第27話 服装特番3・コスプレ
服装特番の雨具紹介が終わって次のコーナーへ。
「フィナーレはなんと! コスプレ七変化のコーナーですわー!」
お、これを待っていたぜ。確か、悪魔、巫女、メイド、猫、警察官、サンタクロース、アニメお天気魔法少女ハレルヤのキャラの七つだったよな。
「これから私と風華ちゃんが順番にコスプレしていきますので、皆様楽しんでいただけたらと思いますわー」
司会進行用にもう一人キャスター用意しとけよ。絶対グダるぞ。だがそこがいい。
とにかく早くビッキーのコスプレを見せてくれぇ。まずは悪魔だよな? 悪魔っつったらサキュバスだろ。エロいカッコなのは間違いなし。ぐへへ、早く人妻の谷間見せろ!
「風華ちゃんは、既に裏でお着替え中なのでもう少々お待ちくださいませ」
ソイツはマスコットでも被せとけよ。
「あ、どうやら風華ちゃんのお着替えが終わったようですわね。それでは登場していただきましょう。風華ちゃーん、どうぞー!」
「……ど、どーもー」
出てきたのは真っ黒な悪魔、ではなく、真っ白で頭には輪っか、背中には翼の生えた、どう見ても“天使”だった。
え、悪魔は? サキュバスは? エロい悪魔は? 人妻の悪魔はどうなるの?
乃和木は今にも昇天しそうな顔をしている。
あっ……。コイツがパニック顔になっているということは、多分直前に変更になったな。サキュバスはエロすぎたか。清楚が売りの一つであるお天気お姉さん向きではないもんなぁ。クソ、人妻の
「あら、カワイイ天使様ですわね。よく似合っていますわ」
「クックックッ愚民ども、心臓を差し出せい!」
闇堕ち天使やめろ! 悪魔なら言うつもりだったセリフだろ!
ビッキーも全てを察したようで、またか、とでも言うように天を仰いだ。しかしすぐにひとつ咳払いをして戦う覚悟を決めていた。ビッキー頑張れ。
「それじゃあ私も着替えてきますわ。風華ちゃん、ここはお願いしますわね」
「貴様の寿命を削る代わりにその願い叶えてやろう」
畜生天使やめろ!
ビッキーは苦虫を噛み潰したような顔をして裏にハケて行った。
「フハハハ! 邪魔者は消えた! これでこの世界は私のものだ!」
邪魔者はお前だよ。ビッキーに怒られろ。
その後もバカみたいなセリフを吐いていると、天使コスプレをしたビッキーが出てきた。おいおい、天使が天使のコスプレして意味があるのかい? HAHAHA!
「どうでしょう? 似合っていますかしら?」
「ぐへへ、美味そうな体してんじゃねぇか」
悪魔じゃなくて、ただの変質者じゃねぇか!
「天使といえば天使のはしごですわね。雲の切れ間から覗くスジ状の太陽光をそう呼ぶことがあるのですわ」
さすがビッキー。隙あらばお天気要素助かる。
「あ、それ前も聞きましたよ」
余計なことを言うな。確かに一問一答の時に言ってたけどこれでいいんだよ。毎回観てる奴ばっかじゃないからな。
その後、また乃和木が裏に下がった。そのまま異世界転移しててくんねぇかな。
次は巫女だったよな。だがしかし、出てきたのは茶色っぽい尖った耳が上に二つ、尻には毛先が白い尻尾があって、どう見ても巫女ではなかった。
狐じゃねぇか! 巫女でよかっただろ! 着替えに時間が掛かるからか? クソッ、人妻巫女が乱れる姿みせろ!
キツネ乃和木は、ポケットから四つ折りになったハンカチくらいの大きさの茶色い何かを取り出した。
「これは
油揚げだろ! さすがに本物ではないだろうけど!
乃和木は次に油揚げを人差し指と中指で挟んで前方に突き出した。
「悪霊退散!」
油揚げはお札じゃねぇんだよ! つーかお前の方が悪霊だろ! 化けぎつねめ!
今度はその場にしゃがんで何かを見つけたように目を見開いた。
「ごん、お前だったのか!?」
ごんぎつねかよ! てかお前がごん側だろ! 仲間殺してんじゃねぇぞ!
そうこうしていると狐ビッキーが登場してきた。うひょー、ケモ耳人妻たまんねー!
「狐といえば天気雨のことを狐の嫁入りと言いますわよね。一説には、日が照っているにも関わらず雨が降る不思議な現象を、同じく不思議な力を持つとされていた狐の仕業になぞらえてそう呼び始めたのだとか」
お天気要素キター!
「へぇー。ところでこの油揚げ、お稲荷さんにできませんか?」
はい、ノー天気要素。
また乃和木が着替えるためフェードアウトした。そのまま猟師に撃たれてくれ。
次はメイドか。頼むぞ、俺は人妻のメイドが見たいんだ!
しかし、乃和木はメイドさんではなく、黒いボロを纏い、柄の長い大きな鎌を持った浮浪者みたいなコスプレで出てきた。多分、死神だな。
メイドから冥土、そこから更に連想して死神ってことか? バカじゃねぇの! メイドでよかったろ! クソッ、人妻メイドが悪い貴族に雇われてNTRされるシチュエーションで妄想させろ!
乃和木がダンボールを黒く塗って銀紙を貼っただけのチープな死神の鎌を横にして近くにあった机に置いた。
「こちらご注文のオムライスです」
無理あるだろ! 催眠術に掛かってないとおかしいレベル!
「おいしくなーれっ、おいしくなーれっ、萌え萌えキュン!」
そんな下界の呪文に媚びる死神イヤだわ!
「さぁ、召し上がれ。これが後にチーカマと呼ばれるものなんですよ」
んなわけあるか! 鎌から連想しただけだろ! オムライスはどこ行った!
乃和木がバカなことを言っていると、ビッキー死神が登場してきた。
「わ、悪い子はいねぇがぁ、あ、これはナマハゲでしたわね。失礼しましたわ。フフッ」
あらかわいいねぇ。こういうのでいいんだよ。こういうプチ癒しやプチトラブルこそがこの番組に求められてるものなんだよ。
「響さんはおバカさんですねぇ! どう見てもメイドじゃないですかぁ!」
死神だよ! コイツみたいな人災級トラブルはいらねぇんだよ!
また裏に消えた乃和木。そのまま三途の川渡ってくれねぇかな。
次は猫、ではなく灰色で丸い耳のネズミが出てきた。なんだ猫もダメなのかよ。ネズミなんて誤差だろ。クソッ、メスネコ人妻見せろ!
「ハァハァ、吾輩は猫である」
ネズミだよ! てか疲れてるじゃねぇか! こんな連続でコスプレするからだよ! やっぱりもう一人キャスター用意しとくべきだったろ!
「ハァハァ、ようこそ山猫軒へ。まず髪をきちんとして、履き物の泥を落とすにゃん」
それ注文の多い料理店だろ!
「ハァハァ、次に体にクリームを塗って、香水を振りかけて、塩をまぶすにゃん」
ハァハァするから変態に見えるぞ! これじゃあ注文の多い風俗店じゃねぇか!
程なくしてビッキーネズミが出てきた。かわいい。
「ちゅ、チュウチュウ。ネズミって何を言えばいいのかしら。困りましたわね」
「ごん、お前だったのか!」
もう狐は終わっただろ! ごん要素どこだよ!
続いて警察官ではなく、全身白黒シマ模様の囚人が出てきた。
警察のコスプレは見逃されてるけど、法に触れる可能性あるもんな。クソッ、人妻ポリスに捕まらせろ!
「さぁカツ丼を吐け!」
色々と混ざってんぞ!
乃和木が手に持っていた手錠を机に置いた。
「チッ、今日のくさい飯はアンパンと牛乳ですか」
だから混ざってんぞ!
ビッキー囚人が出てきた。ぐへへ、結構体のライン出ててエロいじゃねぇか。
「何というかパジャマみたいですわね。落ち着くので嫌いではないですけれど」
「やだなぁ、警察官の服をパジャマだなんて、響さんお疲れですかぁ?」
自分を警察官と思い込んでいるちょっとアレな囚人です。無視しましょう。
で。
次はサンタだったな。まぁここまで来たら違うのだろうけど。
案の定、全く違う衣装で現れた。青い幼稚園服、短パン、黄色い帽子。サンタじゃなくて子供側かよ!
サンタは季節外れだからか? クソッ、人妻サンタに『プレゼントは私ですわ』って言わせろ!
「ハァハァ、靴下を寄越すのじゃ」
幼稚園児に
「ハァハァ、視聴者のみんな、おじさんと一緒にクリスマスを過ごさないかい?」
早く逮捕されろ!
そして、幼稚園児ビッキーが恥ずかしそうに出てきた。
「まさかこの年になって幼稚園児の格好をさせられるなんて思いませんでしたわ。あんまり膝まわりは見ないでくださいませ」
膝の辺りで手をヒラヒラして必死に隠している。そういえば気にしてたんだったな。別に綺麗な膝してるけどなぁ。ぐへへ、後で切り抜いてやるぜ!
「ハァハァ、お嬢さん、おじさんのトナカイに乗らないかい?」
お前は何かを示唆するようなのやめろ!
ともかくこれで後は魔法少女だけだよな。
「ここでちょっと残念なお知らせですわ。最後のコスプレ衣装の魔法少女の衣装がスタッフのミスで水に濡れてしまいましたわ。時間も押しているので申し訳ないのですけどここで終了と致しますわ」
う、嘘だ! 人妻のミニスカート姿が見れないなんて! 人類最大の損失だぞ!
「あ、私、こんなこともあろうかと他のコスプレ衣装持ってきてます! それ着て来ますよ!」
と言って乃和木が急いで裏に消えていった。
ふーん、たまには役立つじゃねぇか。でも嫌な予感しかしねぇ。
「お待たせしました! じゃーん! どうですか?」
それは緑のサヤに身を包んだ枝豆のコスプレだった。
あ……枝豆、緑、クロマキー合成。これまでの全てのフラグが繋がっていく。
「響さーん、どうですかぁ?」
あ、やめろ、そっちのグリーンバックの方に行くな!
いやでも、お天気映像映ってないしセーフか!
と思ったら見計らったように天気図の映像が映し出された。多分、面白くなりそうだからプロデューサーが指示しやがったな! よくやった!
直後、天気映像と一体化した乃和木。手先と足先、それと顔が浮いているように見える。あーあ、物理的にクビになっちゃったな!
手前にあるであろう自分の映像を見た乃和木。
「ぎゃああああ! なんですかこれぇ!! 首しかないですぅ!!」
スタジオに哀れな女の悲鳴だけがこだました。
お天気キャスターが天気自身になるとはな。オンリーワンの存在だぞ。よかったな。
こうして服装特番はいつものごとく残念な感じで終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。