【聖女視点】第八話 聖女はぶっちぎりたい
「さぁ、今年もやって参りました! 聖女祭のメインイベント! その名も、ミス美聖女コンテストだーッ!」
あたしが絶対聖女と呼ばれる様になったのは、このミスコンがきっかけなのさ。
もちろん体力、魔力、学力はトップで難なく首席卒業。当時は、あたしと張り合えるヤツなんていなかったから退屈だったが、今年はなかなかレベルが高い。
「それでは、三年連続優勝を成し遂げた伝説の絶対聖女であり、特別講師のラーナ・エルフィオーネ先生から、開会のお言葉をいただきたいと思います」
とりま、いつも通りそれらしい言葉を並べておくか。
「皆さん、聖女は学業や内面だけでなく、外見も気にせねばなりません。今年の出場聖女候補生を見る限り、どなたもとてもお美しい方ばかり。例年以上にハイレベルなのは間違いありません。自信を持って勝ち上がってきて下さい。その頂で私は皆さんをお待ちしております。それでは、第764回美聖女コンテスト、改め、聖女武闘会を始めます!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおぉッッ!!」」」
外見とは、すなわち美しさ。
聖女は美貌だけでなく、物理的な強さも必要なんだ。
「一回戦は、二年C組、エリス・シュリーゼVS三年A組、ルーシェ・パリス!」
「「「エリス様! 頑張って〜!」」」
「「「ルーシェ、負けるな〜!」」」
両者が手をかざすと、歓声が巻き起こる。
ま、いつもの事だ。
「レディ、ファイッ!」
カンッ、というゴングと共に両者が構えを取った。
「いきますわよ! フレイムランス!」
「甘いですわ! ホーリージャベリン!」
ほう、ルーシェというガキはなかなかの逸材だね。
魔力操作も悪くない。
アイツが勝ち上がりそうだな。
「流石はルーシェ先輩、おやりになりますわね……」
「貴方こそですわ。ですが、わたくしの魔法陣の方が一際美しいですわよ! よくご覧になりなさい。ホーリーアロー!」
「わ、わたくしの方が綺麗に描けますわ!」
「あら? それはどうかしら。わたくしの魔法陣はとても美しい赤色ですのよ」
「わ、わたくしはルーシェ先輩よりも綺麗に丸を描けますわよ」
「ふ、綺麗な円を描いた所で、貴方に勝ち目はありません」
「クッ、そうであれば接近戦で勝負ですわ!」
エリスというヤツは魔法では勝てないと見て、接近戦に切り替えたか。
だが隙だらけだ。
あれじゃボコボコにされるぞ。
「そこまで! 勝者! ルルルルゥーシェエエエエエェッ・パリリリリリリィスゥッ!!」
ほら、思った通りの展開だったな。
顔面血だらけで見るに耐えん。
美しさの欠片も無い。
「続いて、第二回戦は―・―・・」
このミスコンは、いかに美しく魔法陣を描きながら戦うかによって勝敗が決まる。という謎のルールで昔から続いてきたが、ぶっちゃけ、そんなものはどうでもよく、先に整った顔面をボコボコにすれば勝てる。
「第764回美聖女コンテスト優勝は、ルルルルゥーシェエエエエエェッ・パリリリリリリィスゥッ!!!」
「「「キャーッ! ルーシェ様〜! 素敵!」」」
「さあ、優勝した三年A組のルーシェ・パリスさんには、恒例となっている聖女ラーナ様に挑戦する権利を手にしました。ルーシェさん、ラーナ様に決闘を挑みますか?」
「もちろんですわ。ラーナ様、ついに貴方と戦える日がやって参りました。絶対聖女の座は、本日を持ってわたくし、ルーシェ・パリスが頂戴いたしますわ」
「あら、私も甘く見られたものですね。貴方では私の相手は務まりません。悪いことは言いませんので、棄権された方がよろしいかと思います」
「あーと、ここで両者が火花を散らしているぞ!」
さてと、この華があるルーシェというガキには消えてもらうとするか。
「それでは、挑戦者ルーシェ・パリスVS絶対聖女ラーナ・エルフィオーネ様との特別試合を行います!」
力勝負では、流石にあたしは負けない。
そこでハンデとして、学生とはクイズで戦う事にしている。
「早押し聖女クイズに参ります! それでは第一問、初代…」「ピンポン」
「あーっと!? これは早くもランプが点灯した! ラーナ様、それでは回答をお願いします!」
「私、ラーナ・エルフィオーネです」
「正解です!!」
「「「キャーッ! ラーナ様〜!」」」
「問題は、初代聖女はマリーアントワーネ聖女様ですが、現聖女様は誰? そう、答えはラーナ・エルフィオーネ先生でした〜」
ふ、ぶっちぎりで勝ってやる。
相手が誰であろうが叩き潰す。
元々早押しクイズは得意ではあるが、あらかじめ出題される問題は、透視魔法で丸見えだからな。
イカサマや八百長を駆使して戦うのも立派な戦術だ。
「続きまして、第二問、聖女の…」「これも早い! さあ、またしてもラーナ様だッ!」
ルーシェよ、お前は強い。
だが、お前が聖女となるには百年、いや千年早い。
流石に心が折れて膝をついたか。
だが、それでいい。
膝をついて二度と這い上がってこれないようにしてやる。
「ルーシェさんと仰いましたね」
「は、はい。流石はラーナ様です。わたくしでは足元にも及びませんでした」
「そうですね。貴方では聖女は務まりませんね。実家に帰って大人しく暮らすのが良いと思いますよ」
「ッ!? そ、そんな…………」
「絶対聖女の私が言うのです。貴方には荷が重すぎるのです。ですが、諦めも肝心ですよ。それでは、ご機嫌よう」
あたしは十連勝で聖女防衛を果たした。
さあ、これでトオルも流石にあたしに惚れ込んだだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます