第9話 再び

澪と別れた後、翼は近所のスーパーで買い物をした。


翼は、エコバッグがパンパンになる程 食材を買い込んだため、背中には通学用のリュック、両手でエコバッグを運ぶという状態だった。


翼「ちょっと買いすぎたかなぁ。

流石に重い・・・。

自転車でこればよかった。

育ち盛りのせいか龍がますます ご飯食べる様になったから、多めに買っておかないと すぐに無くなっちゃうんだよなぁ」


翼が そんな独り言を呟いていると前方に見慣れた人影がいた。


翼「ん??また会ったね 晴嵐くん」


晴嵐「あ?ってなんだお前か。

スゲェ荷物だな」


翼「チョット買いすぎちゃってさ。

・・・って!!

怪我してんじゃん!!大丈夫??」


晴嵐は、顔を殴られたのか、口が切れていたり、擦り傷を負っていたりと、全身ケガしていた。

翼はエコバッグを手放して、急いで晴嵐の元へ駆け寄った。


晴嵐「ん?ああ。

こんなの擦り傷だ。

どーってことねぇよ」


翼「もぉ。また喧嘩??」


晴嵐「しょうがねぇだろ。

あっちが喧嘩売ってきたんだから」


翼「まったく…。

どうして私の周りって喧嘩っ早い人ばっかりなんだろ・・・」


翼の脳内には、売られた喧嘩は買ってしまう優志。

今は喧嘩してないが、一時期荒れていた弟の龍。

そして目の前には、優志と同じで売られた喧嘩を買ってしまう晴嵐。


優志達みたいなタイプは、世間一般的には、怖がられたりして、距離を取られやすいが、根はとても良い人達なのを翼は知っているため、普通に接している。

だが、一緒にいる時に絡まれる時もあるため困ったもんだ。


晴嵐「うるせぇよ。

お前には関係ねぇだろ。」


翼「そりゃ関係ないけど・・・」


グイッ


翼は晴嵐の腕を掴んだ。


晴嵐「!!!??

お、おい!何しやがる!?」



翼「何って。

目の前に怪我してる人がいるのに、素通りして帰れる訳ないでしょ。

私の家すぐ近くだから」


晴嵐「そんなの必要ねぇよ!!

って、ていうか腕離せよっ」


翼「やぁよ。

大人しく手当てされるって約束できるならいいけど。」


晴嵐「だから!必要ねぇって!!」


ドカッ!!!


晴嵐「………」


翼「何か言った??」


翼は、大人しく従えというオーラを出しながら、満面の笑顔を晴嵐に向けた。

晴嵐は、本能的に逆らってはいけないと察知し、背筋には変な汗が流れ、顔がひきつっていた。


晴嵐「べ、別に・・・」


翼「そう」


晴嵐(コ、コンクリートを素手で砕くとかなんて女だ・・・)

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