第26話 彩さんとのお泊まりデート 3
「お風呂、上がったわ」
モモに電話をして心が落ち着いた俺は、長風呂だった彩さんを見ても動揺しなくなった。
どうやら彩さんもお風呂に入ったことで落ち着いたようだ。
「予定では翠さんもこの部屋に泊まることになってましたけど……」
「お母さん、帰ったわね」
予想外の展開で俺たちはどう動けば良いか分からず固まってしまう。
俺は明日の昼までレンタルされている以上、俺から帰ることを提案しずらい。
その意図を汲み取ったのか、彩さんがゲームのコントローラーを持ち、俺に手渡す。
「せっかくお金を払ってるんだもの。ゆーくんにはゲームに付き合ってもらうわ」
「わ、分かりました!」
俺は手渡されたコントローラーを受け取り、彩さんとゲームをする。
「私、最近これにハマってるの」
そう言って起動したゲームはヒゲオヤジたちが車やバイクに乗ってレースをするゲーム。
「いいですよ。これから昔、やったことあります」
「ならこれにするわ」
そして俺たちはレースゲームを始める。
しばらく2人でゲームをしていると…
「ねぇ、ゆーくん」
「なんですか?」
「今、赤コウラ当てたの、ゆーくんよね?」
「そ、そういうゲームですから」
「ふーん」
そう言ってゲームを再開する。
「あっ!今、俺を踏み付けましたね!ペシャンコじゃないですか!しかも、俺に恨みがあるかのように俺だけを狙って!」
「そういうゲームよ」
「あ、今、トゲコウラ投げましたので」
「……あとで覚えておきなさい」
そんな感じで2人でゲームをする。
しばらく楽しくゲームをしていると…
「うとうと……」
「あら、眠くなったかしら」
「はっ!す、すみません!」
睡魔に襲われた俺が不覚にも眠ってしまった。
「いいのよ。もう0時を回ってるのだから」
そう言って彩さんがゲームを終了させる。
「すみません、彩さん。寝ないつもりだったのですが、眠くなって……」
「ふふっ、気にしなくていいわ。ゆーくんは私のベッドで休んで良いわよ」
「そ、それは無理ですよ。俺はクッションだけで大丈夫ですから」
睡魔に抗いながら、なんとかクッションで寝床を作る。
「一緒にベッドで寝ましょって提案したいのだけど……さすがにまだちょっと難しいわ」
「あくまで愛人のフリですからね。そこまでしなくていいですよ」
「そうね。でも、やるからには徹底的にやらないと。私の独身ライフのために」
そう言って彩さんが照明を落とす。
(やるからには徹底的に?もう十分な気もするが……ヤバい、電気が消えた瞬間眠くなってきた……)
「すみません、眠くなりました。おやすみなさい、彩さん」
「ふふっ、おやすみ。ゆーくん」
俺は耳元で彩さんの声を聞き、眠りについた。
〜並木彩視点〜
「ゆーくん、寝ちゃったわね」
「スウスウ……」と可愛らしい寝息を立てて、私の愛人件ヒモであるゆーくんが寝ている。
「普段はキリッとしててかっこいいけど、寝てる姿は可愛らしいわね」
私は一瞬で寝たゆーくんの隣に座り、ゆーくんと一緒に横になる。
「不思議ね。男の人とこんな風に近づいても嫌な気持ちにならない。むしろドキドキするわ」
私は心臓の音がどんどん大きくなるのを感じ取る。
「って、そんなことをしてる場合じゃないわ。私はあることを確認しに来たんだから」
私はドキドキした気持ちを抑えつつ、ゆーくんの右手に触れる。
そこには可愛い熊のイラストがプリントされている絆創膏が貼られていた。
「やっぱり、私が草薙優斗くんにあげた絆創膏だわ」
この絆創膏は私が最近、通販買った絆創膏。
可愛くて常に持ち歩いており、私は今日の学校で草薙くんに渡した。
酔っ払っていた時は普通に気づかなかったが、冷静になった今、違和感を感じた。
「もしかしてゆーくんは草薙優斗くんなの?」
そう思い、彼のチャームポイントらしい前髪を触る。
ワックスでガチガチに固めているが「ごめんなさい」と心の中で謝りながら、目元まで髪を下ろす。
「っ!」
そこには私の生徒で、今日の大掃除では私と一緒に生徒指導室の片付けを手伝ってくれた草薙優斗くんがいた。
「そ、そう。ゆーくんは草薙優斗くんなのね」
そう気がついた瞬間、さらに鼓動が速くなる。
「いつも私のことを助けてくれてありがとう」
私はゆーくんの頭を撫でながら囁く。
優斗くんには学校で今日みたいに助けられることが何度もあった。
そう思い、私は日頃の感謝を込めて…
「ちゅっ」
と、ゆーくんの頬にキスをする。
「って!何してるの、私!」
無意識のうちにゆーくんへキスをしてしまい、慌ててゆーくんから離れる。
そんな騒ぎを起こしているが、ゆーくんは一向に起きない。
今も規則正しく「スウスウ……」と寝息を立てている。
「ふふっ、ほんと可愛いわね」
その様子を見て冷静になると同時に、もう一度をキスしたくなる。
そこで私はあることに気がつく。
「も、もしかして、さっきのキスは日頃の感謝じゃなくて、私がゆーくんにキスしたかっただけなのでは?」
その事実に気づき、顔を赤くしてしまう。
「〜〜っ!そ、そんなわけないわ!ゆーくんは私の教え子なのよ!」
そう言い聞かせるが、一度キスをしてしまったら2回しようが変わらない。
「も、もう一回だけしてしようかしら」
そう思い、私は再びゆーくんの頬に近づく。
普段、学校では気配りができる優しい男の子。
そして今は私のワガママに付き合ってくれて、一緒にいて楽しいと思える男の子。
この気持ちを私はなんとなく理解している。
「好きよ、ゆーくん」
そう呟いて私は再び、ゆーくんの頬にキスをした。
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