第7話 冒険者登録

 会議が白熱した翌日、俺たちはさっそくダンジョンの外へ出てきていた。


「ほんとに森だな」

「……森ね」

「森だよね」

「いや、セビスチャンを疑っていたわけではないわよ」

「でも、さすがにね」


 俺たちも別にセビスチャンの言葉を疑っていたわけではない。だからこそこうして調査に来たわけだが、実際にこうして森を見ると信じられない気持ちが出てくる。


「さてと、それじゃ俺たちは森の調査をしておくぜ」

「ああ、任せる。それじゃ俺たちもいくか、街道はこっちだったな」

「はい」


 というわけでまずは森の調査組と別れて森を進んでいく。


「やっぱり、こういうところ歩くのってこっちの方が落ち着くよね」

「ああ、わかる」

「本体だとね」


 そう、会話の通り俺たちは現在アバターの姿でいる。それというのもやはりもしいざ戦闘となった場合、本体よりもこちらの体の方が慣れているからだ。


 そんなのんきな会話をしつつも、襲ってくる魔物を討伐していく。


「私たちにとっては弱いものばかりだね」

「だな。でもセビスチャンによれば結構やばい森なんだろ」

「ああ、言ってたな。ということは俺たちはこの世界でも最強ってことか」

「だといいけどな」

「みなさん、街道が見えてきましたよ」


 アリアロッテが素早く街道を見つけて告げてくれた。


「おっ、それじゃ俺たちは東だからこっちだな」


 そう言って俺は左側を指さす、ちなみに俺たちは南に向かっているから東が左側ということだ。


「おっけ、それじゃ俺たちはこっちだな」

「ええ、それでは調査は3日、3日後には戻ってきてください」

「ああ、わかったぜ」

「じゃあねぇ」


 西の街調査組ともここで別れたのだった。そうして、俺たち、久しぶりのパーティーでの活動である。


「そんじゃ、行くか」

「うん」

「ええ」

「4人での活動も久しぶりだよね」

「ああ、そうだな」

「ここのところずっと、みんな一緒だったしね」

「そうね。というか最近はほとんどダンジョン内にいた気がするわ」

「ああ、確かに」


 街道を歩きながらのんびりとそんな会話をしていた。以前はこのメンバーでいつも一緒に行動していた。しかし、あかねんとルナ3が忙しくなったり、ギルドを作ってからはほとんど4人で行動することは減っていた。



 とまぁ、そんな感じで街道を歩くこと数時間、目の前に街の防壁らしきものが見えてきた。


「こんにちは」

「身分証はお持ちですか、なければ通行税は銀貨1枚と銅貨2枚です」

「身分証はありません。通行税は4人分一緒でいいでしょうか」

「ええ、かまいませんよ」

「それでは、これを」

「……確かに銀貨4枚と銅貨8枚ですね。ようこそタリエルへ」


 俺たちの間で金の管理は大体アリアロッテで、今回もアリアロッテが全員分の支払いを行ってくれた。


「へぇ、思ったよりもでかい街だな」

「うん、でもなんかあまり活気がないよね」

「そうだねぇ」

「何かあったのかしらね」


 タリエルの街は俺が思っていたよりもでかい街だったが、なぜか活気がないように思えた。


「なんにせよ。とりあえずまずは冒険者ギルドだな」

「そうね。まず登録して身分証を作りましょ」

「うん、楽しみ」

「まさか自分が冒険者に登録できる日が来るなんて思わなかったよね」

「だな」


 ルナ3の言う通り、俺もまた思ってもみなかった。そんなことを話し合っていると、目の前にセビスチャンから聞いていたギルドの看板を掲げた建物が見えてきた。


「ここか」

「早く入ろうよ」

「あ、あかね待って」

「まったく、落ち着きがないんだから」


 建物を見ていると、あかねんが待ちきれないとさっさと中に入っていき、そのあとをルナ3が追いかけていき、最後にアリアロッテがあきれながらついていく。気が付いたら、俺一人取り残されているが、まっこれはいつものことだ。


「エリエリ、早く」

「おう、待てって」


 おっと、あかねんが呼んでるから俺も早く追いかけなくちゃな。というわけで、俺もまたギルドに中に入っていく。


「おお、ここがギルドか、すげぇな」

「でしょでしょ。ほら、早く登録しようよ」

「おう、わかって引っ張るなよ」


 テンションの高いあかねんに引っ張られるように奥にある受付に向かっていく。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか?」


 受付の前に行くとかなりの美人が出迎えてくれた。これがギルドの受付嬢というやつか、こういうのって本当に美人を採用しているんだな。なにせ周囲を見てみるとまさに受付嬢がみんな美人だ。おっと、これ以上みていると怒られるな。


「冒険者登録がしたいんだがいいかな」

「はい、登録ですね。ええと、皆さまでよろしいですか?」

「ああ、俺たち4人で頼む」

「かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項を記入してください。代筆は必要でしょうか?」

「いや、かけるから大丈夫だ」


 本来なら日本語しかできない俺たちだが、この世界にきてからこの世界の言葉が普通にわかるらしく文字の読み書きも問題ない。というわけで、もらった紙を3人に渡して、俺もその場で記入をしていく。記入欄には、名前、職業などがあり、それらを埋めていく。しかしここで問題なのは名前、俺とアリアロッテは普通にゲーム内の名前を記入していくが、あかねんとルナ3はゲーム内の名前では、ちょっとおかしい。そこでここは本名であるアカネとルナで登録することになっている。それと同時、今後俺たちもそれぞれ本名で呼ぶことになる。


「これでいいかな」

「はい、エリベルトさん、アリアロッテさん、アカネさん、ルナさんですね。少々お待ちください」


 受付嬢は俺たちの名前を確認した後、奥へと入っていった。それから少し待っていると、何かを持って戻ってきた。


「お待たせいたしました。それではこちらをどうぞ」


 渡されたのは金属の板、なんだか軍隊で使われている認識票みたいなものだった。


「こちらがギルドの登録証です。はじめはこのように鉄製ですがランクが上がれば、胴、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコンとなります」


 それからさらに説明を受けて、登録が完了というわけである。ちなみに、登録証を亡くした場合は最初は無料でできるが2回目からは有料となるそうだ。とま、とにかく俺たちはついに冒険者となったのであった。

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