第7話 休息と交流と
クロウら6人は連れだって居間に移動すると、思い思いの場所に腰掛けた。
いつもは3人の空間に倍の6人。
ただでさえ小さな空間に少し窮屈感を感じつつもネルは切り出す。
「小さな家だがまぁゆっくりしてくれ。こちらの事情は話すつもりはねぇ質問はなしだぜ。」
アッシュらは顔を見合わせ頷くと、クロウをチラリと見て、腰に履いた剣を壁に立てかけた。
「ああ、休ませてもらえるだけで充分だ。とても助かる。それに事情を深く聞くほど野暮じゃ無い。」
とアッシュ。
「そうだぜ。さっきは驚いちまった。坊ちゃんがあんまりにも可愛くてよ?悪かったな」
とコニーが続く。
「ねぇねぇ!冒険者さん!みんなはどこから来たの?なんで森で迷っちゃったの?大変だったね!」
興味津々と言った様子のクロウは捲し立てるようにそう問いかける。
疲れているだろうダスティダストの面々を、心配するようなそぶりを見せながらも好奇心は抑えられないようだった。
「俺らは帝国の冒険者さ!ダスティダストってクランでな?この辺にゃぁ依頼できたのよ!どうだ?かっこいいだろ?」
そうコニーがニカッと笑いながらクロウを見やる。
見たこともない漆黒のような黒髪。夜を切り取ったかのような黒目。目鼻立ちは整い幼いながらに精悍な顔つき。そしてどこか上品な出立は上流階級を彷彿とさせる。
理由を聞かずとも生い立ちを察せさせるだけの要素はいくつもあった。
冷静になれば、伝説や言い伝え、寝物語に聞くような話であって、魔王なんてもの聞いたことも見たこともない。ましてや現実目の前にいる幼子が人にあだなす存在には到底思えなかった。
そう考えていると、コニーは先程の自らを恥じる。
人を見た目で判断するなどなんと言う愚かだろう。それでは今まで自分らを見下し侮ってきた連中と同じじゃないかと。
「本当にすまなかったな…」
そう呟く。
アッシュらダスティダストの3人は孤児であった。物心着く頃から帝国のスラムで生活し、残飯を漁り時には雑草を食べ、犬猫すら食らって生き延びた。
両親の顔なんて覚えていないし頼れるものは他の2人のみ。
時には同類の大人に殴られ、市民からは迫害された。
それでも幸か不幸か犯罪を犯さなかったのは、技術も力もないただの無力な子供だったから。
それでもいつかこの地獄から抜け出してやろうと3人で体を鍛え、技術を盗み、ボロの剣一本を携えて冒険者になった。
今になってはある程度の稼ぎもでき、腕も悪くないと評判の冒険者になったと自負している。
そんな生い立ちの俺らこそこの子の味方になるべきだと、3人はクロウの話に耳を傾けるのであった。
「僕ね!本当嬉しい!冒険者の友達が3人もいっぺんにできちゃった!僕も冒険者になりたいの!だから色々教えてね!」
そう笑顔で言うクロウは到底魔王なんかに思えない。
「おう!もちろんだぜ!俺が友達1号だな?任せろ兄貴がなんでも教えてやるぜ?」
コニーは胸を張りながら戯けて見せる。
「ちがうよ?3人目の友達なの!テンちゃんとドーちゃんが1番だからね!」
そう言うクロウにアッシュらは微笑ましく笑いながらたくさんの話をするのであった。
クロウの聞きたいことは絶えず、ネルやマーサも話に混ざりながら、6人は旧知の友人のように振る舞い。
夜が老けていく。そして途中でネルが持ち出してきた酒やらマーサが作った料理やらは舌鼓を打ちながら。
6人はその場でひとときの安らかな休息を取るのであった。
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