第9話 孤児を見つけてしまった
初めての依頼を受けて、その依頼をあっという間に完遂。これにはもちろんギルドも驚いていた。それというのも普通この依頼を受けると数日はかかるという。
「さて、これからどうする?」
「なにか受ける?」
「いえ、それより情報を集める方が先でしょ」
「あっそっか、それがメインだったね」
俺たちは何も冒険者となるためにここに来たわけではなく、この世界がどんな世界かを知るための情報収集のためにやってきた。冒険者に登録したのはただ身分証を獲得したかったのと、単純に冒険者にあこがれただけだ。
「本格的にやるのは後でいいとして、飯食って午後は聞き込みでもするか」
「そうね」
「そうだねぇ」
「うん、そうしよ」
というわけで午後、俺たちはさっそく二手に分かれて情報集めをすることにした。
「それじゃ、あとで」
「うん、じゃね」
俺とアリアロッテ、アカネとルナで別れての行動だ。ちなみにこの組み合わせはローテーションによるもので、前回こうして別れるときに俺とアカネ、ルナとアリアロッテとなっている。
こうして情報を集めたわけだが、あまりいい情報は入ってこなかった。
「大体セビスチャンが集めた情報ばかりだな」
「そうね。それは仕方ないわよ。違う街といっても隣町だし、そうそう新しい情報はないわよ」
「それもそっか」
それからも俺たちはあちこちに聞き込みをしていった。
そうこうしていると不意にアリアロッテが言った。
「ねぇ、それよりもずっと気になっているのだけれど」
「なんだ?」
「あの子たち」
アリアロッテがそういってみた方を見てみると、そこには地面に座り込んでいる子供がいた。実は俺も聞き込みをしていてずっと気にはなっていた。
「なんだか、あまり知りたくはないが、聞いてみるか」
聞かなくても答えはわかっていて、あまり知りたくない情報なんだが、気になって仕方ないし聞いてみるかと思い、近くにいた人に聞いてみた。
「ちょっといいかな?」
「はいよ。なんだい?」
「実はつい最近小さな村からこの街に来たばかりで、街のことがよくわかってないんだけど」
「あら、そうなの。頑張ってね。それで何を聞きたいんだい」
人の好さそうなおばさんで、親切に聞いてくれたので遠慮なく聞いてみることにした。
「えっと、あの子たちのことなんだけど」
俺はなるべく世間知らずを装って聞いた。
「ああ、あの子たちねぇ。あの子たちはかわいそうだけど、孤児なんだよ。亡くなった冒険者の子供とかでね。私たちも気になってはいるんだけれど、こっちはこっちで生活がいっぱいいっぱいだから何もしてあげられないんだよ」
ある程度予想はしていたが、やはり孤児ということだった。
「領主とか教会は何もしないの?」
俺も疑問に思っていることをアカネが聞いてくれた。
「しないねぇ。教会ってのはお祈りをする場所だからね。子供なんて引き取っちゃくれないよ。領主様もそういうのはしないからね。かわいそうだけど、何もできないんだよ」
「なるほど、そうなんだな」
「ほんと、かわいそうだよね」
「うん」
「そうね」
「いやま、ありがと」
「いいさね。また何かあればいつでも聞きな」
「ありがとうございます」
こうして子供たちのことを聞いた俺たちはその場を去ったのであった。
「さて、どうする?」
おばさんから離れた場所にやってきたところで、相談することにした。
「どうしよっか」
「困ったわね」
「できれば引き取りたいよね」
「そうなんだけどな」
この目で見て聞いてしまった以上、もしこのまま放置すればきっと後悔する。そう考えると引き取るべきなんだと思う。でも、町全体となると孤児の人数もそれなりにいるだろうし、何より俺たちはみんな独身、つまり子供の世話なんてできる者はいない。そうなると引き取ったところでちゃんと育てることができるのかなどが不安になる。
「とりあえず、今孤児がどのぐらいいるのか調べてみるか」
「そうね。まずは数を知る必要があるでしょう、もし少ないのであれば大丈夫でしょうし」
「そうだね。それじゃ、手分けして調べよう」
「だね」
というわけで、さっそく俺たちはそれぞれ手分けして孤児の数を調べることにした。
「思ったより多かったな」
「うん、全部で16人だもんね」
「それも含めてみんなに相談しましょう」
「そうだな。1人や2人ならともかくこの数となるとみんなの協力が必要になるからな」
「ええ」
というわけで、夜に相談することになったわけだが、その方法はギルドミーティングという機能だ。これはゲームのころからあるもので、ギルドメンバー同士の会話に使うものだ。これを使えばどんなに遠く離れていたとしてもギルドメンバーなら話ができるというわけだ。
「みんなに相談があるんだけどいいか?」
『おっ、エリベルトかなんだ?』
『どったの?』
ちゃんと使えることにほっとしつつ全員のなんだの言葉を聞き続ける。
「実はな……」
そこで街で孤児を見つけ、その数が16人であること、街や教会などが放置している事実から、俺たちで引き取りたいという話をした。
「……というわけなんだけど、どうだろうか?」
『孤児かぁ。確かにそれは気になるところだよな』
『うんうん、それにしても街も教会もってちょっとひどいね』
「そう思うよね。だから私たちで何とかするしかないでしょ」
『確かにね。でも、子供の面倒を見るって大変よね』
「そうなんだよな。といっても俺にはさっぱりだけど」
『あっ、俺も、というか俺たちって全員独身だしなぁ』
『誰か子供でもいたらよかったんだろうけどね』
『それ言わないでぇ』
俺たちギルドメンバーは誰一人いい年しても結婚していない。それはそうだろうなにせ俺たちはゲーム内でも超越者、つまり端的に言ってただの暇人でありゲームばかりしている者たち、そんな俺たちがどうして結婚できるのか、というかもし結婚していたらゲームなんてやっている暇なんてないはずだ。
『それだけど、私昔保育士やってたからある程度は大丈夫だよ』
ここにきてミサリオがまさかの発言。
「まじで?」
『うん、ちょっとだけだけどね。仕事きつくて給料安くてやめちゃったけど、子供は好きだし、それにメイドたちもいるし、あの子たちにも教えるからたぶん大丈夫だと思う』
「それはうれしいですね。では、この件はミサリオを中心に話を進めるというのでいかがでしょう」
『ええ、任せて』
「助かる。それじゃ、俺たちはそのサポートだな」
『だな。といっても何をすればいいのかわからないからな。ミサリオ指示を頼む』
『わかった。それでエリベルトさっそくだけど孤児ってどのぐらいの年齢の子たちなの』
「ああ、そうだな。えっと、アリアロッテ」
「ええ、一番下の子は3歳ぐらいですね。上の子でも11歳ということです」
『つまり、園児から小学生か、男女比は?』
「男の子が7人、女の子が9人です」
『だいたい半々だな』
『それなら、部屋は個別より数人ずつがいいよね。フローレンできる?』
『任せて、それで他にはどんな部屋があるといいの?』
『そうだなぁ』
『ミサリオ、森の調査はこのぐらいにして、俺たちはダンジョンに戻ろう、その方がいいだろ』
「そうだな。その方がいいか、ミサリオそうしろって」
『うん、わかったそうする。それじゃ、フローレンちょっと待ってて』
『ええ』
『なぁ、ちょっといいか』
「どうしたディアルブ」
いろいろ話し合って話が決まりそうなところで、ディアルブが少し言いにくそうに言い出したけど、一体なんだろうか。
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