第12話 3大美女との学校生活 2
美羽と職員室に到着する。
そして呼び出した並木先生のもとへ向かう。
「来てくれてありがとう。コレとコレを授業開始までに配ってくれるかしら」
「分かりました」
俺と美羽が並木先生から大量のプリントを受け取る。
「それと、草薙くんはいつになったら髪を切るの?」
「え、えーっと……そのうちですかね?」
「その言葉は聞き飽きたわ」
俺は常々、並木先生から長い前髪を切るように言われていた。
だが「そのうちですかね?」と言い続け、未だに切っていない。
「切らないのなら私が草薙くんの髪を切るわよ?」
「ダメです!この前髪は俺のチャームポイントなので!」
「そんな物をチャームポイントにしないでほしいわ」
「はぁ」と並木先生がため息をつく。
現在の俺はこの前髪のおかげで美羽と並木先生にバレていないと思っている。
そのため、今まで以上に必死になって前髪を守らなければならない。
「要件は以上よ。授業開始までに配っておいてね」
俺と美羽は並木先生に「分かりました」と答え、教室へ戻る。
「あ、そうそう」
教室へ戻ってる際、美羽が口を開く。
「アタシの知り合いに『草薙優』って男の子がいるんだ」
「っ!」
(も、もしかしてバレたか?)
そう思い、ビクビクしながら続きの言葉を待つ。
「似てる名前の人っているんだなぁ」
(よかったぁ。同一人物と勘繰られないで)
そのことに安堵しつつ「同姓同名の人は珍しくないからな」と返答する。
「それもそうか」
そう呟いて美羽が納得する。
その後も雑談をしながら教室へ戻ると…
「あ、プリント配るんだね!私も手伝うよ!」
大量のプリントを持っている俺と美羽を見て、山﨑さんが駆け寄ってくる。
「俺は1人で配れるから美羽のプリントを配ってくれ」
「……美羽?」
すると美羽の名前を呟いて固まる。
「いやいや、アタシも1人で配れるから梨沙は優斗を手伝ってくれ」
「……優斗?」
そして俺の名前も復唱し、ジトーっとした目で俺たちを見る。
「ふーん、2人とも名前で呼び合うくらい仲良しなんだね」
「そんなことないぞ。さっき初めて話した」
「あぁ。だからそんな目で見ないでくれ」
と、俺たちは説明するがジトーっとした目をやめない。
「私の方が美羽ちゃんより先に仲良くなったのに」
「……へ?」
「私の方が先に草薙くんと仲良くなったのに!」
ぷくーっと頬を膨らませながら山﨑さんが言う。
「そ、そうだな。美羽とは今日初めて話したから仲良くなったのは山﨑さんの方が先だ」
「でしょ!なのに美羽ちゃんのことは名前で呼んで、私は名前で呼んでくれないんだ……」
すると頬を膨らませた表情から一転、悲しそうな表情となる。
「え、えーっと……梨沙?」
「〜〜〜っ!」
そのため俺が名前を呼ぶと、一瞬で顔を真っ赤にする。
「……もう一回」
「……梨沙」
「〜〜〜っ!」
そして顔を赤くした梨沙が身体をクネクネし始める。
「ふーん、なるほどな」
その様子を見た美羽が何かを理解する。
「どうした?」
「あ、いや。やっぱり梨沙は可愛いなーって思っただけだ」
「そうだな。3大美女と呼ばれるだけあるぞ」
未だに「ゆ、優斗くんから梨沙って呼ばれちゃったよ……」とか言いながらクネクネしているが。
「だろ?だからこれからは梨沙のこと、名前で呼んであげろよな」
そう呟いて美羽が持ってるプリントを配り始める。
「……?なんだったんだ?」
俺は首を傾げつつも、未だにクネクネしている梨沙を放置してプリントを配った。
その後、午前午後と授業を受け、放課後にバイトした俺は、モモの待つ家に帰る。
その日の夜、美羽からメッセージが届く。
『ごめん、優!「もうお願いすることはないから」とか言って別れたけど、あと1回だけお願い!アタシの彼氏役を務めて!』
金銭面的にもう2度とお願いされないと思っていたが、再びお願いをされる。
『それは問題ないが、何かあったのか?』
『あぁ。結衣が優のことをすごく気に入ってしまってな。また優を連れてくるって約束したんだ』
きっと血涙を流しながら約束したのだろう。
泣いてる顔文字まで送られてきた。
『事情はわかった。俺はいつでも美羽の手伝いをするから』
一度偽の彼氏役を務めた以上、最後まで責任を持って彼氏役を務める。
『ありがと。それでさっそくなんだが今週の土曜日か日曜日、結衣を交えた3人で遊びに行かないか?』
『日曜日なら空いてるぞ』
土曜日には並木先生とのデートが入っているため、日曜日なら空いてることを伝える。
『分かった。日曜日に優をレンタルさせてもらうよ。そして結衣には優が遠くに行くから遠距離恋愛になることを伝える。これで本当に最後にするから』
とのことで、今週の土日も俺はレンタル派遣の仕事で埋まる。
そのタイミングで今度は梨沙からメッセージが届く。
『優斗くん!今週の土日は空いてるー?空いてたら私に恋の必勝法を教えてほしいんだー!』
可愛い女の子がお願いしてるスタンプまで送ってくる。
梨沙のお願いを叶えてあげたいが、俺の身体は一つしかないので申し訳ないと思いつつ断ることにする。
『ごめん、土日は両方とも予定があるんだ』
『そうなんだ!予定があるなら仕方ないね!また声かけるから、その時はたくさん教えてね!』
そこで梨沙とのやり取りを終了する。
「ふぅ……俺、リア充みたいなことしてるなぁ……」
そんなことを思いつつ、明日の学校に備えて眠りについた。
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