第25話 彩さんとのお泊まりデート 2

「ふふっ、彩はお酒を飲むと人肌が恋しくなるの。酔いが覚めるまで誰かにずっと抱きつくわ」


「えぇーっ!」


 俺の声が部屋中に響き渡る。


 今の俺は、彩さんに背後から腕を回され密着されている。


「あ、彩さん!?翠さんが目の前にいますよ!」


「それくらい問題ないわ。むしろ、私たちの同棲を疑ってるくらいだから、私たちがラブラブな愛人であることを見せつけてあげましょう」


 耳元で彩さんの声がする。


 呼吸の音も聞こえるほどの距離だ。


「どうやら酔っ払ったみたいね」


「お母さん、私は酔ってないわ。なんだか身体は熱いけども」


「そりゃ、こんな真夏にお酒飲んで密着してたら……んんっ!」


 俺の発言がうるさかったのか、“むぎゅっ”と背中に2つの大きな膨らみを押し付ける。


「あ、彩さん!そ、その……あ、当たってますよ!」


「なぁに?私の胸が気になるの?ふふっ、いつも大人ぶってるくせに意外と初心なのね。ツンツン」


 そして俺の頬をツンツンしてくる。


「あのぉ、翠さん。彩さんって記憶が残るタイプですか?」


「バッチリ残るよ。いやぁ、最高の酒の肴ね!」


「見てなで助けてください!」


「えぇー?どうして?同棲してるんだから、いつもこれくらいのスキンシップしてるでしょ?」


「うっ!」


 そう言われたら振り解けない。


「やっぱりゆーくんって肌がキレイね。ほっぺなんか女の子みたいに柔らかいわ」


「ひぃ〜っ!」


 声色は普段通りなのに、お酒のせいか、彩さんの言動がエロく見える。


「どうしたの?ゆーくん、顔を真っ赤にしちゃって。もしかして照れてるの?」


「当たり前です。こんなのされて照れない方がおかしいですよ」


「ふふっ、可愛いわね」


 そう言って“クスクス”と笑う。


「お酒の力を借りてるとはいえ、やるじゃない彩。これなら孫の顔も見れそうね」


「愛人の俺に期待しないでください!」


「そうよ!私はゆーくんとこんな感じに過ごすだけで幸せなんだから……スリスリ……」


「あわわわわっ!」


 今度は彩さんが俺の頬に頬ずりしてくる。


「いやー、とても良いものが見れたわ。なんだか良い感じだから、私はこの辺りでお暇するよ」


 そう言ってなぜか荷物を持って席を立つ翠さん。


「えっ!帰るんですか!?」


「もちろん。2人の邪魔をするわけにはいかないからね。草薙くん、彩のことお願いね」


「あ、ちょっ!」


 “バタンっ!”と扉が閉められ、アパートを出る翠さん。


「全く、困ったお母さんね」


「その通りですが、現在の俺は彩さんにも困ってます。そろそろ離れてくれませんか?」


「イヤよ」


「え!?」


「だってゆーくんをこうやって“ぎゅー”ってするの、とても良いんだから。ぎゅーっ!」


(あぁ!胸が!彩さんの爆乳が俺の背中に!)


「やっぱり男の子の背中は広いわね。このままゆーくんを抱き枕にして眠れそうだわ」


「このまま寝れなでくださいよ!?」


「ふふっ、冗談よ。やっぱり、今日のゆーくんはいつもより可愛く見えるわ。なぜかしら?」


「俺は彩さんがいつもよりヤバく見えますけどね」


「もうっ、そんなこと言う子にはお仕置きよ」


「えっ!?こ、これ以上、何をするんですか!?」


「ふふっ、例えば……ふ〜っ!」


「〜〜〜っ!」


 俺は耳に息を吹きかけられ、ビクッとなる。


「ゆーくん、耳弱いのね、ビクッてなったわ」


 どこか楽しそうな声色で彩さんが言う。


(これ以上はマズイ!翠さんがいない今、監視してる人がいなくなった!このままじゃ俺の理性が持たないぞ!)


 ただでさえ爆乳を背中に押し付けられている状況だ。


 これ以上、色々されると押し倒す自信がある。


 そんな俺のことなど気にならないかのように、「ふふっ」と耳元で笑っている彩さん。


「可愛らしい熊さんの絆創膏までしちゃって。ゆーくんはおっちょこちょいかな?」


 そして俺が今日貼った熊のイラストがプリントされている絆創膏を見て頬をツンツンし始める。


 これ以上、何かされると理性を抑えることができないため、無理やり振り解こうとすると、急に背中に押しつけていた胸の感触がなくなり、俺への抱きつきが弱まる。


「彩さ……」


「ゆーくん、絶対振り向いたらダメよ」


「あ、彩さん!ようやく我に返った……」


「だからこっち向いちゃダメって言ってるでしょ!?」


「ぐへっ!」


 振り向けないようにギュッと首を絞めてくる彩さん。


「頭はボーッとするし、暑いし……」


「ま、まぁ、上手い具合に翠さんにイチャイチャしてるところが伝わったので結果オーライということで……」


「……そうね。そういうことにしましょう」


 そう言って俺の首から手を離す。


 そこで俺は彩さんの方を向く。


 お酒のせいか、先ほどの行為を覚えているためかは分からないが、彩さんの顔は真っ赤になっていた。


「彩さん。自分が何をしたか覚えてますか?」


「………覚えてないわ」


「すまし顔でウソをつきますね」


「えぇ、そうよ!全て覚えてるわ!」


 彩さんが顔を真っ赤にして弁明してくる。


「い、一旦距離を置くわよ!わ、私、お風呂の準備をしてくるから!」


「わ、分かりました!俺は家で入ったので、そのままお風呂に入ってください!」


「え、ええ。分かったわ」


 そう言って彩さんが部屋から消える。


「あ、危なかった。あのまま彩さんが酔っ払っていたら俺の理性が……」


 俺は心を落ち着けるため、モモに電話をかけた。

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