第3話 午前の教室で妄想する

 とある公立高校の午前中。

 どこにでもある授業風景。

 教師が黒板に英文をすらすらと書いていく。

 その音が静まり返った教室にカタカタと響いている。

 俺はその教室の一番後ろの席から授業を聞いていた。

 黒板に一通り書き終えると教師が振り返った。


「それじゃ、この単語の意味がわかる人いる?」


 篠崎芳美、推定三十三歳。俺のクラスの担任だ。

 くびれたウエストの上にはこぼれ落ちそうなほどの巨乳。そして蜂のように大きなヒップ。

 なぜそんな体で教師をやっているのかと疑問に思うような妖艶ボディ。

 そんな教師に対して、俺は今日こそは言ってやりたいことがあった。

 俺は右手をまっすぐ手をあげた。


「あら、めずらしいわね。それじゃ杉下くん答えて」


「先生、その前に一言申し上げてもよいでしょうか」


 教師はいぶかしげな表情で、


「……それって授業に関係あること?」


「もちろん、あります!」


「ならいいわ。言ってみて」


 篠崎芳美は腕を組んで仁王立ちになった。聞いてやるわ、といった感じで。

 俺はひとつ咳払いして調子を整える。


「先生、ずっと気になっていたのですが、先生のそれ、でかすぎませんか?」


「――それって何のこと?」


「それです。その両腕に挟まれた無駄にでかいおっぱいのことです」


 俺は右手の人差し指で教師の巨大なバストを指差した。


「これのこと? これがどうかしたの?」


「でかすぎて授業に集中できません」


「……そんなこと言われても急に小さくできないわ。どうすれば授業に集中できるの?」


「そうですね。とりあえず、サイズだけ教えてください。それで僕の心はちょっとだけ落ち着くと思うんです」


「サイズを聞くと落ち着くの?」


「はい」


 しばしの沈黙。

 仲間たち(男子生徒)の唾を飲み込む音が聞こえた。


「……95よ」


「なんと……。予想以上でした」


「それで? 落ち着いたの?」


「逆に興奮しちゃいました」


「あなた馬鹿じゃないの?」


 俺は「失礼しました」と頭を下げて席に座った。

 だが仲間たち(男子生徒)は親指を立てて称賛のサインを送ってきた。


「はい、じゃあ、授業を続けます」


 今日も授業が続いていく――

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