ゴミ短編収集所
洞江ジェーン
名前を入力してください。
ユーザー名の登録。
ユーザー登録の難関場所。
昨今は組み込まれたパスワード提案機能と、データ記憶機能という恩恵がある。覚えやすい英数字を考えることも、はたまた分かりやすい数字にしてユーザーの乗っ取りなどの危険は減った。
だが、名前はどうだろうか。
ありふれた名前は検索すれば山ほど出てくるありふれたユーザーネームとなる。検索画面いっぱいに同じ名前の違うアイコンが死ぬほどある。クソッタレ。
数時間前の自分が時間を掛け死んだ心地で吐き出したユーザーネームなど、ただの前振りとも知らず。
小説を書きたい。だから何時間も悩み続けてユーザーネームをつけたのに。
SNSなどはまだ違うアイコンが並んでいるだけマシかもしれない。
『小説のプロットや設定を決めよう!』
『登場人物は――』
指南書として見ていたサイトのタブをスワイプでふっ飛ばしておいた。全員名無しの権兵衛になれ。山田太郎1と山田太郎2と山田花子の話でいい。
スマートフォンを机に放り出し、ベッドに埋もれて少し泣いた。ネーミングセンスという概念は本当にあって、そしてそれは自分に無いことを嘆いた。
ゴミ短編収集所 洞江ジェーン @uminonagi
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