第6話 意外な一面

「うりゃ、うりゃ。どうだ!!

 猫じゃらしで俺に勝てると思うなよ」


にゃーにゃー。


見覚えのある男子生徒は、後ろから見ても楽しそうに猫じゃらしを使ってネコと夢中に遊んでいた。


翼は男子生徒を後ろから覗き込む様に近づき話かけた。


翼「へぇ~ネコ好きなんだぁ」


「うぉ!?」


当然 突然 話かけられた男子生徒は物凄く驚き、翼の方を振り向いた。


「テメェ昨日の!?」


翼「晴嵐くん・・・だっけ?

驚きすぎだよ。

晴嵐くんってネコ好きなんだね。なんか意外」


翼は、昨日 優志に絡んできた時の晴嵐とのギャップがあり過ぎて思わず笑ってしまった。


晴嵐「な!?

べ、別にいいだろ!!

それより何でテメェがここにいるんだよ」


晴嵐は翼に笑われて、恥ずかしいのか照れている様子だった。


翼「チョット寝過ごしちゃって。

そのネコは晴嵐くんのネコなの?」


翼は質問しながら晴嵐の隣にしゃがみ

ネコに視線を移した。


晴嵐「イヤ、俺ん家のネコじゃねぇよ。ノラネコ」


翼「そうなんだ。

でもそんなに構ってると お家まで着いてきちゃうよ?」


晴嵐「大丈夫だよ。

コイツ自由だから着いてきても、途中でスグどっか行っちまうんだ」


翼「そうなんだ」


ニャーニャー


晴嵐は、ネコを優しく撫でていた。

ネコは晴嵐に撫でられてとても気持ち良さそうだ。

どうやら このネコは かなり人間に馴れてるらしい。


晴嵐「お?どうした?腹減ったのか?」


晴嵐は満面の笑顔をネコに向けて楽しそうに話かけていた。

まるでネコと会話をしているように。

ネコも晴嵐の問いかけに答えるように鳴いていた。


翼「!?」


翼は晴嵐の笑顔に驚きを隠せなかった。

昨日 幼なじみに喧嘩を売ってきた目つきの悪い少年とは別人のように、雰囲気や表情が全然違うからだ。


翼はそんな無邪気な笑顔の晴嵐を見て

微笑ましくなった。


翼「晴嵐くんって そういう顔もするんだ」


晴嵐「??なんだよ??」


翼「ん??別に~」


晴嵐はまるで意味が分からないという様子だった。

翼は そんな晴嵐の様子を見て、その表情は無自覚なんだろうな。と思った。


晴嵐「っうか、お前何笑ってるんだよ?」


翼「ん?何か意外だなぁ。って思ってさ。

昨日あんだけ優志に突っかかってきた不良少年が、無邪気にネコと楽しそうに遊んでるんだもん」


晴嵐「な・・・!?わ、悪いかよ・・・」


晴嵐は少し照れた様子で翼から目を背けた。


翼「ううん。私は良いと思うよ。

それに動物好きの人って根は優しいって言うしね」


晴嵐「フン・・・」


翼「ニヒヒ。

あ!そのネコお腹すいてるんだっけ?」


翼はカバンから今朝作ったお弁当を出して蓋を開けた。

今日のお弁当の中に、ネコが食べれそうな物があるかみてみた。


翼「残念。今日はネコが食べられそうなの持ってないや」


翼は ネコの頭を撫でながら、晴嵐の様にネコに話かけた。


翼「ゴメンね。今は食べられそうな物持ってないの」


ネコは翼が何て言ったのか分かったのか、残念そうに鳴いて、どこかへ行ってしまった。


翼「私の言ってる事が分かったのかな?」


ぐぅ~。


晴嵐「・・・」


翼「・・・ひょっとして晴嵐くんもお腹すいてるの?」


晴嵐「しよ、しょうがねえだろ!?

横から美味そうな匂いがしてんだから」


翼「しょうがないなぁ。はい。」


翼は、お弁当箱の蓋を閉めてからお弁当ポーチの中へしまい、晴嵐に渡した。


晴嵐「へ!?くれるのか!?」


翼「横でそんな物欲しそうにされたらねぇ・・・。

大丈夫。毒は入ってないから」


晴嵐「サ、サンキュー!!

お前って良い奴だなぁ~」


晴嵐は、余程お腹が空いているのか、翼から弁当を受け取ると嬉しそうな顔をした。


翼「プッ。晴嵐くんって素直だね」


晴嵐「う、うるせぇ・・・」


翼「あはは。

じゃ、私はそろそろ行くね。

お弁当箱返すのはいつでも良いから、そのうち返してねぇ」


翼は晴嵐と別れ再び学校へ向かう事にした。


一方 晴嵐は、翼が立ち去った後に、翼が去って行った道に視線を向けながら呆然としていた。


晴「・・・変な女・・・」

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