項垂れて
天皇は俺
項垂れて
失敗した時はいつも下を向いて帰った。
今日だってそうだ。
夕陽を背にして、自分の影法師を踏みながら歩く。
憧れに似て夕焼け空が綺麗だ。
でも、直視はできない。
もう、できない。
上なんて向けやしないさ。
しばらく、項垂れて歩いていると、道端に何かが落ちていた。
視界がちょっとでも上の方だったら気付かなかっただろうな。
見やると、パチパチパニックのコーラ味である。しかも、未開封。
しばらく、立ち止まってその赤いパッケージを眺めていた。
赤かった。
でも、夕陽の優しさと哀れを抱いたような色じゃあない。
何か形容し難い、僅かな違いがあるんだなと自分の中で収めるようにした。
数秒経て、ゆっくりと手を伸ばしてそれを拾った。
掌にフチの尖ったところがあたると、自分の心を押さえつけていた何かが蕩けたような気がした。
誰か見ていないか周囲を注意深く見回した。
まあ、人なんて滅多に通らない道なのだが。
それから、万引きめいた手つきでフードのポケットにそれをしまうと、撃たれた矢のように一目散に走り出した。
爽快じゃない。でも、後腐れもない。
上なんて向けやしないさ。
項垂れて 天皇は俺 @Tabii
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