第6話「眠り」

「やーい、嘘つき〇〇〇! お前の話はデタラメばっかり!」

「嘘なんてついてない! 本当に見たんだから!」

「クジラが空を飛ぶわけないだろ。変なことばっかり言うお前の話なんて誰も信じないからな!」

 同じクラスの男子がバカにするように手をひらひらと振ってから校庭へ駆けて行く。嘘なんてついてないのに、どうして――



「あ、起こしちゃった?」

 ふわりと揺れる感覚に目を開くと、そこは見知らぬ場所だった。

「私ったら、いつの間にか眠っちゃってたのね」

「実は俺も少し寝ちゃってたんだ。電車の揺れってどうしてあんなに眠くなるんだろうね」

 まりのの頭を抱えた浩也ひろやが、ぐるりと周囲の様子を見せてくれる。どうやらここは、地下鉄の駅のようだ。おそらく自分たちが乗っていただろう電車がホームに止まっていて、読めない文字で書かれた駅看板や、時刻表らしきものが置いてある。鉄道マニアなら、ここがどこの駅なのかわかったりするのだろうか。

 寝て起きたら何もかも元通り、全ては夢の中の出来事でした――、とはならなかった。 

「時間がくれば駅に着くって言ってたけど、それがここなの?」

「そうだよ。俺が知ってるゲーム画面とは細かいところが違ってたけど、仕掛けそのものは同じだったからね。特に苦労もなかったよ」

 浩也が「ほら」と言って右手に握っていた切符をまりのの眼前に示してみせた。どうやらこれが、次の部屋へ行くための「鍵」らしい。まりのが眠っていた間に、すでに謎は解き終わっていたようだ。

「ここの仕掛けって、どんな感じだったの?」

「えっとね、まずは電車の先頭に掲げてあるプレートの数字を……」

 浩也の解説を聞きながら、次の部屋へ続くという改札口を通り抜けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る