第02話、鬼狩りの威吹鬼②
「
「……」
目を開けるとそこには綺麗な瞳の色をした少女が威吹鬼の顔を覆いかぶさるようにしながら覗き込んでいた。
いつの間に自分の前に現れたのだろうかと思いながら、威吹鬼は重い体をゆっくりと起こし、辺りを見回すと昨日横になってそのまま寝てしまった橋の下だという事を思い出す。
変な所で寝てしまったなと自分自身後悔をしながら、威吹鬼は声をかけてきた人物に声をかける。
「どうしたの葉月ちゃん?」
「どうしたのって、威吹鬼ちゃんがこんなところで寝ていたから声をかけちゃったんだよ!いい加減私の家に来なよ?美味しいご飯も気持ちの良い寝床も用意するからさー」
「葉月ちゃんの家ってあそこでしょう?遠慮しておく」
「そんな事言わないで!お父さんも親戚の人たちも、おじいちゃんもおばあちゃんも威吹鬼ちゃんなら大歓迎だって!」
「お父さんとおじいちゃんとおばあちゃんはともかく、親戚の人じゃなくて、組員の人たちでしょう?葉月ちゃんの親戚の人たちじゃないよ」
「親戚じゃなくてもお父さんが親戚の人って言っておけって言うから親戚なの!」
「まぁ、葉月ちゃんの家は全員家族ですって言う事で通っているみたいだからなぁ……」
そんな事を思いながら、威吹鬼は遠い目をしながら葉月に視線を向ける。
それから彼女の家に招待され、何故か仲良くなってしまった、別名友人と呼べる人物なのかもしれないと威吹鬼は考える。
元々友人関係と言う存在すらないのだが、最近葉月のペースに飲み込まれそうになりそうなので、比較的距離を取りながらこの町で家なしで生活している。
それが不満なのか、葉月は見つけては家に招待しようとしてくる。正直あの家には居たくないと言うのが威吹鬼の感想だ。
百目鬼家――この町では有名な極道の家だ。
初めて招待された時はかなりビビってしまったのが良い思い出になる。思い出すだけで寒気を感じながらも、葉月は鞄から取り出したパンを口の中に入れると、それに気づいたのか隣に座っていた葉月が鞄から水筒を取り出し、それを葉月に渡す。
「おばあちゃんから、威吹鬼ちゃんに会ったらお茶渡してあげてって」
「……春子さんから、ありがたく頂くね」
「うん!」
「それより学校行かなくていいの葉月ちゃん?」
「行かないといけない……終わったらまた会ってくれる?」
「うん、じゃあ放課後ぐらいに学校の門の所に行くね」
「うん!」
嬉しそうに笑った後、葉月は立ち上がり、急いで走りだしていってしまった。去り際に軽く手を振って走っていく葉月の背を見守るようにしながら。
渡された水筒を見つめながら、葉月は蓋を開け、中身を軽く飲み干す。緑茶が入っていたらしく、温かい。
「……ありがとう、春子さん」
あの極道の家で長年旦那を支えてきたと言う感じには全く見えない、穏やかな顔をした祖母だった。
ありがたく水筒の中身を味わうように飲みながら、橋の下の芝生に腰を下ろしてのんびりとしていた時、少女に近づく一人の人物に、威吹鬼は顔を上げる。
「やぁ、威吹鬼……相変わらず汚い恰好をしているなァ」
「あ、おはよう
「おはようございます、威吹鬼さん」
「おはよう、とし君」
二人に声をかけてきた少年と青年に対し、威吹鬼は簡単に挨拶をしながら、持っていたパンを齧った。
不死の鬼の少女は世界が滅びても、贄の少女を守ると誓う。 桜塚あお華 @aohanasubaru
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