第24話「センタク」
洋風の屋敷の中に唐突に現れた和室だったが、鍵を見つけて扉――回転ドアになっていた――を開いた先は、見覚えのある玄関ホールだった。
「本当に何だったの、あの和室」
「畳のある部屋がないと落ち着かないタイプの家主なんじゃない?」
「そういう問題なのかしらねえ」
地下室にサメもいたことだし、そもそも『脱出ゲーム』という特殊な状況に整合性を求める方が間違っているのだろうが、まりのは感想を述べずにはいられなかった。
浩也が次に向かったのは、階段を上がった先の部屋だ。大人が三人くらい並んで寝られそうな天蓋付きのベッドが中央にあり、本棚にライティングデスクといった調度品が品良く置かれている。おそらくここは主寝室なのだろう。
「こんな大きなベッドだと、シーツを洗濯するのも大変そうね」
「でもちょっと羨ましいなあ、俺、背が高いせいでホテルのベッドからよく足がはみ出すんだよねえ」
「それは大変ね。私は……、棚の上の方にある本に手が届かなくて、背の高い人が羨ましいなって思っていたわ」
「ツアーの時はよく
「ねえ、その箱の文字盤、どうしてWが正解なのかしら?」
「ああこれ? 曜日の英語にした時の頭文字になってるんだよ。ほら、机の上のカレンダー、木曜日に赤丸してあるでしょ」
「『嘘』って書いてある箱のパネルに入力する数字がどうして5317なの?」
「7ってひっくり返すとLみたいに見えるでしょ? 嘘は英語でLIESだから、ひっくり返して5317ってわけ」
まりのの質問に答えながら、浩也はどんどんと部屋に施された謎を解いてゆく。浩也は答えを知っているのだから、手順を飛ばして鍵の隠された場所の謎を解いてしまえばいいのではないかと思ったが、浩也曰く「フラグ管理がしっかりしている」のでだめらしい。また「まりのちゃんは物理的だなあ」と言われそうなのでこれ以上追求するのはやめておこうと思ったところで、ついに次の部屋へ進む鍵を手に入れた。
しかし入手した鍵は一つなのに、まだ開いていない扉は二つある。鍵が入っていた箱の中には『正しい方を選択せよ』と書かれたメモが入っていたのだが、正しい方と言われても、他にヒントとなるようなものは残されていない。
「これもちょっとした言葉遊びになっててね、『
そう言うと、浩也は右の扉の鍵を開けた。
「ちなみにここで左を選ぶとどうなるのかしら」
「試した方がよかった?」
「……やめておくわ」
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