第18話 美羽との遊園地デート 3
長谷川姉妹の喧嘩を笑いながら見学し、体調が良くなったので起き上がる。
「ごめん、2人とも。もう大丈夫だから」
「さっきよりは顔色が良さそうだな」
「うん!じゃあ草薙さんの体調も良くなったので、ご飯を食べに行くよ!」
「そうだな。少し早いけど混む前に行った方が良さそうだ」
そのため、11時になっていないが、早めの食事を取ることにする。
俺たちは結衣ちゃんが行きたかったレストランに入り、料理を注文する。
「んー!美味しいっ!」
美味しそうに食べる結衣ちゃんを俺たちは微笑ましく見守り、結衣ちゃんが食べ終わったのを見計らって大事な話をする。
「アタシたちから結衣に大事な話があるんだ」
「……?」
俺たちの真剣な顔に結衣ちゃんの顔が引き締まる。
「優が県外に行くことになったんだ。だから、今日で優とは当分の間、会えなくなる」
これを伝えることが今日の目的。
伝えなければ、今回みたいに俺に会いたいと結衣ちゃんに言われ、その度に美羽が俺をレンタルしなければならなくなる。
それを避けるため、俺たちが遠距離恋愛を始めることを伝える。
「えっ!草薙さん、県外に行っちゃうんですか!?」
「あぁ。期間も未定だから、この街に戻ってくるのがいつになるか分からない。だから美羽と次に会えるのがいつになるかも分からないんだ。でも、美羽とは変わらずお付き合いするから」
「そうなんですね……」
俺たちの話を聞いて結衣ちゃんが落ち込む。
しかしすぐに顔を上げて…
「なら、ウチと一緒にいる場合じゃないよ!草薙さんと2人きりでデートしてきて!」
「あぁ。結衣ならそう言うと思ったよ」
これを見越して俺を夕方までレンタルしたらしい。
「ウチはしばらくこの店で友達を待ってるから、お姉ちゃんは草薙さんとのデートを楽しんで!」
結衣ちゃんが俺たちを笑顔で送り出す。
その時「あっ、そうだ!」と結衣ちゃんが“ポンっ!”と手を叩く。
「お姉ちゃん、草薙さんとお化け屋敷行きたいって言ってたから、2人で行ってきてください!」
「!?」
結衣ちゃんの発言に美羽がビクッとなる。
「そうなのか。なら今から行ってみるか」
「ア、アタシはお化けなんて……こ、怖くないしっ!ビビってなんかないしっ!」
「そんなこと聞いてねぇよ」
的外れな返答が返ってくるが、拒否はしないようだ。
「じゃあ結衣ちゃん。友達との遊園地、楽しんでね」
「うんっ!草薙さん、今日はありがとうございました!こっちに帰ってきた時は絶対会いましょう!」
「あ、あぁ。その時は連絡するよ」
もう2度と会うことはないので、ぎこちない返答となったが、俺は結衣ちゃんと別れ、美羽と一緒にレストランを出た。
「さて、じゃあお化け屋敷に行くか」
「っ!あぁ!アタシはビビってなんかないしっ!」
「誰もそんなこと聞いてねぇよ」
全力で怖くないアピールをし始める。
そのため店を出た俺はお化け屋敷に向かうべく、歩き出す。
「ゆ、優!」
すると、美羽が俺の裾を掴む。
「ほ、本当に行くのか?」
「あぁ。行く予定だが……もしかして怖いのか?」
先程からのアピールは強がりだと思い、問いかける。
「っ!べ、別にアタシは怖いとか思ってないぞ!た、ただ本当に行くのかなーって……」
「結衣ちゃんに美羽を連れて行けって言われたからな」
「ゆ、結衣〜っ!」
妹の名前を呟いて結衣ちゃんのいるレストランを睨みつける。
「どうする?行くのか?」
俺の問いかけにものすごく悩み抜いて…
「い、行く。優がいれば大丈夫な気がする……」
「そうか。なら行ってみるか」
美羽の反応を見れば実はお化けが苦手ということを理解できるが、反応が面白そうなので美羽の見栄に付き合って気づかないフリをする。
俺は表情の固い美羽を連れてお化け屋敷へ向かい、お化け屋敷の列に並んだ。
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