《ドキドキの文化祭編》
020:準備期間も僕にとっては文化祭
文化祭開催まで残り20日。
9月30日の土曜日が『あやめ学園高等学校』の文化祭の開催日だ。
うちの学校は、他の学校と比べて開催が少しだけ早いのが特徴的らしい。
ここら辺の地域では一番早いんじゃないかな?
文化祭がもうすぐそこまで迫ってきているという事もあって、今日から文化祭成功に向けて、あれやこれやと準備することが多くなる。
そう。今日から文化祭の準備期間が始まったのだ。
僕にとっては今日から文化祭だけどね。
だってそうでしょ?
女神や天使を凌駕する存在のくまま様と一緒に文化祭の準備ができるのだから!
それってもう文化祭と言っても過言ではないよね?
うん。過言ではない。
遠足は帰るまでが遠足だってのと同じで、文化祭は準備の時から文化祭なのだ。
まあ、それもくままが居ればの話なんだけどね。
「
「はっ、へ?」
突然声をかけられてしまい、情けない声が反射的に出てしまった。
というか変な質問に驚いてしまった。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
しかも声をかけてきたのがくままこと小熊さんだ。
「やっぱり考えてたんだ。そーいうこと」
「な、何をおっしゃらられれれっ」
くぅー。盛大に噛んでしまった。
恥ずかしさのラッシュが止まらんぞ。
「ふふっ。ニヤニヤしてたからそうなのかなーって思ったけど、案外間違ってないみたいだね。で、どんなこと想像してたの?」
「やましいことなど何一つ想像してません。僕はくままと一緒に文化祭ができるこの幸せを、このありがたみを、そしてくままが産まれてきたこと、その全てに感謝をしていたんだよ」
「ふーん。えっちじゃん」
「な、なんでそうなるの!」
「ふふっ、からかってみただけだよっ。隼兎くんの反応いつも面白いからさ。ついつい。ごめんね」
舌をぺろっと出しながら謝るその姿……俗に言うあれだ。てへぺろだ!
天使のてへぺろをこんなところで拝めるだなんて。なんて幸せなんだ。
さっき盛大に噛んだ時に舌も噛んじゃったけど、もうその痛みはどっかに消えた。
ありがとう。女神のてへぺろ。このてへぺろがあればどんな病も治ってしまうよ。
今のうちに目に焼き付けておこう。いや、魂にこの光景を刻んでおこう。
「それでなんだけど〜」
小熊さんが何か話そうとしている。
ただからかいにきただけじゃなかったのか。
「今日の放課後空いてる?」
「へ?」
またしても情けない声が反射的に溢れてしまった。
だって仕方ないじゃないか。
天使から放課後のお誘いがあったんだから。
目的はまだわからないけど、それでも天使からのお誘いだ。
あぁ、このまま天国に行ってしまいたい。天使や女神を凌駕する存在のくまま様なら連れて行ってくれるかもしれないな。
それなら断る理由などない。
「あ、空いてるけど……どうしたの?」
「買い出しだよ。文化祭の」
あー、なるほど。そうだった。文化祭の買い出し。
僕たちのクラスの出し物は『チェキが撮れるコスプレ喫茶』だ。
チェキカメラやコスプレ用の衣装はもちろんのこと、喫茶店という事もあってコーヒーや紅茶などの飲料、さらにはお菓子など必要なものが多い。
そのため買い出し班がいくつかに分けられている。
そのうちの一つ――〝コスプレ衣装の買い出し班〟が僕と小熊さん、そして純平とクラスの女子3人の合計6人となっている。
ちなみに男子もコスプレをすることになっている。だからコスプレ衣装の買い出し班に男子である僕と純平も含まれているのだ。
小熊さんと同じ班になれたこの奇跡にも感謝しないと。
「荷物持ちでもなんでも大歓迎です」
「ふふっ、頼りにしてるよ」
――キーンコーンカーンコーン。
「あっ、5限始まっちゃうね。席に着かなきゃ。それじゃ、あとでね」
「うん。またあとでね」
なんともタイミングがいいチャイムなんだ。
まるで小熊さんの話が終わるのを待っていたかのような、絶妙なタイミングだったぞ。
さすが小熊さんだ。チャイムの時間までコントロールしてしまうとは。
小熊さんは時間を司る女神だった。いや、天使か。いや、くまま様だ!!!
って、待てよ。そんなくまま様と放課後買い出しって……考えただけでも緊張してしまう。
これ5限集中できないんじゃね?
頭の中くままでいっぱいになるパターンじゃね?
――案の定授業に集中することはできませんでした。
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