第5話 限・界・突・破!

 ダンジョン攻略の準備を整え、いざ攻略開始である。

 まず俺たちが訪れたのはクライムベス、ここが一番近場にあったのが選んだ理由となる。といっても来るのに街から1日(ゲーム時間)もかかってしまった。


「やっぱり結構人いるね」

「そうだねぇ」

「休日だしな」


 今日から現実世界では三連休、だから俺たちも朝からログインしてダンジョン攻略ができるわけだが、俺たちと同じことを考えた奴らは多いというわけか。


「それにしても、連休だってのにみんな予定ないのかな」


 あかねんがそういっているが……


「あかねん、それはブーメランよ」


 案の定アリアロッテが突っ込んだ。


「あっ、そっか、考えてみるとあたしも予定ないからこれやってるんだった」


 へへへっと乾いた笑みを浮かべるあかねんであった。


「さぁ、気を取り直して攻略しよう」

「そ、そうだね」


 というわけでさっそくダンジョンに挑むのであった。



 さて、ダンジョン内に入ったわけだが、最初の階層については特に語るようなこともなく順調に進むことができた。そうして進むことしばし3階層までたどり着いたわけだが、時間を見るとすでに夜となっていた。


「ふぅ、今日はここまでにしましょうか」

「だな、ちょうど切りもいいしここらにしておくか」

「だねぇ。ちょっと疲れたしね」

「うん、それじゃ、今回はこのぐらいにしてログアウトして続きは1時間後ってことで良い?」

「OK」

「オッケー」

「予定通りね」


 というわけで俺たちはいったんログアウトすることにした。これは運営側からも推奨されているように、現実時間で2から3時間遊んだら1時間休憩というものに基づいている。今回はすでにゲーム時間で2日、つまり現実では2時間連続して遊んでいることになるためにいったん休憩しようとなった。


「それじゃぁ、具体的には現実時間で10時ちょうどでいいか」

「それでいいよぉ」

「私もそれで」

「じゃぁ、決まりね」

「それじゃ後で」


 そうと決まればと俺たちはそれぞれログアウトしていく。




 そして、10時となり再びログインするとそこは先ほどのダンジョン内である。


「アリアロッテが最初か」

「ええ、あっ来たみたい」


 タイミングよくルナ3とあかねんがそろってログインしてきた。


「時間どおーり」

「お待たせ」

「それじゃぁ、さっそく続きやるか」

「だねっ」


 再び攻略開始である。


 その後の攻略も特に問題もなく次々に攻略していった。これはやはりあかねんの力が大きい、彼女は盗賊いわゆる斥候でもあるために、罠などの発見からルートの検索もすぐにわかる。ちなみにこれはスキルの能力だけではなくあかねんの技量も大きいと思う。さすがここまで来ただけあり、普段はなんだか軽い感じだが本当に頼りになるよ。


 俺がそんなことを考えているとも知らないあかねんは、実に楽しそうにダンジョンを進んでいった。

 そうして、1日が経過し夜となった。


「今日はここまでで、夜営にしましょう」

「そうだね」

「異議なーし」

「それじゃさっそくテント出すか」


 このゲームのダンジョンには必ず夜営できるポイントがある。こういうところはゲームなんだよな。現実ではこんなのんびり夜営なんてしている場合ではないと思う。でもまありがたく使わせてもらおう。


「ダンジョン内の夜営って、パーティーごとのサイトになってるからいいよね」

「ああ、確かに変な人がいないのがいいよね」


 あかねんとルナ3が話しているようにダンジョン内に設けらえている夜営場所というのは、扉付きの部屋となっており、その扉を抜けるとパーティーごとに分けた場所に行くことになるために、気兼ねや警戒をすることなく落ち着いて休める設計になっている。


「ほら、しゃべってないで私たちは食事の準備をしましょう」

「はーい」

「うん」


 俺がテントを2つ出して設置する間にほか3人で飯を用意している。これは話し合いの際に決めたこととなる。なぜこうなってかというと別に男だ女だということではなく単純に3人はテントの設置があまり得意ではないらしく始めるとかなり時間がかかってしまう、実際見せてもらったけど本当にいつできるかわからないほどだった。そして、食事の準備は俺の方が苦手だ。一応一人暮らしだからできるにはできるんだが、ほら男の料理だから、かなり適当なんだよ。何が言いたいかというとかろうじて食える程度の味にしかならないというわけだ。そこにきて3人は特にルナ3は料理がうまいというわけで3人が担当というわけだ。ていうかゲームなのに飯を食う必要あるのかと思うんだけどな。まぁ腹が減るし減ると力が出ないのだから仕方ない。また、味覚もしっかりあるからまずい飯は食いたくないしな。


 それから女性陣作の美味い飯を食ったのち、少し談笑したところで今日はもう休もうということになった。


「それじゃ、エリベルト明日ね」

「おやすみなさい」

「おっやすみー」

「ああ、お休み」


 そう言って3人は3人用のテントの中に消えていったわけなんだが、その後の展開が非常に気になった。それというのも以前も言ったがこのゲームは汗をかくし汚れることもある。つまり3人は現在テント内で着替えたり体の汚れを落としたりしているはずだ。なにせちらっと横目でテントを見てみるとうっすらとだが中の様子がシルエットになっている。

 おっと、これ以上はさすがにまずいか。

 そう思った俺はすぐさま目をそらし自らも別のテントへと入ったのだった。



 翌日


「おはよう」

「おあよー、ふわぁぁ」

「おはよう」

「おう、おはよ。それにしてもあかねんは相変わらず朝が弱いんだな」

「ええ、この子は昔からだから」

「あはははっ、ゲームの中ぐらいちゃんと起きればいいと思うけどね」


 という会話からもわかる思うが、実はこの3人現実でも知り合い、というか友人なんだそうだ。それを聞いたとき俺がその中に入ってもいいのかと思ったものだ。どういうものかについてはまだ聞いていないけどな。


「そうなんだな。まぁそれより今日は予定通り9階層あたりまで行きたいところだな」

「そうだねぇ」

「う、う~ん、すやぁ」

「あっ、ほらあかねん起きて」


 朝食を食べながら再び寝始めたあかねんを起こすアリアロッテであった。



 こうして、のんびりと和気あいあいと攻略を進めていく俺たちだがついに最終階層ラスボスへたどり着いた。その戦いはかなり苦戦したものの、なんとかこれを倒すことができた。これはひとえに俺たちが50を超えていたということではなく、俺たち4人の相性やセンスや技量によるものだろう。連携の確認するときも思ったがどうやらルナ3もあかねんもアリアロッテも戦闘センスが抜群にいいみたいだ。なにせ俺が欲しいと思ったタイミングでサポートや魔法、弓がやってきたからな。

 とまぁ、そんな感じにほかのダンジョンも攻略していき、俺たちは何とかすべての素材を集めることができた。



「やったー、これで、限・界・突・破!」

「ははっ、結構大変だたよねぇ」

「ほんとに」

「そうだな」


 後で知ったことだが実はこのクエストを3連休の間に攻略したのはほんの一握りで、あとの連中は何度も挑戦してようやくできたものや、全く倒せずあきらめたものがいたらしい。

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