第34話:飢餓地獄
アバディーン王国歴100年12月25日、新穀倉地帯、カーツ公子視点
下級使い魔による、インチャイラ王国のボライソー王に対する懲罰映像伝達は、想像通りの大きな影響を全犯罪者奴隷に与えた。
王侯貴族士族はもちろん、軍内でそれなりの役目を与えられていた平民も、頭の良い者は、自分たちが侵略者として扱われるのは当然だと考えた。
その上で、どうすれば身代金の支払いで犯罪者奴隷の身分から解放してもらえるのか、確認しようと慎重に行動した。
だが、頭の良い者はそれほど多くなかった。
多くの者は、他者に責任を押し付けて自分だけは罪を逃れようとした。
「俺は被害者だ、王に、ボライソーに騙されたのだ、俺は悪くない」
「そうだ、俺たちは悪くない、悪いのはボライソーだ!」
「罰を受けるのはボライソーで、俺たちにまで罰を与えるのは不当だ!」
ボライソーの命令を、獣欲を満たす好機と考え、侵攻軍の志願した貴族士族が身勝手な事を言いだしたが、それを見逃す下級使い魔たちではない。
(犯罪者奴隷による暴動と判断、武力による鎮圧をする)
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
下級使い魔たちは、ボライソーに与えたのと同じ罰を実行した。
犯罪者奴隷による暴動は、謀叛や王家転覆罪に当たる。
王家簒奪罪と罰が変わらないのは当然だ。
特にインチャイラ王国は、王家を脅かす存在には厳しい罰を与えていた。
見せしめのために、死なせる事なく公開で拷問を続ける罰になっていた。
だから、ボライソーと一緒に暴動を起こした連中も公開拷問系となった。
(暴動を見逃していた者たちにも連帯責任を取らせる!
我ら下級使い魔の力を侮っているのか?
お前たちが、バカを使って何をすればどれくらいの罰が与えられるか、探っていた事を知らなかったとでも思っているのか?
農作業に悪影響が出ないように、今は痛みだけの罰にしてやる)
「しらない、やっていない、そんな事はやっていない!」
「うそだ、言いがかりだ、何所に証拠があるのだ?」
「やめろ、やめてくれ、本当に知らなかったんだ、俺がやらせたわけじゃない!」
(お前たちが陰で煽っていた事くらい分かっています、罰を受けなさい)
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
広大な耕作地帯で一斉に実った穀物の収穫作業だ。
動きが悪くなるような罰は与えられない。
だが、そんな事が分かってしまうと、犯罪者奴隷たちが図に乗る。
どうしても激しい罰が必要なら、収穫が遅れても罰を与える。
ただ、今回は下級使い魔たちが上手くやってくれた。
電気ショックではないが、魔力を使って痛覚だけを刺激してくれた。
足の爪の下に長い鉄針を突き刺すような激痛を魔力で再現。
同じように、尿道に長い鉄針を突き刺すような激痛。
尿管に胆石が無理矢理進むときの激痛。
俺の知っている、地球で激痛疝痛と言われている痛みを魔力で再現してくれた。
陽が暮れて、農作業ができなくなってから、翌日の農作業に悪影響が出ない範囲で、罰の激痛を与え続けてくれた。
だが、これらの罰は、犯罪者奴隷たちへの根本的な罰とは違う。
俺も最初から人道に反するような罰を与える気などなかった。
俺が犯罪者奴隷たちに与えたかったのは、犯罪者奴隷たちが民に行っていた事を忠実に再現する罰だ。
民が餓死するほどの税を奪っていた者には、同じ様に餓死する程度の食事しか与えないし、鞭打ちや暴行を加えていた者には同じように鞭打ちや暴行を加える。
「たのむ、おねがいだ、もう少し食事の量を増やしてくれ」
「いくら何でも、この程度の食事では働けない、もう少し量を増やしてくれ」
「なぜ俺とこいつの食事の量が違うんだ、同じ様に侵略したではないか?!」
「ボライソー王の悪事は理解した、だが俺は知らなかったのだ。
罰はちゃんと受けるから、もっとちゃんとした物を食べさせてくれ」
(何か勘違いしているようですから、はっきりと言っておきます。
侵略に加担した罪に対する罰は、これまでお前たちが犯して来た罪によって変わるのですよ
領民を餓死するほど苦しめていた者は、領民が食べていた物を、同じ量しか与えられないと思ってください。
自分たちが何の罪もない領民を餓死させていたのに、犯罪者奴隷が領民以上の食事を要求するなんて、身勝手にも程があるますよ)
「そんな、我ら貴族と平民を一緒にしないでくれ」
「そうだ、平民が貴族のために死ぬのは当然の事だ」
「我ら貴族と平民では身分が違うのだ、同じに扱わないでくれ」
(ええ、分かっていますよ、身分差が必要なのでしょう?
私もちゃんと身分差を考えていますよ。
元は貴族かもしれませんが、今の貴方たちは犯罪者奴隷なのですよ。
貴方方が餓死させた領民よりもはるかに身分が下なのです。
それが分かっていて、今の言葉を吐いているのですか?
はっきり言っておきますが、既に身分差をわきまえない強訴を行っています。
上手く隠れて罰を受けずにいたようですが、これで処罰の対象になりますね)
「まってくれ、そんなつもりで言ったわけではないのだ、ただ、余りにも腹が空いて我慢できなかっただけなのだ」
「そうだ、罰は受けるし作業もやる、だからもう少し食事を良くしてくれ」
「働きを見てくれ、過去の罪ではなく働きによって食事を増やしてくれ」
「そうだ、これからの働きに応じて食事を良くしてくれ!」
(心配するな、どれだけ腹が減っても絶対に死なないし飢餓感が軽くなる事も無い。
お前たちが餓死させた領民の恨みが晴れるまでは死ねなくしてある)
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
(まずは身分をわきまえずに強訴した罰を受けていただきましょう)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます