005:家宝となったツーショットチェキ

 人生初のチェキを撮った僕は、ふわふわとした気分のまま帰宅していた。

 自分の部屋に直行し、購入品を机の上へ。僕はベットの上へと飛び込む。


「くぅううううううう――!!!」


 ふわふわとした感情を一気に放出。

 誰にも迷惑がかからないように枕に顔をうずめてだ。

 そして呼吸とともに枕から顔を離す。

 すぐに瞳に映ったのは、羽根を持つように優しく持ったままのチェキフィルム――僕の人生初のチェキだ。


 小動物のように愛くるしい小熊さん。くままポーズは小熊さんを見事に世界一可愛い小動物にさせていた。

 小熊さんはクラスメイトであり、ご当地アイドルであり、天使であり、天女であり、女神であり、妖精であり、小動物だったんだ。

 あの笑顔を――〝ときめき〟を感じてしまってからというもの、僕は小熊さんのことを意識しすぎている。

 こんなに可愛いのに、何で今の今まで気付かなかったんだろう。

 自問しても答えは返ってこないことはわかる。だけどなぜなのだろうか、と頭を巡らせる。

 何度でも言おう。僕は小熊さんのことを意識しすぎている。

 この感情は恋なのか?


 ――ドクンドクンッ!!!


 イベント広場にいた時は、緊張して高鳴っていた胸の鼓動だ。

 でも今ならわかる――高鳴る胸の鼓動が〝恋〟なのだと教えてくれている。


「くぅううううううう――!!!」


 本日二度目の感情の爆発。

 枕がなかったら近所迷惑になっていたに違いない。

 ありがとう、枕さん。今度洗ってあげるよ。


 で、それにしても……それにしてもだ。


「はぁ……」


 小熊さんの横に映っている僕を見ながらため息を吐いた。

 これがクソデカため息ってやつだろう。

 ツーショットチェキだから僕が映ってるのは当然だよな。

 映ってるのはまだいい。いいんだけど……さすがにこの表情はないな。


「はぁぁ……」


 クソデカため息選手権があれば、世界記録更新していたかもしれない。

 それだけ大きなため息が出た。

 元凶は僕の表情。

 初めてチェキだったとはいえ、酷すぎる表情だ。


 目は完全につぶってるし、引きつった表情もしてる。

 もう少しまともな表情はできなかったものだろうか。

 これなら無表情の方がまだマシだ。


 上手に撮れてるところは小熊さんも褒めてくれた〝くままポーズ〟だけだな。

 これだけは自他共に認めるだろう。


 自分の良いところが見つかったところで、僕の視線は再び小熊さんに吸い寄せられる。

 本当に可愛い。何度見ても可愛い。

 小動物のような愛くるしさも、天使のような尊さも、女神のような気品さも、全て兼ね備えてる。

 僕の表情やポーズがどうあれ、こんなに素敵な小熊さんと一緒にチェキが撮れた、それだけで幸せだ。


 感じた〝ときめき〟に正直になって、心のままに動いて本当に良かった。

 このチェキは宝物だ。山本家の家宝にして代々受け継いでもらおう。

 となれば、これから毎日このチェキをあがめなければだな。


 で、ここで一つ疑問が――チェキってどうやって保管するんだ?

 さすがに祭壇さいだんを作るわけにはいかないし、このまま置いておくと汚れちゃうし。

 何かに入れて保管しないとな。

 とりあえずカードゲーム用に使ってるスリーブに入れてみるか。


 カードゲーム用のスリーブを取り出して入れてみるも、サイズが合わない。

 横は余りに余りまくっている。それどころか縦はほんの少しだけ足りてなくチェキがはみ出る。

 カードゲーム用のスリーブでは、この宝物を保管することができないということがわかった。


 仕方がない。宝物を汚さないためにも、チェキ専用の写真入れみたいなの買うか。


 どこに売ってるんだろうか? そもそもそういう商品はあるのか?

 いや、チェキがあるんだ。絶対写真入れみたいなものくらいあるだろう。

 百均とかにあるかな? それともやっぱり写真屋さん? 電気屋さん?

 いや、ここは無難ぶなんにネットで探して買うか。


 僕は小一時間チェキを眺めた後、チェキ専用の写真入れを買うため、通販サイトをあさった。

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