第29話 梨沙とのショッピングデート 2

 次に向かったのは駄菓子屋さん。


「よかったぁ。この場所もまだ残ってて」


 そう言って梨沙が駄菓子屋に入る。


(そういえば、さっきの自販機も「まだ残ってて」みたいなことを言ってたな)


 そう思いながら、俺も駄菓子屋へ入る。


「駄菓子屋って久しぶりに来たなぁ」


「私もなんだ!」


 梨沙が俺の言葉に同意してくれる。


「あ、見つけた!これを買いに来たんだ!」


「おー!懐かしいお菓子だな!」


 梨沙が手に取ったのは、当たり付きの『スクラッチお宝くじ』。


 この駄菓子は中にスクラッチカードが入っており、当たると記載されている金額のお菓子を無料でゲットできる。


 最高金額は100円で俺も当てようと買いまくった時期があった。


「私、これで100円を当てたいんだ!100円を当てるまで帰らないくらい!」


「そんなに!?」


「うん!どうしても優斗くんがいる時に当てたいんだ」


 なぜ俺が居る時に当てないとダメなのかは分からないが、梨沙だけに買わせるのは申し訳ない


「なら俺も買おうかな。久々に食べたくなったし」


「うん!」


 俺たちは嬉々として10個の『スクラッチお宝くじ』を買い、開封する。


「やっぱり当たらないかぁ」


 俺は残念な結果にため息をつく。


 すると隣で梨沙が大声を上げる。


「あっ!私は100円が当たったよ!」


「えっ!」


 その声に俺は梨沙を見る。


 そこには、自慢するように俺に当たりクジを見せる梨沙がいた。


「ホントだ、当たってる。すごいな梨沙は」


(俺、1回しか100円を当てたことないんだよなぁ……あれ?そういえば当てた100円は誰かにあげたような……)


「よかったぁ、今日100円当てることができて……」


 そう言って梨沙が俺に100円の当たりクジを渡してくる。


「え!俺はいらないよ!?」


「いいのいいの!これは私からのお礼……というか、借りたものを返しただけだから!」


 梨沙が満面の笑みで渡してくる。


「そ、そうか。よくわからないが、そう言われたら受け取るしかないかな」


 断ることはできないと思い、俺は梨沙から当たりクジをもらう。


「無事、優斗くんに返すことができたから次の場所に行こ!」


 そう言って歩き出す梨沙に俺はついて行った。




「最後は屋上に行きます!」


 レンタルが終了する時間が近づいているわけではないが、梨沙が最後と言って、屋上に向かう。


「わー!相変わらずここからの眺めはいいね!」


「今の時間じゃ夕日は見れないけど、ここからの夕日は綺麗なんだよ」


 そして到着早々、景色の良さに感嘆の声を上げる。


「でも、ここは昔と比べると大分変わってしまったね」


 すると、今度は残念そうな声で言う。


「そうだな」


 昔の屋上は、子どもたちが遊ぶことのできる遊具がたくさん設置してあった。


 しかし、利用する子供が減少したことで、今は全ての遊具が撤去され、散歩ができる場所へと変わっている。


 そのことに梨沙と同じように残念な気持ちとなっていると、梨沙が外の景色を見ながらポツポツと話し始める。


「私ね。小学3年生の頃、両親とお姉ちゃんの4人で、ここの近くに住んでいる祖父母の家に遊びに来たんだ。その時、このショッピングモールに来たんだ」


「ってことは、梨沙って昔からここに住んでないのか?」


「うん。私、小学校を卒業すると同時にこの街に来たんだ」


「それは初めて聞いた」


 てっきり、生まれも育ちもこの街かと思っていた。


「家族4人でショッピングモールに来た時、私は迷子になってしまったの。そして何処に行けばいいのか分からず、自動販売機しかない場所で泣いてたんだ」


(なるほど。その場所が今日最初に行った自動販売機しかなかった場所か)


 今の発言から、今日行った自動販売機の場所が泣いていた場所であることは容易に理解できる。


「私が1人で泣いている時、一人の男の子と出会ったんだ。そして、その男の子に連れられて駄菓子屋と屋上にある遊具で遊んだの。最初は泣いてばかりだった私は次第に笑顔になって、迷子だったことも忘れるくらい楽しい時間を過ごしたんだ」


 梨沙が懐かしむように語る。


 その時のことが本当に楽しかったようで、話している梨沙の表情は緩んでいる。


「あの時その男の子に出会わなければ、今みたいに元気が取り柄の私になってないと思う。それくらい、私にとっては大事な思い出」


 そう言って梨沙が俺の方を向く。


「今日はね。私の思い出の場所を優斗くんと一緒に巡りたかったんだ。変わってた場所もあったけど、とても楽しかったよ!」


 そして笑顔を見せる。


(俺は梨沙が語った内容を知っている。いや、覚えている。なぜなら俺も、小学3年生の頃に自動販売機のところで迷子の女の子に出会った。そして、駄菓子屋と屋上の遊具で遊んだことがある)


 そこで一つの結論に辿り着く。


(そうか。梨沙は俺に思い出してほしかったのか。昔出会っていたことを)


 梨沙はその時の男の子が俺だということに気づいており、今日のデートを企画したんだ。


「そうか、あの時の女の子は梨沙だったのか」


「優斗くん!気づいたんだね!」


 俺が気づいた発言をすると、梨沙がパーっと笑顔になる。


「あぁ。今まで忘れててごめん、梨沙」


 そんな梨沙に俺はすぐに謝る。


「ううん、気にしなくていいよ!最初はショックだったけどね!」


「うっ!」


 その言葉に言葉が詰まる。


「でも、今思い出してくれたから許すよ!」


 申し訳なさしか感じないが、梨沙は俺の失態を許してくれる。


 その寛大な心に感動していると「優斗くん!」と声をかけられる。


「あの時、私を助けてくれてありがと!」


 そして見惚れてしまうほど眩しい笑顔で俺に感謝の言葉を言った。

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