第2話 大型アップデート

 ゲームを初めて約3か月が経過した。現在俺のレベルは50、現時点での最大レベルである。


「思ったよりハマったよなぁ。ていうか結構課金もしたしな」


 今言ったように、この3か月ほぼ毎日時間があるときは遊んでいた。そのかいあってかつい昨日最大レベルである50に達した。といっても別にゲーム内で俺だけが50に達したわけではなく、初期からやっちるやつは大体このレベルに達している。つまり、これまた普通ってわけだ。


 そんな中、ある大型アップデートが告知された。それによるとなんでもあるクエストを攻略すると最大レベルが100まで引き上げられるという。もちろん俺も含めて多くのプレイヤーが沸いた。それはそうだろう、このゲーム50に達してもやることはあるが、だからといって魔物などと戦ってもレベルが一切上がらないのはつまらない。しかし、これでそれもなくなるというわけだ。



 てなわけで、告知通りアップデートが実施されて、さぁ限界突破クエストを受けよう。と思ったんだけど、このクエストパーティーじゃなければ受けることすらできないらしい。さて困った。俺もこれまで幾度かパーティー組んだことはあるし、数名フレンド登録はしてある。でも、最近はソロばかりで全く連絡とっていなかった。


ピルピルピルッ


 若干途方に暮れていると突如コール音が頭に響いた。これは誰かが俺へ何らかの通信を行っているということだが、おっとどうやら音声通信みたいだ。相手は誰だろうかとコンソールを出して表示を見てみると、そこにはルナルナルナという名が書かれていた。一瞬誰だろうかと思ったが思い出した確か最初に組んだパーティーにいた人だ。何となくフレンド登録をしたという覚えがある。


「もしもし」

「あっ、エリベルトさん、お久しぶり」

「久しぶりです。ルナルナルナさん」


 話していて思い出したんだが、この人の名前のルナルナルナという名前だけど、最初はルナルナと名付けようとしたら誰かがすでに使用していたためにもう1つルナを付け足したのだといっていた。


「今、時間大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

「よかったぁ。それじゃ、シュタイルのゲンソウルってお店に来てほしいんだけどいいですか?」

「まぁいいですが、すぐそこだし」


 ルナルナルナが指定したシュタイルは今いる街の名で、ゲンソウルという店はまさに目の前にあった。特に手間でも何でもないしこのタイミングということは、おそらくというものがあったので素直にその店の中に入っていく。


 ゲンソウル、ここは言ってみるとただの喫茶店だ。店主はプレイヤーで結構うまいと評判で、俺もたまに利用している。

 このゲームではこうしてプレイヤーが店を出すことができるという点もまた人気の一つだ。


「あっこっちです。こっちです」


 店に入るとさっそく声をかけられた。声のした方を見てみるとそこにいたのは見覚えのある魔法使いの女性、以前よりかなりいい装備(当たり前だが)になっている。


「久しぶりです。ルナルナルナさん」

「お久しぶり、エリベルトさん、ええと、まずは紹介しますね。こっちは今一緒にパーティー組んでる……」

「初めまして、私はハンターでアリアロッテと申します」

「はっじめましてぇ、あたしはあかねんよろしくねぇ。一応盗賊だよ」


 それぞれが自己紹介をしてくれたわけだが、アリアロッテと名乗った女性は何というかいかにも仕事できますといった風な見た目だ眼鏡かけてるし、一方であかねんは見事なまでの元気娘だった。


 余談だが、このゲームはリアルを追及しているために、どう見ても名前に見えないようなものは使用できないことになっている。だから、例えば記号が入っていたり、文章になっているようなものはNGとなる。また、先ほどもちらっと言ったが、誰かが使用している名も使えない。リアルでは同姓同名があるのだからいいのではと思うかもしれないが、ゲーム内でそれを許すと人気のある名前だらけとなってしまうからそれを防ぐためらしい。


「エリベルトです。魔法剣士をしています。それで俺を呼んだ理由は……」


 自己紹介の後、空いている席に座りながら訪ねると3人も椅子に座った。


「本日、実施されたアップデートの件です。限界突破クエストはパーティー限定となっているのはご存じですよね」

「ええ、それで途方に暮れていましたから」


 話し始めたのはアリアロッテなんだが、見ているとなんというか手に手帳を持っている秘書みたいだ。実際にはてちょうなんてもっていないけど。


「私たちは3人で組んでいるのですが、このクエストは4人以上となっているのです」

「1人足りないと」

「そうそう、それでどうしようかって話になって、そしたらルナ3がエリベルトさんはどうってなって」

「以前組んだ時によかったし、それにエリベルトさんは魔法剣士ですよね。私たち見ての通り近接がなくて」

「ああ、確かに」


 ルナルナルナは魔法使い、アリアロッテはハンターだから弓と2人は遠距離タイプで、あかねんは盗賊で多少近接はできるが、どちらかというと裏方であるために決定打にかける。


「どうですか、私たちのパーティーに入っていただけませんか?」


 アリアロッテがそういって誘ってきたわけだが、問題が1つあった。


「それは、こちらとしてもありがたいですが、俺みたいな男を入れても?」


 女3人で男1人というハーレムパーティーとなってしまう。


「それなら大丈夫ですよ。私たちも一応話し合ってますから」


 話し合った結果として俺を誘ったというわけだろう。まぁ、そっちが良ければ……まぁいいか。


「わかりました、そっちがいいのなら、それにほかに当てもないから非常に助かるし」

「よかったぁ。それじゃよろしくね。エリエリ」


 あかねんがいきなり俺に愛称をつけて呼び始めたんだけど、そういえばルナルナルナのこともルナ3って呼んでいたな。


「はぁ、あかねんは……」


 そんなあかねんに対してため息をこぼすアリアロッテだった。

 こうして俺はハーレムパーティーとして周囲のやっかみを受けることになったのだった。

 こうなったらさっさとクエストをこなしてしまおう。

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