第5話 邂逅と状況把握
「こりゃぁ家か?こんなところに住んでる奴が?」
アッシュらダスティダストの面々は森の中、痕跡を追い辿り着いた先には、煉瓦造りの家があったのである。
帝都寄りにあるとはいえ、強い魔物も徘徊する森の奥地、その中にポツンと佇む一軒の家はここにあって異様な光景に見えた。
魔物に追われているこの状況下にあって、休息もろくに取れていない。しかしその家に近づくことがためらわれる。
「さて、どうしたものか。」
アッシュは考える。現状、この家に人が住んでいるならば尋ねて少しの休息と食糧を分けてもらう交渉をすべきだろう。
魔物たちに追われている中長居することは叶わないだろうが、住人に迷惑がかからない範囲で助けを求めたい。
しかしこちらから提示できる材料がないことも事実だった。
「いつか金を持ってからなんてそんな都合よくもいかねぇな。なんとかするしかねぇ。」
この段に来て、家を見つけて助けを求めず寝ずに森を出られる保証もない以上、駄目元
で尋ねるべきと判断した。
この頃すでにマーサによって結界が貼られていたが、アッシュらは敵意を持っていなかったこともあり家に向かって歩を進めるのであった。
———————
クロウが寝て、マーサたちの話し合いが終わり、準備が済んだのち2人は床についた。
数刻も寝ていないだろうそんな中、ネルはふと目を開ける。
「マーサ、気が付いたか?お客様だ。」
「ええ、気が付いていますよ。全くこんな夜更けに礼儀のなっていないのが3人も。敵意は感じませんね。」
「ああ。念の為にクロウについてやってくれ。俺はお出迎えだ。」
そういうと2人は準備に取り掛かる。敵でなくとも厄介ごとの匂いを感じ取っていた。
マーサはクロウの元へ、ネルは玄関を出て前を見る。
森の中からは3人。
ゆっくりと警戒しながらもまっすぐこちらへ向かってくる姿を確認した。
「そこで止まれ。それ以上許可なく近づけば排除する。」
ネルは3人を見ながら腰に履いた剣に手をかける。
アッシュらは立ち止まり敵意がないことを示すために両手を挙げた。
「待ってくれ!俺らに敵意はない!俺は帝国の冒険者クラン、ダスティダストのアッシュと言う!少しだけ休ませてもらえないか!」
アッシュは両手を挙げたままそう叫ぶ。
ネルの警戒した様子に驚きつつも冷静に話し合おうとしていた。
「その冒険者がなんでこんな時間こんな森の奥にいる?見たところろくに寝てないな?何かに追われているように見えるが?」
「俺らは聖皇国での依頼からの帰り道に森の外で魔狼に襲われたんだ!その魔狼が普通じゃなかった!強すぎる魔力に獣とは思えない知性を感じた!それから逃げてここまできた!」
アッシュらは端的に、信じてもらうために事実のみを話す。
追われていることを言えば追い返されるかもと言う不安はあったが、あくまで誠実な姿勢を貫く。
「やっぱ厄介ごとか。とりあえず詳しく話を聞く。もし怪しいそぶりを見せたら問答無用だ。わかったな?わかったらついてこい。」
ネルはそう言うと3人に背を向けて家に向かって歩き始めた。
アッシュらは3人顔を見合わせて、ネルの後を追うのであった。
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