第17話「額縁」
ドレッシングルームを出て次の部屋へ進む。今まで通った廊下や部屋に比べて壁紙や内装が簡素なつくりになっているので、おそらく使用人のための部屋というやつだろう。ベッドの横には鳥籠、テーブルの上にコーヒー豆と卵と赤い石、棚の上には紙袋が三つ置いてあった。
「なんだか随分と雑多な感じね。この部屋ではどうやって謎解きするの?」
「ええとね、まずはこれ見て」
「これ、ギターのコード表になってるんだ」
「コード表?」
「ギターの弦って六本あるでしょ?だから、例えばEコードだったら3弦の1フレットと、4弦と5弦の2フレットをを押さえて弾くよ。っていうのを示したものがコード表」
だからこれはEだと浩也は図形のひとつを指さす。なるほど、そういうものなのかと納得したまりのは、他の図形がそれぞれ何のコードを示すものなのかを浩也に聞いてみることにした。浩也はまりのの頭を右腕で抱えなおすと、何かを確認するように左手を握って開いてみては「これはF、これはA」と教えてくれる。
「Fがギター初心者にとって最初の難関なのはよく聞くけど、Bも実は押さえるの難しいんだよね。なのにFより話題にならないのはどうしてなんだろう」
「そんなの、私だってわからないわよ」
「あ、これEマイナーだな。表記するときはEmって書くからここだけМの字が入るね」
浩也が言う通りにコードを辿ってみると、ひとつの文章になった。
FACE A CAGED BAG. DAB A BAGGED GEM
「直訳すると『鳥籠に入ったバッグの方を向いて、袋に詰めた宝石を軽く叩け』ってことになるわね」
「なるほど、今回はそうなったか」
「ここに書いてある内容って、毎回変わるものなの?」
「そうなんだ、『鳥籠に卵を入れろ』だとか色々あるよ」
「相変わらず意味わかんないわね。でも、書かれた通りにやれば扉が開くってことみたいだし、やってみましょう」
コード進行的には滅茶苦茶なんだけどねと言いながら、浩也は書かれた通りに紙袋のひとつを鳥籠に入れ、別の紙袋に赤い色の石を入れてから、鳥籠の方を向いて紙袋をぽんぽんと叩いた。
「開いたね」
「開いたわね」
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