第3話 接触
「あ、どうも。皆さん、お揃いのようですね」
「一応、形ばかりはな。で、どうする?」
「あ~その前にいいかな。お前達は誰でなんで私を呼び出した?」
会議室に山本が入るなり、会議室の中を見渡しそう呟くと、それを引き継ぐように捜査一課主任が口を挟む。そして、それを遮るように管理官が被せてくる。
「主任から聞いてないんですか?」
山本は捜査一課主任を一瞥すると、捜査一課主任は肩を竦めて戯けてみせる。
「そうですか。何かあっても私達の責任と……そういうことですか?」
「……まあ、そういうことだ。俺も九割は確定していると思ってはいるが、残り一割で引っ繰り返される可能性があることを考えるとな。すまんな、俺も守りたい自分の家族がいるからな」
そう言って、捜査一課主任は顔の前で右手を立てると山本に対して、済まなさそうにする。
「分かりました。で、その残り一割ですが、もうすぐなくなるハズですよ。うん、そろそろかな」
そう言って山本は左腕に着けている腕時計で時間を確認するとテーブルの上に置いてあったテレビのリモコンを右手に持ち、徐に会議室の隅に置いてあるテレビのスイッチを入れる。ブンという音と共にテレビの画面が表示されると山本は夕方の報道番組にチャンネルを合わせる。
テレビの中では夕方のニュースが流れていたが、原稿を読んでいたキャスターの背後から新しい原稿が届けられたのを確認する事が出来た。そして、それと同時にテレビ画面の上部にテロップが流れる。
そのテロップには『速報! 元警察庁長官 千原衆議院議員逮捕』と表示されている。そして、それを見た管理官の顔が青くなる。
「え? なんでパパが……」
「これで残り一割は解消された……でしょうか?」
「いや……すまんな。まだ安心は出来ない」
「それもそうですね」
テレビ画面を見ながら、山本が捜査一課主任にそう話すが捜査一課主任はまだ不安要素があるようで、山本の問いに対し首を横に振る。
「なら、私がこれから話す内容で確信が持てたならお手伝いしてくれますね」
「ああ、分かったよ。どら、話してみな」
「はい。では……まずは宮下弁護士のことから始めましょうか」
「ああ、お願いする」
「パパ……」
管理官はテレビに表示される報道内容に釘付けのままだが、山本がリモコンを手に持ち、テレビの電源を落とすと、管理官が見ていたテレビの画面が真っ黒になる。すると、管理官は山本に対し食ってかかる。
「何をする! 私が見ていただろうが!」
「今は、そっちではなく管理官のことの方が重要だと思いますが?」
「私がなんだと言うんだ! そもそも一捜査官たるお前達が私になんの用があると言うんだ!」
「だから、それを今からお話しようとしているんですよ。いいですから、こちらのテーブルに着いてもらえますか」
「……」
管理官である千原がテーブルに着くのを確認してから、坂本は部屋の入口を施錠する。山本もそれを確認すると、まずは宮下弁護士の事件からにしましょうかと会議室内の千原管理官、捜査一課主任、坂本へと話しかける。
「それは……アレか?」
「ええ、まずはアレの話からでしょうね」
「ふん! 宮下弁護士の事件はまだ被疑者不明だ。お前らが役立たずのせいでな」
「いえいえ、実はそうでもないんですよ。管理官殿」
「あ?」
捜査一課主任がアレと言ったのを山本が頷き話をしようとすると管理官である千原がお前達がしっかりしていないから捜査が進展していないと漏らすと山本がそれは違うと言う。
「ちょっと、待て! 私は何も聞いてないぞ!」
「それはおかしいですね」
「あ? どういう意味だ?」
「どういう意味って、管理官殿はご存知のハズでは?」
「だから、それはどういう意味だと言っている!」
「では、こちらを」
山本が坂本に目で合図すると坂本は手元のノートパソコンを操作すると会議室の壁際に設置されているロールスクリーンにノートパソコンに接続したプロジェクターから投影する。
投影されたのは監視カメラの映像で、宮下弁護士が殺害された時刻より三十分ほど前の映像だった。
「これがどうした? 確かにこれなら私は知っている」
「ですよね。では、これはどうでしょうか?」
「ん?」
「右上にタイムスタンプが表示されているのはご存知ですか? 今から、映像を進めますがまずは右上の時刻に注目していて下さい」
「だから、それがどうしたと言っている!」
「まあまあ、管理官殿。まずはコイツらが言うように見てみましょう」
「……」
千原を捜査一課主任が落ち着かせ、山本は坂本に映像を進めてもらう。そして、右上の時間表示を注視してもらっていると、ある時刻からいきなり三十分ほど時間が経過する。
「お分かり頂けましたか? 宮下弁護士の殺害時刻と思われる前後の記録が削除されているようなんですよね。確か、これは管理官殿の方で提供されたと聞いていますが……」
「だから、それがどうした! 私が何かしたとでも言うのか!」
「いえ。管理官殿が……とは言いませんが。提供元の方で……例えば、管理官殿のお父様に忖度して削除したのかなとは思いますがね」
「なら、私には関係のないことだ!」
「ですが……元の映像をなんとか入手することが出来まして」
「元……」
「ええ。削除される前の映像ですね。じゃ、流して」
「はい」
山本に言われ、坂本がノートパソコンを操作して映像をプロジェクターへと投影する。
そして、そこに映ったのは帽子にマスクに手袋にコートまで黒一色の黒ずくめの男の姿だった。
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