第11話 翼の家

晴嵐は傷の手当てが終わった後、ソファでグッタリしていた。

普段は怪我しても消毒とか滅多にしない。

ましてや自分の周りにこんなお節介な奴なんていない。

晴嵐は、消毒がここまで染みるものなのだと知り、これから怪我しても翼の前には現れないようにしよう。

と晴嵐は心の中で誓った。


そんな晴嵐には、顔や腕にはガーゼや絆創膏が多数貼られていた。


晴嵐「もっと優しく手当てできねぇのかよ」


翼「何言ってんよ。

こんなの喧嘩に比べたら痛くないでしょ」


晴嵐「痛え部類が違えよ!」


翼「はいはい。

優しくなくてゴメンなさいね」


翼はそう言いながら、消毒液や絆創膏、ガーゼなどを救急箱にしまった。


晴嵐「ぜってぇ悪いって思ってねぇだろ」


ぐぅ〜〜。


そんは会話をしていると晴嵐のお腹が盛大に鳴った。


晴嵐「・・・」


翼「プッ。晴嵐君って1人で忙しいね。

せっかくだからご飯食べてく?」


晴嵐「ま、まぁどーしてもって言うなら食べてやってもいいけどよ・・・」


翼「素直じゃないなぁ。

食べたいなら素直に言えばいいのに」


晴嵐「なっ!?俺は別に腹なんか減ってねぇし!」


翼「今盛大にお腹鳴ってたじゃない」


晴嵐「グッ」


翼「じゃあ今から作るからテーブルにあるお菓子でも食べて待ってて」


翼はそう言いながらエプロンを着けてから手を洗い、料理をし始めた。

晴嵐は そんな翼の後ろ姿をみてフッとした疑問が頭に浮かんだ。


晴嵐「・・・なぁ」


翼「んー?」


晴嵐「お前さぁ、いつも自分で飯作ってるのか?」


翼「そうだよ。

あ、でも最近は龍・・・弟も家事手伝ってくれるから、いつもではないかな」


晴嵐「ふぅーん。

親とかは居ねえのかよ」


翼「・・・いる事はいるケド、もう3年くらい会ってないかな・・・。

私の親 今海外にいるのよ」


晴嵐「!?海外!?お前の親社長か何かか!?」


翼「あはは。社長って。

別に社長じゃなくても仕事で海外行く人は沢山いると思うよ」


晴嵐「何!?そうなのか!?」


晴嵐は心底驚いていた。

翼はそんな晴嵐を思わず笑ってしまった。


翼「まぁと言っても、仕事で海外行ってるのは父さんだけで、母さんは父さんを支えるために着いて行っちゃったのよ」


晴嵐「お前も大変だな・・・」


翼「・・・別に。もう慣れたし。

・・・私の場合、親と別々に住んでた方が気楽かな・・・。

それに私は1人じゃないから平気」


晴嵐「・・・」

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