第17話 美羽との遊園地デート 2
遊園地が開園する。
「ウチ、あれ乗りたい!」
と言って結衣ちゃんが指差したのは、この遊園地で目玉となるジェットコースター。
かなりの絶叫マシンとなっており、高いところからの急降下や連続5回転するコースもある。
「お、いいな。優は乗るか?」
未だに恋人繋ぎをしている美羽が俺に聞いてくる。
「乗ったことないから乗ってみるか」
「さすが優だ!」
最初に乗るアトラクションが決まり、さっそく並ぶ。
日曜日ということでたくさんの人が並んでいたが、3人で雑談していると、あっという間に順番が来る。
「お姉ちゃんと草薙さんが隣同士で、ウチは2人の前に座るよ!」
とのことで俺と美羽が隣同士に座る。
「美羽は結衣ちゃんと同じように絶叫系のアトラクションが得意なのか?」
「あぁ、これくらいなら問題ない」
その言葉は嘘じゃないようで、目がキラキラしている。
「優はどうなんだ?」
「そうだな。得意ではないが美羽にカッコ悪いところは見せたくないからな。美羽と一緒に楽しむよ」
「優……」
「おー!さすが草薙さん!今の言葉はポイント高いですよ!」
「いつからポイント制になったんだよ」
首だけを後ろに向けて俺たちの会話に乱入した結衣ちゃんへツッコみを入れる。
そんな話をしていると従業員に声をかけられ、レバーを降ろす。
そしてジェットコースターが動き出す。
(お、思ったより高いな……ってここから落ちるの!?)
そう思った時、急降下する。
「ギャァァァァ!!」
「「キャーーーっ!!」」
俺は悲鳴を、長谷川姉妹は楽しそうな声をあげる。
(速すぎぃぃぃぃっ!止めて!止めてぇぇっ!)
心の中で1人叫んでいると、いつの間にかジェットコースターが終わっていた。
「さ、叫び疲れた……」
「いやー、楽しかったな!」
「だね!」
想像以上の絶叫系で疲れきたった俺。
そんな俺とは真反対の2人。
「優は……だ、大丈夫か?顔色悪いぞ?」
「あ、あぁ。ちょっと飲み物を買ってくる」
俺は自販機を求めて歩き出そうとすると、右手を美羽に握られる。
「優はベンチで休憩だ。悪いけど、結衣。どこかで水を買ってきてくれ」
「わかったー!」
美羽の指令に結衣ちゃんがダッシュで自販機を探しに行く。
「ごめんな、美羽」
「気にするな。むしろアタシらに付き合ってくれてありがとう」
俺は美羽に手を引かれて近くのベンチへ腰掛ける。
そして俺と手を繋いだ状態で美羽も腰掛ける。
「やっぱり優は優しいな」
「そんなことないぞ。俺からすれば美羽の方が妹想いで優しい女の子だと思うけどな」
「そうか。優に言われると嬉しいな」
そう言って美羽が微笑む。
「本当の彼女なら今の優を膝枕するのかな?」
「ん?」
「あ、いや……本当の彼女なら体調の悪そうな彼氏を膝枕して介抱するのかなって思っただけだ」
「そ、そうだな。本当の恋人ならするんじゃないか?」
もちろん、彼女なんか今まで一度もいない俺に根拠はない。
「そうだよな」
そこで美羽が考え事を始める。
「い、今は優の彼女なんだ。これくらいは普通……」
「……?美羽?」
そんな美羽を見て不思議に思っていると、美羽がからめていた手を解き、俺の身体を突然引き寄せる。
「うわっ!」
突然のことで防ぐ術がなく、俺は横に倒れて美羽の太ももに側頭部を乗せる。
「美羽!?」
「い、今のアタシは優の彼女。こ、これくらい問題ないことだ。だから今はアタシの膝枕でゆっくり休んでくれ」
そう言う美羽だが、頬を赤くしており、恥ずかしいことをしている自覚はあるようだ。
偽の関係にここまでやる必要はないと思うが、体調の悪い俺のために恥ずかしいことをやってくれた。
その勇気を無駄にするわけにはいかないので、俺は美羽の太ももを堪能する。
「ありがとう。少しだけこのままでいさせてくれ」
「あぁ」
そう言って美羽が俺の頭を撫でる。
しばらく美羽の柔らかい太ももで体力を回復していると、“パシャっ!”というシャッター音が聞こえてくる。
「「……え?」」
「あ、ウチのことは気にしなくていいから、そのまま膝枕してていいよ!」
どうやら犯人は結衣ちゃんのようで、スマホと水を持ちながら俺たちに駆け寄る。
「見て!草薙さん!お姉ちゃんの顔!デレデレですよ!」
「っ!」
そこには優しく微笑んでいる美羽が俺の頭を撫でていた。
(この顔は……反則だろ)
写真に写る美羽の顔にドキっとする。
「結衣っ!今すぐ消してっ!」
「分かった!お姉ちゃんのスマホに写真送っとくよ!」
「そんなこと言ってないだろ!」
そして謎の姉妹喧嘩が始まるが、圧倒的に結衣ちゃんが優勢。
結局、消すことは叶わず、美羽のスマホに写真が送られた。
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