第6話 今度は自分たちで

 ルナ3とあかねんのことで急に始まった自己紹介も終え、会議を再開することになった。


「それで、会議を再開するけど、まずはみんなどう考える。俺としては確定でいいと思うが」

「同感だ」

「ええ、信じられないけれどね」

「そうだねぇ」

「俺としてはワクワクしてきたけどな」

「それは否定しないけど」

「問題はこれからと」

「どうしてこうなったかの調査だな」

「そうですね。ルシファーラの報告ではダンジョン内に問題はないとのことですが」

「俺たちの本体があったってこと以外はな」

「ええ、問題はセビスチャンの報告でしょう」

「ああ、まさかいきなり森とは思わなかったな」

「うんうん、でも異世界に来たんならそれもあり得るよね」

「そうだよね。それでこれから私たちってどうすればいいの?」

「そこなんだよなぁ」

「ていうかさ、俺たちって元の世界に戻れんのかな。俺締め切り近かったんだけど」

「私たちだってお仕事あるしねぇ」

「うん」


 白熱した会議の議題はもちろん俺たちは帰れるのかどうかだろうが、俺の予想では無理ではないかと思う。しかしそれはみんなも同じようで少し表情が暗い。


「とにかく、帰るにしてもできないにしてもこの世界の情報がいるだろ。そもそもなんで俺たちがここにいるのかってこととか」

「そうですね。まずはそれについて調べていきましょう」

「賛成」

「それしかないか」

「うん、それで、調査ってどうするの?」

「こういう場合はとにかく聞き込みとなるな」

「となると、さっそくセビスチャンたちが行ったって街に行って調べてみるか」

「そうだなそうするか」

「あ待ってください。それでしたらせっかく人数もいることですし手分けをしませんか」

「手分け?」


 さっそく街に行こうとなったところでアリアロッテが待ったをかけた。


「ええ、確かセビスチャンは東西に延びた街道があったと、それでセビスチャンは西に向かったのですよね」

「その通りでございます」


 アリアロッテがセビスチャンに確認をとるとセビスチャンはうなずいた。


「なるほど、そうなると東が気になるところだな」


 ディアルブがそういったことで俺たちもハッとした。確かに人数も多いからセビスチャンが行った街だけでなくその反対側である東も調査した方がいいかもしれないな。


「そうだね。それじゃ私たちで東に行くよ。ねぇるなるな」

「うん、私たちのパーティーで調べよう」


 あかねんが立候補しそれにルナ3が乗っかりつつ俺とアリアロッテも誘ってきた。確かに俺たち4人はギルドを組んでもパーティーであるからな。


「おう、それじゃ、そっちはお前らに任せるぜ。俺は西に行こう」

「あっ、それじゃ私も、異世界の人がどんな服を着ているのか気になるし」


 西に行くと立候補したのはアルフレッドとリリアンだった。


「2人だけってのもなんだし、俺もいこう」

「それじゃあたしも」


 続いてディアルブとサナリースが手を上げる。


「だったら俺は森の調査でもしておくよ。セビスチャンたちがすでにやってるけど、自分の目で確かめてぇし」

「ああ、頼めるか、セビスチャンダラボラについて調査を頼む」

「はっ」

「私も、手伝うよ」


 ミサリオが自分も手伝うと手を上げる。


「おう頼むぜ」

「それじゃぁ、私とガルマジオで生活空間の調整しておくわ。今のままだとゲームのままだし」

「ああ、頼んだ」


 こうして全員の仕事の割り振りが完了したのだった。


「そうだ、最後に聞きたいことがあるんだけど」


 会議を終えようとしたところで、フローレンが恐る恐るといった風に聞いてきた。


「どうした?」

「ええ、気のせいかもしれないけれど、もしかして私たちって若返ってない?」


 突然そんなことを言ってきたが、俺にはさっぱりだ。周囲を見てみると男連中は一様に首をかしげているが、女性陣はどうやら心当たりがあるようだ。


「や、やっぱり!」

「私もそうかなぁって」

「でも、私だけだったらって思って」

「うんうん」

「そうだよね」

「よかった。あたしだけかと思ったぁ」


 女性陣が一斉にほっとしている。どういうことだ?


「みんなも感じてたのね。よかった。ていうか男性陣は気が付かなかったの?」

「いや全く」

「だな」

「確かにな」

「エリベルトは気が付いたか?」

「俺も全くだ。ダラボラは」

「俺が気付くわけないだろ」


 というのが俺たち男連中の意見だ。実際俺は自分が若返っているなってこと気が付かない。


「昨日は気が付かなかったけれど、今朝とかなんか肌の調子が良くて」

「うんうん、最近ちょっとシミとか気になってけれど、それがなくなってて」

「そうそう、私もちょっと小じわが気になってて」

「あ、あたしも少し荒れがあったのよ」

「30代に入ってから急に来たよねぇ」

「うん」

「私はまだ20代だけど、それでもメイクとかノリが悪くなってきてたかも」

「確かに」


 という話で盛り上がりだした。


「でも確かに今朝から急にいい感じだよね」

「うん、たぶん10歳ぐらい若返った気がする」

「ああ、確かにそれ合ってるかも、るなるなを見てよ。肌とかピチピチしてるよ。これってどう見ても高校生の肌だよね」

「うそっ、あっほんとだ。いいなぁ」


 今度はルナ3の肌をみんなで触りだす。確かに言われてみるとルナ3を見てみると、初めてあった時のような幼さを感じるな。


「えっと、美沙?」


 俺は思わずアリアロッテのことを現実の呼び方で呼んでいた。


「私もよくわからないけれど、瑠奈とあかねを見る限り10年前といってもいいかもしれないわ。それにあなたも自分では気が付かないみたいだけれど、同じぐらい若くなっているわよ。ほかのみんなは現実であったことがないからわからないけれど」


 アリアロッテの言う通り、俺とアリアロッテ、あかねん、ルナ3は実際に現実でもあっているので、今が若返っているという事実が理解できるが、ほかのみんなはゲーム内でしかあったのことがない。


「それにしても、なんであなたたちは気が付かなかったのですか?」


 アリアロッテが改まって俺たち男連中に向けて聞いてきた。なぜと聞かれても困るが。


「俺たちは別に自分の肌なんか知らないしな」

「年齢を感じるのも体力が衰えを感じた時だしな」

「ああ、確かに30代に入ったとき一気に落ちたもんな」

「それを言うなら40代なんてありえないぐらいだぜ」

「まじで、俺あと少しじゃん」

「いや、ダラボラはあまり落ちるように見えないんだけど」

「そうか?」


 俺たちの会話でわかるように俺たち男連中はみんな美容男子というわけでもないので、肌とか言われてもわからない。だからこそ年を感じるのは体力の低下となる。しかし、よく考えてみてほしいこの本体でもゲーム内の能力やステータスが生きてる。つまりこの体でもある意味無尽蔵の体力を持っているということになる。これで若返りに気が付けという方が無理がある。


 その後、検討した結果やはり俺たちは10年前、ゲーム開始時の年齢に若返っているという事実となったのだった。まぁ、よくわからんが若返ったのならそれはよかったということにしておこう。

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