第27話 彩さんとのお泊まりデート 4
翌朝、俺は陽の光によって目が覚める。
(ん、なんか右腕に柔らかい感触を感じるんだが……)
俺は不思議に思いつつ目を開けて右腕を見てみると、何故か隣に彩さんがいた。
「%#$*<&¥っ!」
その姿を見て大声を上げてしまう。
「んんっ……」
俺の大声を間近で聞いた彩さんが、目を擦りながら目を開ける。
「あら、おはよう、ゆーくん。昨日はよく眠れたかしら?」
そして今の状況が異常事態であることに気がついていない様子で、俺に挨拶をする。
「おはようございます……って!なんで俺の隣で寝てるんですか!?」
「ゆーくんの寝顔を見ながら眠ったからよ。可愛い寝顔だったわ」
「説明になってません!」
そう話つつも彩さんを振り払おうとするが、ガッチリと俺の腕に抱きついているため、全く振り解けない。
「あ、彩さん?そろそろ離れてくれませんか?」
「イヤよ」
「………な、なぜですか?」
「ちょっとお話ししたいからよ。草薙優斗くんと」
「っ!」
(バ、バレとるっ!)
「まさかゆーくんが草薙くんだとは思わなかったわ」
そこで気がつく。
オールバックにしていた俺の前髪が全て目元まで下ろされていることに。
(これは言い逃れできないな)
俺は誤魔化すのを諦め、素直に認める。
「そうです。俺は彩さんが副担任を務めるクラスの生徒、草薙優斗です」
「やっぱりそうなのね」
彩さんが未だに俺の腕に抱きついているが、今は引き剥がす前に謝らないといけない。
「すみません、嘘をついてしまい」
「いいのよ。私が見抜けなかったところに問題があるのだから」
美羽が俺の正体に気付いた時も同じようなことを言っていた。
「だから謝らなくてもいいわ。でも、大人を騙すのは良くないわね」
「うっ!」
全面的に俺が悪いので文句は言えないが、不敵に笑う彩さんを見て、身構えてしまう。
「な、何か要望がありますか?」
「そうね。私からの要望は1つよ。今まで通り、ゆーくんには私の愛人兼ヒモ役をしてもらうわ」
「えっ!続けるんですか!?」
先生と生徒という関係がバレてしまったので、てっきり解消されると思った。
「もちろんよ。私、ゆーくんのことが好きだからね」
「………え?」
突然の告白に固まってしまう。
「ふふっ、固まってるわね」
そんな俺を見て“クスクス”と笑う。
さっきから抱きつかれた状態のままだが、それどころではなくなる。
「私、ゆーくんのことが好きになったみたいなの。もちろん、LOVEの方の好きよ。だから責任を取ってほしいわ」
「そ、それが今まで通り、愛人兼ヒモ役を続けることですか?」
「そうよ。もちろん、ゆーくんさえ良ければ本物の愛人件ヒモになっても構わないわ」
「そ、それは……」
彩さんの告白に俺は即答できない。
(彩さんは魅力的な女性だ。きっと、彩さんと付き合う……と言えるかはわからないが、彩さんの愛人になれば幸せになれるだろう)
だが、俺は今までモモの幸せしか考えたことがなく、自分の幸せを考えたことがない。
だから彩さんのことをどう思っているか分からず、簡単に返答できない。
「ふふっ、今すぐ本物の愛人になってほしいわけじゃないわ。だってゆーくんには梨沙さんか美羽さんがいるからね」
「……ん?なんで梨沙と美羽が出てくるんですか?」
「え?だってゆーくん、梨沙さんと美羽さんのどちらかと付き合ってるよね?」
「………はぁ!?」
彩さんが抱きついている状態にも関わらず大きな声を出す。
「あら違うの?いつも仲良く3人で弁当を食べてるから2人のどちらかと付き合ってると思ってたのだけど」
どうやら俺が2人と昼食を一緒に食べていることを知っていたようだ。
「俺は誰とも付き合ってませんよ」
「あらそうなの?2人とも実は奥手なのね」
「……?」
奥手の意味は分からなかったが、今は彩さんとの今後を考える。
「俺、彩さんの愛人兼ヒモ役を続けることには同意します。ですが、自分が彩さんのことを好きかは分からないんです。だから今すぐは本物の愛人になれません」
「あら、そうなの。残念だわ」
少し肩を落としてガッカリされる。
「ですが、必ず自分の気持ちを整理して答えを出します。なので、申し訳ありませんが少しだけお時間をいただいても良いですか?」
図々しいお願いということは理解している。
そのため彩さんに抱きつかれた状態だが、誠心誠意頭を下げる。
「いいわよ。ゆーくんの納得がいく答えが出るまで、返答の催促はしないことにするわ。私がゆーくんのことをいつまで待つかは分からないけどね」
そう言って、俺の頬に“ちゅっ”とキスをする。
「〜〜〜っ!」
「ふふっ、顔が真っ赤よ」
彩さんの顔も真っ赤になっているが、突然のキスに指摘できない。
「ゆーくん成分もいただいたことだし、そろそろ朝の身支度をしようかしら」
そう言って、ようやく俺から離れた彩さんが洗面所へ向かう。
「こ、これからどうなってしまうんだ?」
俺は天井を見上げつつ、そんなことを思った。
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