第4話 攻略準備
限界突破クエストを受けたのち話し合った結果、攻略は3日後から行うこととなった。理由としてはそれぞれの都合があったのが3日後だったというだけだ。もしこれが現実だったなら、俺たちはこれが仕事となるのですぐにでも攻略は入れるのだが、あいにくと現実があるためにどうしても都合が合わなくなってしまう。尤もその3日間何もしないというのもどうかというアリアロッテの発案で、連携の確認や準備に充てることとなった。
「さて、準備というと何がいるかな。まずは武器と予備は必要だよな。このゲームって使うとちゃんと劣化するからなぁ」
このゲームはリアルを追及しているあまり、武器などの装備が使えば使うほど劣化する。というか下手すると壊れるんだよな。戦闘中に武器が壊れて死んだなんて話はよくあるし、防具の破損なんてかなりあるから予備は必要だし点検や整備を怠ってはならない。
「あとは着替えだよな。ていうかなんでゲーム内でも着替えなきゃいけないんだよ」
本当にこのゲームを作った奴はおかしい、ゲームなのにちゃんと着替えないと匂ってくるし戦闘などで破れたりすることだってある。また、さらにおかしいことにこのゲームでは下着も着替えることができるようになっている。普通こういうゲームって下着などは脱げないようにキャラに引っ付いているものだと思うんだけど。まぁ、下着を変えられると女性陣には喜ばれているらしいが、でも、下着を変えられるということは当然その下もちゃんと作りこまれている。これには俺も驚いたものだ。
「っと、それはいいとして、あとはポーションとかだけど在庫も心もとないし作っておくか、確か材料の在庫があったはずだが」
そう思いながら工房にしている一室に向かった。
俺の家はそこまで大きくなく自室、キッチン、ダイニング、工房、空き部屋の5部屋しかない。ちなみに空き部屋は現在ルナルナルナ、あかねん、アリアロッテの3人に貸している状態だ。
「あっ、エリベルト工房借りてるよ」
工房に行くとそこにはルナルナルナがいた。
「ああ、かまわないぞ。ていうか何をやっているんだ」
「杖の点検、これやらないと後で泣くことになるから」
「ああ、確かに杖って剣とかより劣化が分かりずらいからなぁ」
「そうそう、前にね。戦闘中にいきなりばきって折れて、散々な目にあってね」
「ああ、俺もあるよそれ」
戦闘中に武器が破損というのはこのゲームではみんなが経験している。それはそうだろう俺たちは普段は平和な日本人、武器なんてものは持っていないから、こんな武器の点検が必要なんて誰も知らない。
「エリベルトは?」
「俺は、ポーションでも作っとこうと思って」
「ああ、必要だよね。ていうかエリベルトってポーション作れるんだ」
「まぁな。っと、確かここに、あったあった」
ルナルナルナと話しながら工房の納戸を調べたところ、思った通りポーションの材料の在庫がいくらかあった。
「まっ、とりあえずこれだけあれば大丈夫だろ」
「へぇ、ポーションってそれで作れるんだ」
ポーションを作るには薬師スキルが必要になるわけだが、実はこれを持つ人は少ない。それというのも街で普通に購入できるからであり、何よりいつのころから薬師ギルドというものができ、ポーション製造販売を一手になっているプレイヤーたちがいることが大きい。彼らは薬師スキルを高レベルで習得しているのでただのポーションでも効果が高い。また、薬師ギルドのギルマスはかなり善良な人物のようで、値段もお手頃ときているためにほとんどのプレイヤーがそこでポーションを購入しているからわざわざ自分で作るということはない。
俺はまぁ、ギルドができる前から薬師スキルを獲得していたし、ポーション作りはそれなりに楽しかったので続けた結果結構高レベルになっている。
さて、考えるのはこのぐらいにしてポーション作りをやろうか。
「見てていい? 私たちっていつもギルドから買ってるから」
「それはいいけど、ルナ3は取らなかったのか? ギルドができる前からやってたよな」
俺がルナルナルナと出会った頃はまだ薬師ギルドはなかったから、そのころのプレイヤーはスキルをとっていたものが多かった。まぁ、それでもNPCの店で買えたんだけどな。
それと俺は今ルナルナルナのことをあかねんが言っていたようにルナ3と呼んでいる理由は昨日(ゲーム時間)の話し合いの際に敬語や敬称をつけたままだと戦闘中に支障が出るから呼び方や話し方を変えようとなった。
「私はこういうの苦手だから、ずっと買ってるんだよね」
「なるほどね。俺は結構好きだけどな。こういうの」
そう言いながらも手に持った薬草を
「あっ、それみたことある。確かやっけんだっけ?」
俺も最初ルナ3のように間違えたのでここは正すべきだろう。
「いや、薬研だよ。俺も最初うろ覚えでそうだろうと思ってたけどな」
「ああ、そうなんだ。でもそれってアニメとかでもよく見るよね」
「だよなぁ。俺も最初自分で使ってみた時なんか感動した覚えがあるよ」
「ああ、わかるわかる。ねぇ、私にもやらせてくれない」
「いいぞ」
それからルナ3にも手伝ってもらってポーション制作を行ったわけだが、途中でドッバーンと大きな音を立てながらあかねんが工房に入ってきて、薬研で薬草をこすっているルナ3を見て何やら目を輝かせて自分もやりたいと言い出し、ルナ3と仲良くすりつぶし始めたのだった。また、そのあとにあきれた様子でアリアロッテが入ってきたわけなんだが、そのアリアロッテもまた、薬研を使いたそうにしていたが言い出せないようだったので、予備の薬研を出し手伝ってくれといってみた。するとちょっとうれしそうに受け取った姿はなんだか少しかわいいと思ってしまった。こういう表情の微妙な変化までわかるってホントリアルなゲームだ。これでは下手したらゲームと現実の区別がつけられないやつも出てきそうだと思うよなぁ。まぁ、なぜかそういったやつが現れたという報告は聞いたことがないし、俺自身不思議とちゃんと区別がつけられている。
とまぁ、そんな感じてポーションを量産しまくったおかげで薬草の在庫はなくなってしまったが、しばらくポーションには困らなくなりそうだ。
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