第1話 惨めな少年

――ねえ、チェンくんってどうしてあんな事をしちゃったんだろう。


クラスの女子の声が聞こえる。


――さあな、あいつ、普段は目立たないからさ。何考えてるか分からないよ。


クラスの男子の声が聞こえる。


――でも、おかしいよね、あんな変な事を言って人を怖がらせて。


別の男子が口を挟む。


――いや、あいつ、ミシェルの事が好きだったんだよ。ミシェル優しいからさ。構って欲しくてああいう嘘をついて、二人きりになって、何かするつもりだったんだよ。


また別の男子が分かったような事を言う。


――ええ~、怖ーい、気持ちわる~い。


――やだぁ~。


――私も狙われたらどうしよう~。


ヒソヒソと話される会話はしっかりとチェンの耳に入っており、少年には耐えがたい嫌悪にまみれたクラスメイトの会話がチェンの心をえぐる。


中学一年生になったチェンは机に座り、目を伏せて眠そうな顔を作り、聞こえていないふりをした。


ミシェルの事が気になっていたのは嘘じゃあない。


内気で人と喋るのが苦手なチェンにも優しく接してくれる唯一の人間で、しかも可愛らしい女子だった。


もちろん、優しいミシェルは誰にでも優しくチェンの事を特別にみていてくれたわけじゃない。自分の意見を言えず、一人でもじもじしているチェンをいつも輪に入れようとしてくれた。


輪の中ではいつも軽い感じで扱われているのだけれども、それでも友達がいない人のように思われるのがしごく恥ずかしい事のように感じる少年時代だったので、緊張しっぱなしで全然楽しくなくても輪に入っていつも愛想笑いを振りまいた。


ミシェルが優しくしてくれたら、いつも嬉しかった。


みんなとの関係は最高ではないけど、ごくたまにボソっと言った事がウケてそれが嬉しかった。


ちょっぴり苦い少年時代…それでも、何とかやっていけていた。


あの、怖い夢を見始めるまでは。。。




第二話『怖い夢』

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