあるが子供たちの状態がチェックされ、大丈夫とのことでほっと胸をなでおろしたのだった。そして、当然この子供たちもすぐさま風呂へ入れられたのは言うまでもないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎週 金曜日 00:00 予定は変更される可能性があります

メルトアイネ 夢限 @dunshiaocun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ