第33話:調教
アバディーン王国歴100年12月13日、新穀倉地帯、カーツ公子視点
「余はインチャイラ王国第13代王ボライソーである。
卑怯な振る舞いをしたカーツに言って聞かせる事がある、ここに呼べ」
俺と視力も聴力も共有している超特級使い魔が捕虜たちの事を伝えてくれる。
多くの使い魔が連携してネットワークを築いているので、全ての捕虜、犯罪者奴隷の脳に直接映像と声を届ける事ができる。
(ボライソーと言えば、10年もの辛く苦しい救国の旅でこの世界をお救い下さった、成就深雪様と勇者カーツ様を裏切り不義密通をしたばかりか、一方的に婚約破棄をしただけでなく国外追放をした、売女カミラをベッドの連れ込み、自分の子を種豚チャールズ王太子の子供に仕立て上げ、アバディーン王国を乗っ取ろうとした、卑怯下劣で恥知らずな、インチャイラ王国とミラー王家の汚点である、あのボライソー王なのか?
良く恥ずかしげもなく堂々と名乗りを上げられたものだ!)
使い魔の力を使って、穀倉地帯全域の散らばっている73万人以上の捕虜全員に、2人の会話を伝えている。
「なっ!
そ、そのような嘘を吐いて余の名誉を傷つけるとは、それでも公爵家の公子か?
恥を知れ、恥を!」
(恥を知るのは貴男の方です、ボライソー)
「大国インチャイラの王を呼び捨てにするとは!
許せん、斬れ、あの者を斬って捨てよ!」
(大国? 王?
1人の王族もいなくなった国が、そのまま維持できるとでも思っているのか?
自分の種を売女につけて国を乗っ取ろうとした者を王扱いするはずがないだろう?
ボライソー、お前は女を使って国と王家を乗っ取ろうとした詐欺師だ。
最低最悪の詐欺師として、犯罪者奴隷に落ちたのだ!)
「もはや許さん、殺せ、お前らは我が国の兵士であろう、さっさと殺せ!」
ボライソーは周囲にいる者に下級使い魔を殺せと命じているが、誰も動かない。
既に下級使い魔に魂を砕かれている元インチャイラ王国兵士には、下級使い魔に挑む気概などどこにもない。
「おのれ、余の命令が聞けぬなら死ね!」
ボライソーが農作業用の鎌を使って元兵士を殺そうとした。
身につけていた物を全て奪われているから、剣も持っていないのだ。
あるのは穀物を収穫する時に使う農具だけだ。
「ぎゃっ!」
(犯罪者同士の私闘、いえ、一方的な攻撃を発見、悪い方に懲罰を加えます)
自分の悪事を表沙汰にされた事に逆切れして、自分の失政で他国の捕虜になった兵士を一方的に殺そうとした。
そんな映像と声が全ての捕虜、犯罪者奴隷に伝わったのだ。
ボライソーの威厳と名声は地に落ち、よほどのバカでない限り忠誠心も無くす。
全てを知って忠誠心を持ち続けるのは、狂人だけだ。
「ギャッフ!」
下級使い魔がボライソーに激しい懲罰を加える。
殺さない程度に顔面を殴ったが、激しい痛みを与えるようにしている。
同時に、周りの者に犯罪者奴隷同士のケンカがどう扱われるのか教える為だ。
だから、罰を受けた者がひと目で分かるように後遺症を残す。
前歯が砕かれたが、それだけではない。
上下の唇も歯茎も同時に砕かれ飛び散っている。
これから一生唇のない姿で生きて行くことになる。
もう64歳で、この世界では何時死んでもおかしくない年齢だが、ボライソーは犯した罪を償うだけの罰を受けてからでないと死ねない、死なせない。
(これで終わりだと思ってもらっては困ります。
他の犯罪者奴隷たちが、弱い者を苦しめないように、見せしめにします。
もう2度と言いませんよ、同じ犯罪者奴隷同士で争わない、いいですね?!)
直接ボライソーに罰を与えている下級使い魔が厳しく言った。
その言葉と同時に行われるボライソーへの罰が、全ての犯罪者奴隷を恐怖させる。
全ての犯罪者奴隷たちは、既に下級使い魔に反抗する心を完全に砕かれていたが、それに加えて犯罪者奴隷同士で争う気も完全に砕かれるだろう。
それくらい激しくおぞましい懲罰がボライソーに加えられ続ける。
誰からも、何処から見ても罰を受けた者だと分かるように、生きたまま両耳を引き千切られ、頭髪の半分も皮ごと引き千切られた。
「ギャアアアアア、やめろ、やめないか、たのむ、もうやめてくれ!
ギャアアアアア、わるかった、余が悪かった、あやまる、あやまるから!
ギャアアアアア、いやだ、もういやだ、なんでもする、何でもするから許して!」
ボライソーが何を言っても下級使い魔は罰を与えるのを止めない。
俺が下級使い魔に与えた、罪に対する罰を忠実に守っているだけだ。
言っておくが、俺の与えた罰は不当なものではない。
下級使い魔が行っている罰は、インチャイラ王国が定めた犯罪者に対する罰だ。
王位簒奪を企んだ者に与える罰として、王と国が定めた罰を与えているだけだ。
(ちゃんとその事を伝えろよ)
(承りました)
(ボライソー、止めろと言われても止められないぞ。
今執行している罰は、お前に王家簒奪罪を疑われた者が受けた罰だ。
お前が、気に入らない貴族に同じ罰を与えたと記録が残っている。
アバディーン王国を、売女との間に作った子に簒奪させる気だっただろう?
だから、お前の国の法に従って罰を与えてやっているのだ、有難く思え!)
「ギャアアアアア、余ではない、余が望んでやった事ではない!
カミラだ、カミラに騙されたのだ、余はしかたがなく……
ギャアアアアア、わるかった、あやまる、謝りますから許してくれ!」
(聞いたか、犯罪者奴隷共、お前たちが犯罪者奴隷として一生苦しむ事になったのは、ボライソーの恥知らずな行いが原因だ。
だが、ボライソーを殺そうとは思うなよ!
御主人様に対する罪を償わせるまでは、絶対に死なせない!
邪魔する者は同じ罰を受けると思え!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます