第20話 美羽とのデート後
「えっ!美羽ちゃんと優斗くん!?」
真剣な顔で美羽が何かを言ってる最中に、梨沙の声が聞こえてくる。
(マズイっ!オールバックにしてる俺のことを『草薙優斗』だと知ってる梨沙に鉢合わせた!美羽に俺の正体がバレるっ!)
最悪な展開を想像し、冷や汗が出る。
「り、梨沙!な、なんでこんなところに!?」
「私は買い物をしてただけだよ。それよりも美羽ちゃんは優斗くんと何してたの?」
「え?優斗?どこに優斗がいるんだ?」
「……?優斗くんならそこに……」
と、カミングアウトしていたので、俺は梨沙の発言を遮るように大声をあげる。
「や、やぁ!君は美羽のお友達かな!?俺は草薙優って言うんだ!」
(頼む!話を合わせてくれ!)
「………何やってるの?優斗くん」
しかし、俺の願いは梨沙に届かず、アホな子を見る目で俺を見る。
(ダメだっ!全くわかってくれねぇ!)
学校ではトップ5に入るほどの学力を持っている梨沙が俺の意図を汲み取ってくれない。
その時、恐れていたことが起こる。
「も、もしかして優って優斗なのか?」
俺と梨沙のやり取りで勘づいた美羽が俺に問いかける。
「え、えーっと……」
「そうだよ?もしかして気づいてなかったの?」
「っ!」
梨沙が肯定したことで美羽の顔が驚きに変わる。
「そうか、優は優斗なんだな」
梨沙が嘘をついているようには見えなかったのか、それとも俺の変装に気付いたのかは定かではないが、俺の正体に気づいたようだ。
「………あぁ、俺は美羽と梨沙のクラスメイトの草薙優斗だ」
そのため誤魔化すのは無理だと判断し、真実を告げる。
「そう……か」
その時、美羽が困惑した表情となる。
どのような心境でそんな顔になったかは分からないが、今すべきことは謝ること。
「ごめん!美羽!俺は美羽に嘘をついてた!」
俺は勢いよく頭を下げる。
「な、なんで優斗が謝るんだよ。アタシが初めて優斗をレンタルした日に……いや、今日会った時に優斗だと気がつけば良かっただけだろ?」
「違うっ!俺は変装してたから……」
「変装してても気づかないとダメだろ。実際、梨沙は優斗だと気づいたからな」
確かに梨沙は一目で俺の変装を見破った。
そのため、何て言えばいいかが分からず言葉に詰まる。
「そ、そうか。優は優斗だったのか……」
そう呟く美羽の顔は段々と赤くなっているような気がする。
「お、怒ってるよな?」
そんな美羽へ恐る恐る問いかける。
「お、怒ってはないが……あ、明日から優斗とどうやって接すればいいか分からなくて困ってる。アタシの恥ずかしいところを見られたし……」
「恥ずかしいところ?」
「梨沙。一旦、落ち着こうか。着替えを見たとかじゃないから、そんな目で俺を見ないでくれ」
きっとお化け屋敷のことを言ってるのだろうが、言葉足らずで梨沙からジト目を向けられる。
「ふーん、なるほどね。今のやり取りで大体分かったよ。美羽ちゃんは優斗くんだと知らずにレンタル彼氏を利用したんだね」
「そうだ」
「そして、優斗くんは優と名乗って自分がクラスメイトの草薙優斗であることを隠した」
「あぁ。その通りだ」
俺と美羽が梨沙の言葉に同意する。
「なんで美羽ちゃんはレンタル彼氏なんか始めたの?」
「あー、これには深い事情があって……」
そう前置きして、美羽が事情を説明する。
「つまり、結衣ちゃんに見栄を張って彼氏がいると言ってしまったと」
「あぁ」
「………美羽ちゃん、初恋もまだなのに何でそんな見栄を張るかなぁ」
「お、仰る通りです……」
梨沙の発言にぐうの音も出ないようだ。
「とりあえず事情は分かったよ」
そう美羽に伝えて今度は俺を見る。
そして俺の耳元まで近づき…
「優斗くんは私のお誘いを断って美羽ちゃんとデートしたんだね」
「え、えーっと……」
その通りなので反論できない。
「埋め合わせ、とても期待してるからね!」
そう言って小悪魔な笑みを浮かべる。
「き、期待はしないでくれ……」
そう答えるのが精一杯だった。
その後、美羽から怒られることなく、俺たちは解散となった。
なにやら梨沙と美羽は話したいことがあるようで、2人は一緒に帰っている。
「明日から美羽とどう接すればいいんだろ……」
そんなことを思いつつ、帰路についた。
*****
次話は美羽視点となります。
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