第10話 孤児との交渉

 街にいた孤児たちについて、ギルドメンバーたちと話をしている最中、いろいろ話が決まりかけていたところで、ディアルブが何か言いにくそうに切り出したが、一体なんだろうか。


『実は、俺たち側でも孤児を見つけて、相談しようと思っていたんだよ』

『そうそう、こっちもいるのよね』

「まじか、まぁ、おかしくはないが」

「そうですね。この街でのことを考えると、同じ国ですから」

「そうだよねぇ。それで、そっちはどんな感じ?」

『こっちでもほぼ同じだな。年齢もそのぐらいだし、数も男が10、女が5ってとこだな』

『15人追加だね。それぐらいなら何とかなると思うから、連れてきて、あっでも、その分メイドを使うけどいいよね』

「それは当然構わないぞ」

「そうですね。ですが、一応希望を聞いてください」

「わかってるって、あの子たちだって今はちゃんと生きているんだもんね」

「そういうこと」

『ところでエリベルト、そちらの孤児たちも古びたものを着ているのかしら』

「んっ、ああ、そうだなぁ、確かにぼろいの着てたな」

「ええ、そうですね。リリアンに頼もうかと考えていました。問題ありませんか?」

『それは愚問だよアリアロッテ、私を誰だと思っているの、古びたものを着せるなんて耐えられないよ。今、私の頭の中は次々にアイデアが浮かんでてね。今すぐにでも作りたいんだから』

「お、おう、そうか、それなら孤児たちの服を頼む。リリアン」

『任せて、あっ、そういうことだから布を大量に買って着て頂戴』

「布を? ダンジョンのでいいんじゃないか」


 俺たちも結構大量に布を持っている。というかほとんどリリアン管理だけど、まだまだあるはずだ。


『あれって、私たち用だから当然普通の布じゃないのよね。防御力とか耐性とかすごいのついているし、まぁ、子供たちにも同じような装備を身につけさせてもいいんだけど、それはそれで違うじゃない』

『ああ、そうだな。今はいいけれど将来俺たちの元を出た際に、普通に服着たら』

『大変なことになりそうだな』

「言えてるな。ということは子供達にはなるべく普通の布がいいか」

「そうですね。それがいいと思います。幸い私たちも換金によっていくらか余裕がありますから問題ないでしょう」

『アリアロッテの許可も出たし、お願いね』

「わかった」

『あっ、それとさ、私だけ先にダンジョンに戻って、子供たちの服を作るから』

「おう、任せた。1人じゃ足りなきゃメイドたちに手伝ってもらってくれ」

『了解』


 こうして話が大体まとまり、それからもいくつかの話を決めて、明日さっそく孤児たちを集めてダンジョンに戻ることになった。



 翌日、俺たちはそろって冒険者ギルドへやってきていた。


「おはようございます。エリベルトさん、本日はいかがいたしましたか?」


 昨日俺たちの担当をした受付嬢の前に立つと、何ようかと聞いてくれた。


「ミガルドって冒険者がどこにいるかわかるか、ちょっと用があるんだけど」

「ミガルドさんですか、どのような御用でしょうか?」


 ミガルドというのは、実は元孤児でいろいろ調べているときに、怪しい奴と思われて声をかけられた男だ。というか孤児の数はこのミガルドから聞いている。


「ちょっとな、何ならエリベルトが例の件で至急話したがっているって伝えてくれるか」

「例の件、ですか? わかり……あっ」


 伝言を頼んでいると、受付嬢がそんな反応を示し背後を見た。するとそこにはちょうどギルドに入ってきた数人の男女の仲にミガルドを発見した。


「ちょうど来たみたいだな。悪いな」

「いいえ」


 受付嬢に手間をかけた詫びを入れたのち、俺たちは今は言ってきたミガルドの元へと向かったのだった。


「よう、昨日ぶりだな」

「お前昨日の、確かエリベルトだったか」

「ああ、昨日のことで話があるんだが」

「もしかして、あれ本気か」


 昨日ミガルドには俺たちが孤児を引き取りたいということを話していた。


「本気だ、昨日仲間たちとも話して正式に決まった。だからつなぎを頼みたい」

「本気なんだな」

「ああ」


 しばしの間にらみ合う俺とミガルド、男同士で見つめあっても面白くもないが反らすわけにはいかない。


「わかった、ついてきてくれ」

「おうわかった」


 俺の本気度を認めたようでミガルドは後についてくるようにと言って、ギルドを出たので俺たちもそのあとに続く。



 それから、しばらくミガルドについて歩ていくと、孤児がいる路地に入っていくのでそのあとをついてあるいくいく。そして、その路地をしばらく歩いていると、ちょっとした広場に出た。


「ニック、いるか」

「なんだよ。ミガルド兄ちゃん、ていうかそいつら誰だ」


 ミガルドが声を張り上げて誰か名を呼ぶと、近くの建物から1人の少年が出てきた。年のころなら小学校6年ぐらいに見えるので、おそらく最年長の子供だろう。


「喜べ、こいつらはお前らを引き取ってくれるそうだ」

「引き取る? 何言ってるんだよ兄ちゃん、というか引き取るならちびどもだろ」


 ニックと呼ばれた少年は自分よりも、小さい子たちを引きとれと言っている。


「いや、俺たちはこの街の孤児全員を引き取るんだ。もちろんニックお前も含めてな」


 ニックが勘違いしているようなので、俺がそう説明した。すると、ニックは驚愕に目を見開いている。


「な、なに言ってるんだよ。俺たちは全員で16人もいんだぞ。そんな数無理に決まっているだろ。そうか、お前ら俺たちに何をさせる気だよ」


 ニックはさらに何かを勘違いしているようだ。


「何もさせないよ。私たちは君たちを助けたいんだよ」

「うんうん、私たちと一緒に暮らそう、きっと楽しいよ」


 ルナとアカネがニックに笑顔でそういって、ほほ笑むものだからニックが少し顔を赤らめている。さすがアイドル、こういうのは得意だな。


「そうですね。私たちはあなたたちを保護するために引き取ります。いかがでしょう、私たちの元へ来れば毎日お腹いっぱい食事をとり、綺麗なお洋服もありますよ」


 アリアロッテがまるで商談みたいなことを言って勧誘し始めた。今思ったんだが、アリアロッテの言葉遣いって子供相手だと硬くなるよな。


「ほ、ほんとか?」


 ニックは疑いながらもミガルドを見ている。


「さぁな。俺にはわからないが、こいつらは信用してもいいと思ってる。俺の目が確かなのはお前も知っているだろ」

「知ってるけど、でも」

「疑うのも無理はないけど、俺たちは本気でお前たち孤児を引き取ろうと思っている。それに俺たちには仲間がほかにもいるからな16人ぐらい訳もない。だから安心して俺たちに保護されてもらえないか」

「ほ、本当なんだな」

「ああほんとだ」

「ええ、そうですよ」

「そうだよぉ」

「私たちを信じて」


 それから少しの間ニックは考えたのち、ついに首を縦に振ったのだった。


「わかったよ。あんたたちを信じるよ」

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