太陽の光をはたおる骨(たいようのひかりをはたおるほね)

ニルニル

太陽の光をはたおる骨

その骨は、太陽に向かって機織り機(はたおりき)を動かしていました。

ばったん、ぱたん。ばったん、ぱたん。

人の骨です。機織る(はたおる)その繊細(せんさい)な指の骨をふくみ、全身の色は黄ばんだ白色(しろいろ)。太陽の光によって色が付いたのか、それとも陽光(ようこう)によって漂白(ひょうはく)されたのか、なぞの残る色でした。


ばったん、ぱたん。ばったん、ぱたん。

しかし骨が織(お)っている、かんじんの糸がどんな糸かが見えません。

ばったん、ぱたん。ばったん、ぱたん。

しかし骨はかまわずに、見えない糸をつむいでは、横糸としてしゅっと織物に通し、とんとん生地にしていくのでした。

ばったん、ぱたん。ばったん、ぱたん。

あっ、いま、見えました! きらりと光る、光の糸が!



なんと骨は、太陽の光を指の骨でつむぎ、それで機(はた)を織っていたのです。

太陽の光をつむがれて織られた生地は、骨と同じように太陽の光によって淡い黄色に染め上げられ、そして太陽の光によって漂白されていきます。なんとまばゆい生地でしょう。なんとかろやかな生地でしょう。


ついに機を織りおわった骨は、後ろを振り返りました。太陽を背にした骨の前には、広大な土地の上に広がる、広大な雨雲がありました。

骨は、人骨(じんこつ)は、大きな大きな雨雲に向かって、陽光で織った生地をふわりと広げます。生地は絶(た)えず泣いている雨雲の涙をぬぐい、その地から雨を取りのぞいていったのです。

人骨の口が、かたかたと鳴ります。


「泣かなくていいわ、雨雲よ。わたしと生地と、太陽の生地と、もっと楽しい遊びをしましょう」


そうやって雨雲は、骨と太陽の布生地とかくれんぼをしたり、生地で目を隠した目隠し鬼をしたり、たくさん遊びました。雨雲があまりに嬉しくて、泣き笑いをしたときだけ、ちょうどよくその地には雨がめぐります。

そうやって、人の骨は雨が続いた場所に、晴れの天気を届けてくれるのでした。



人骨がしてきたことは、やがて幼い子どもが親ごさんに寝かしつけられるとき、寝物語(ねものがたり)として話されるでしょう。


「死者の国の女王さまはね、ご自分は亡くなっていらっしゃるけれど、いつも生きているものたちをいつくしんでくださるのよ。その方は、雨が続いて生きものたちが悲しむとね―――」


ばったん、ぱたん。ばったん、ぱたん。

今日も聞こえるでしょう、彼女があなたがたをいつくしむ音が。

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太陽の光をはたおる骨(たいようのひかりをはたおるほね) ニルニル @nil-nil

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