第2話
背中に付いた猫が俺を持ち上げ空を飛んでいる。
「ちょ! 降ろせってっ! うわっ! たけーよ!」
「暴れるなニャ! 手が滑るニャ!」
「うわぁ離さないで離さないでっ!」
「大丈夫にゃ! 魔法少女はこのくらいの高さから落ちても死なないにゃ!」
「そーゆー問題じゃねぇーよ!」
少しして俺の背後から、
「んっ…はぁはぁはぁっ」
「…お前さっきから後ろで『はぁはぁ』って…まさか魔法少女姿の俺に興奮してるんじゃないよな?!」
「違うにゃ!! お前が重いからだにゃ! 何でこんな奴がピュアな心の持ち主なんだにゃ…」
「36歳まで童貞で、風俗すら行かないんだからピュアな心の持ち主に決まってんだろ」
俺はドスケベエルフのソフィーナちゃんに童貞を捧げるんだ。
「絶対ピュアじゃないのにゃ…」
「見えてきたにゃ!」
車や建物が燃え悲鳴が聞こえる。
その中心には大きな槍を持った人型の豚と女の子が2人。
「あの暴れてる豚が敵か?」
「そうにゃ、あれがジャークナーの手下にゃ」
「じゃああの豚と戦ってる赤いドレスと青いドレスの女の子は味方なのか?」
「あれはきっと僕の仲間、『うさたん』と『ぴよぴよ』が契約している魔法少女にゃ。…良いにゃぁ~、2人はちゃんとピュアな女の子と契約出来たのかぁ」
小学生位の幼い女の子がステッキを振ると、氷や炎が吹き出し敵に襲い掛かっている。
「ぶひひひひ! そんな攻撃が効くとでも思っているのか? 炎なんて同胞達が焼肉にされたのに比べればぬるいぬるい! そんな氷などで俺は冷しゃぶに出来んぞ! ぶひひひひ!」
「魔法耐性のある怪人に対して2人の攻撃では相性が悪いにゃ。ここはホワイトの出番だにゃ」
『ぱっ』
猫が俺を掴んでいる手を離し、
「へ?」
3人の戦っている真ん中に、
「うわわあぁぁぁ!!」
落とされた。
『バーン!!』
「つぅ~いってぇ…あ?」
目の前に赤い髪に赤いドレスと青い髪に青いドレスの魔法少女が2人、そして後ろに豚の怪物。
3人とも俺出現に戦闘の手が止まった。
「チッ、豚がもう1体…」
「はわわぁ、敵さんが増えたですぅ」
「ぶひひ、魔法少女が何人来ようと無駄だ!」
3人が俺に攻撃を構える。
そして3人が、
「「「…え?」」」
「ぶひ? その少女はお前と同じ魔法少女じゃないのか?」
「何言ってるの?! あんたの仲間でしょ?! そもそも男じゃない!」
「はわわぁ、どう見てもジャークナーなのですぅ」
「「「…」」」
全員が無言で俺を見る。
3人を目の前に俺の体は勝手に動いた。
「この星は私が守る!ピュアホワイト参上!」
しっかりポーズまで決めてる。
「えぇ…仲間なの?…アレも敵って事で攻撃しちゃ駄目?」
「はわわぁ…本当に仲間なら攻撃しちゃ駄目なのですぅ」
魔法少女2人は仲間が増えたのに嫌な顔をする。
赤いドレスの子なんて俺を攻撃しようとしてるし。
「ぶひひぃ、3人まとめてあの世へ送ってやる!」
「あっ危ないのです!!」
青いドレスの女の子が叫ぶ。
「へ?」
後ろを振り向くと、目の前まで鋭い槍が迫っていた。
「うわっ!」
俺は恐怖で目をつむり、反射的に手を前に出した。
俺、童貞のまま死ぬのか…
…
…
「あれ?」
生きてる?
「ぶひ?! まさか俺の槍を防いだだと! 俺の槍は光の国の城壁すら貫いたんだぞ!? 」
目を開けると、前へ出した手が光を放ち槍を防いでいた。
ちょっとチクッとしたが、別に痛くもない。
…こいつ、俺より弱いのか?
「ぶひぃ、これならどうだ必殺『猪突猛進』!!」
豚の怪物から邪悪な力が増幅しているのがわかる。
次の瞬間、怪物は猪の様に大きく鋭い牙が生え、目は赤くなり、猛スピードで突進してくる。
あまりの速さに反応出来ず、2本の鋭い牙が俺を突き刺した。
『ビリッ!!』
俺の着ている純白のドレスが角の衝撃で破けた。
「ぶひひっ、どうだ俺の必殺は……」
怪物は俺の姿を見て無言になる。
俺のドレスは牙の当たった両乳首の部分だけ丸く破けたからだ。
俺、こんな感じのAV見たことあるわ。
スクール水着を着た女の子の乳首の部分を丸く切り取るやつ。
そうか、この敵は…
「こいつ変態だ! 2人も気をつけろ! こいつの必殺技は乳首の部分を丸く切り取る技だ!」
二人の魔法少女は胸を両手で隠し、
「はわわぁ変態さんですぅ」
「うわサイテー」
「ぶひ?! 違う!! この必殺技は食肉された豚達の怨念を牙にした技だ! そんなマニアックな技じゃない!!」
豚の怪物=オークだよな?
オークってよくエロゲーやエロ漫画で女騎士に『くっ、殺せっ!』って言わせてる奴だろ?
…こいつ俺の事を少女って言ってたし…
まさか!?
いや、そうに違いない! だからこいつは俺の両乳首を!
こいつ…俺を女として見てやがるんだ、お…俺を犯すつもりなんだ…
怪物を見ると血走った目で此方を見ている…間違いない、
「こいつ、俺の魔法少女姿に興奮してやがる…」
「ん?…ぶひ?!」
「はわわぁ!? もの凄い変態さんですぅ」
「へ!? あっ! そー言えばどー見ても男なのに少女って言ってた。うわキモっ…引くわぁ」
「ぶひ?! い…言い掛かりわ止めろ!! お前らだって見た目で動物の性別がわからないだろ!? 俺からしたら見た目で人間の性別なんて着てる服でしか判別出来ないんだ!」
「おい猫、俺にも魔法の武器は無いのか? このままだと俺のケツ穴が掘られちまう。色々な性癖を有する俺も豚にケツ穴を掘られるのは勘弁だ」
2人の魔法少女に魔法のステッキが有るのだから、もちろん俺にも有るだろう。
「ホワイトに魔法のステッキは無いにゃ」
「えっ!? 社会からハブられた俺は魔法少女になってもハブられるのかよ!?」
「違うにゃ、ホワイトは持った物全てを魔法のステッキとして使えるにゃ。試しにそこの道路標識を抜いてみるにゃ」
猫は近くに有る一時停止の標識を指差す。
「こんなんどーやって抜くんだ…あれ?」
試しに引き抜いてみると、まるで畑から大根を抜くかの様に簡単に抜けた。
「魔法少女ピュアホワイトはプロレスラー30人分の力があるにゃ」
他に例え方無かったの?
「次は標識に魔法の呪文を唱えるにゃ、『トキメキハートにキラメク夢、皆の力を貸して、ラブリーステッキ』にゃ」
「地味に長いしな、トキメキハートにキラメク夢! 星の皆の力を貸して! ラブリーステッキ!」
……
特に標識に変化は無い。
「俺、呪文間違った?」
「大丈夫にゃ、その標識は今ラブリーステッキになったにゃ。それでジャークナーの手下を殴り殺すにゃ」
こいつ可愛い猫の姿で『殴り殺す』って言っちゃってるよ。
「そんな標識で俺様を倒す? ぶひひひひ! やれるもんならやってみ…ぶひっ?!」
『バーーン!』
怪物がしゃべってる間に脇腹に標識をフルスイング。
怪物は後ろにあった自動販売機にぶっ飛んでいった。
『プシュー』
中に入っていた飲み物が散乱し吹出している。
…俺、強くないか?
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