第2話「食事」
「さて、一通り驚いたところで状況を整理してみようか」
「あなた本当に驚いてる?」
呆れる声に、青年は「そりゃあ喋る生首なんて初めて見たし」と、しみじみ頷く。
「私だって首から下が無いとは思わなかったわよ。それで、他に何かない?」
「首から下が無いね」
「それはわかったから。まさか肌の色が緑だったり耳が四つあったり、角が生えてたりとかしてないわよね」
「いや特に変な外見してないよ。むしろかわいいと思う。耳も尖ってるとかそういうのはないよ。赤い縁の眼鏡が似合ってるし、あと目の色が、光の加減で茶色く見えたり青く見えたりするのがキレイだね」
「そっ……、あ、ありがとう」
長い前髪で隠されてはいるものの、青年にしげしげと見つめられているのがわかり、顔を背けることも出来ずに視線を彷徨わせる。
「あと問題がひとつだけあるとしたら……」
「えっ、なに? 何かあるの?」
「コンプラ的にこういうこと聞いていいのか悩ましいんだけど」
「コンプラって何よ?」
「君って、その……、女の子ってことでいいんだよね?」
「どこからどう見ても女でしょ!」
きっと眉を吊り上げてまくしたてる生首少女を見ながら、青年は『首無し美女の幽霊』の話を思い出した。首から上が無いのに何故美女だとわかるのかという与太話なのだが――、「ちょっと、私の話聞いてる?」の声に青年の意識が引き戻される。僅かばかり動く顎を上げてこちらを睨む少女を見ながら、この子は随分と表情が豊かなんだなと思った。周囲から「お前は普段何を考えてるのかよくわからん顔だな」と評されていた自分とは随分違う。
「あなた、マイペースだって言われない?」
「いやあそれほどでも」
「褒めてないわよ」
呆れ気味にため息をつく生首少女を見ていて、そういえば肺もないのに呼吸はどうしてるのか気になった。あとは――、
「君が食事したとして、飲み込んだものは一体どこに行くのかな……」
「えっ、なに?」
「ちょっと口開けてみてくれる?」
「いやあの、……ひょっと、らめ」
残念ながら喉の奥がどうなっているのか、暗くて確かめられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます