2章 3大美女との日常
第11話 3大美女との学校生活 1
【2章開始】
翌日の月曜日。
俺は前髪を目元まで伸ばした根暗な陰キャスタイルで学校に登校する。
俺の通う高校は山桜高校。
家から近いという理由だけで選んだ学校だ。
「お兄ちゃん、その格好やめたら?土日は張り切って髪の毛をセットしてたのに」
「土日はセットしなきゃいけない仕事だったんだ。お兄ちゃんにも色々あるんだよ」
「学校もセットしなきゃいけないと思うんだけどなぁ」
俺の隣を歩いているモモがそう呟く。
「お兄ちゃんは今日もバイト?」
「あぁ。レストランでバイトだ」
「わかったー。ご飯作って待ってるからね」
「22時には帰ると思うから。じゃあ、気をつけて学校に行けよ」
「お兄ちゃんもね!」
俺は中学校へ登校するモモと別れて高校へ向かう。
モモと別れてからは根暗ぼっちを極めている俺に話しかけてくる人はおらず、一言も喋ることなく自分の教室へ辿り着く。
(長谷川さんや並木先生にはバレてないとは思うが、この姿で関わるとバレる可能性がある。できるだけ関わらない方向でいこう)
根暗陰キャと土日に会っていたと知られるわけにはいかないので、できるだけ2人とは関わらないようにする。
「あ、おはよー!草薙くん!」
教室に入ると、毎日恒例になっている挨拶をされる。
「おはよ、山﨑さん」
その相手は昨日『恋愛マスター』を依頼した山﨑さん。
最初の頃は3大美女の1人である山﨑さんから挨拶をされる度に注目を集めていたが、今ではお馴染みの風景となっており、俺が山﨑さんと挨拶しても誰1人として注目していない。
「昨日は草薙くんのおかげで寝不足だよ!」
「見るからに元気そうなんだが」
寝不足と言っているが、今日はいつも以上に元気そうだ。
「あ、そうだ!草薙くん!」
俺の名を呼んで手招きする山﨑さん。
「……?」
その行動を不思議に思いながら山﨑さんに近づく。
すると、背伸びをして俺の耳元に山﨑さんが近づく。
「私とLINEを交換しよ?」
「え?」
小声だったことで俺しか聞こえていないようだが、3大美女と呼ばれる山﨑さんのLINEとなれば、全男子生徒が手に入れたい物。
今の発言を聞かれていたら男子生徒全員から殺されていただろう。
「私、昨日のように草薙くんから恋の必勝法を教えもらいたいなーって思ってるんだ。だから連絡先を交換しよ?もちろん、お金は払うからね」
「な、なるほど。そういう理由なら断れないな」
「やった!」
山﨑さんが嬉しそうな笑顔をする。
その笑顔にドキッとしつつも、周りにバレないよう山﨑さんとLINEを交換する。
「これで草薙くんといつでも話せるんだ……えへへ……」
交換を終えると、スマホの画面を見ながらニヤニヤし始める山﨑さん。
「も、もういいか?」
「うんっ!また連絡するから!」
そう言って長谷川さんのもとへ向かう。
「美羽ちゃんもおはよー!」
「おはよ、梨沙。今日はいつも以上に元気だな」
「うんっ!良いことがあったからね!」
山﨑さんと長谷川さんは親友らしく、2人で遊びに行くことも多々あるらしい。
そんな山﨑さんを横目に外の景色を眺めていると、教室のドアが“ガラガラ”と開く。
「ホームルームを始めるわ。早く席に着いてちょうだい」
との言葉を発しながら、俺のクラスの副担任である並木先生が教壇を目指して歩く。
その姿を見たクラスメイトは急いで席に座る。
「夏休みは来週の土曜日からよ。まだ2週間ほどあるから気を抜かないように」
そう注意喚起している先生の話を聞きつつ、昨夜、並木先生から来たメッセージを思い出す。
『ねぇ、ゆーくん。今度の土曜日デートしましょ。もちろん、お金は払うわ』
『土曜日は空いてますので大丈夫ですよ』
『ありがとう。詳しいことはまた連絡するわ』
先生のお母さんが絡んでいることだろうと予想をつけ、土曜日は先生とデートすることとなる。
そんなことを思い出しながらボーッと先生の話を聞いていると…
「今日の日直である長谷川さんと草薙くんは後で職員室に来てくれるかしら。配ってほしいものがあるわ」
俺と長谷川さんが名指しされる。
できれば並木先生と長谷川さんの2人とは関わりたくなかったが、指名されたら断れない。
そのため、朝のホームルームが終わり、俺と長谷川さんは職員室へ向かう。
「草薙さんと話すのは初めてだな」
「そうですね」
「土曜日、家にお邪魔しました」とは言えないので長谷川さんに合わせる。
実際、学校で話すのは初めてだ。
「アタシ、梨沙から草薙さんのことは色々と聞いてるぞ。よく話題に上がるからな」
「……なんで?」
「……そういえば何でだろうな」
お互いに首を傾げる。
「案外、草薙さんのことが気になってるとか?」
「いやいや、それはないだろ。毎日挨拶をして時々お話しするだけの関係だ。これで気になってると言われたら、ほとんどの男子が気になってることにならないか?」
「確かに。草薙さん、頭良いな」
「こんなことで褒められても。むしろ同性なんだから美羽の方が……っ!」
咄嗟に自分の口を塞ぐ。
偽彼氏役の流れで、つい長谷川さんのことを「美羽」と呼んでしまった。
「………」
今日初めて話した俺に美羽と呼ばれた長谷川さんが目を見開いて固まる。
「あ、いや……」
「あははっ!まさか名前で呼ばれるとは思わなかったぞ!」
俺が慌てて弁明しようとすると、長谷川さんが突然笑い出す。
「あ、ごめんごめん。笑ってしまって。アタシのことは美羽って呼んでいいぞ」
「え?いいのか?」
「あぁ。なぜか草薙さんから名前を呼ばれるのは初めてじゃない気がする。むしろ、もっと呼んでほしいとも思った」
「そ、そうか。なら美羽と呼ばせてもらうぞ」
「あぁ!アタシ、優斗とは仲良くなれそうだ!」
そう言って美羽が笑う。
(俺は偽の彼氏をお願いした草薙だとバレたくないので、これ以上関わりたくないんだが……)
そんなことを思いつつ、美羽と職員室を目指した。
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