第二節 生誕の儀
第三十四話
この子が生まれた日もこんな、澄み切った青空だった、と生誕の儀に臨みながら、
大祭殿の舞台の上で、嘉乃は
音楽が奏でられ、
嘉乃は、背筋を伸ばした。
白い地に金粉が散りばめられた和紙に筆を滑らせ、詠唱する。
高照らす
生まれ出づ光満ち満ち
白き髪 金の
大祭殿を中心に、その祝祭の煌めきが満ち満ち、そしてその煌めきは広がりを見せ、大祭殿から
病や傷を癒し、大地を潤す。
人々に幸いをもたらし、川や湖や海の水を清らかにする。
嘉乃は眩しい気持ちで
この姿を、生きて目にすることは叶わない。
その中で、乳母と思われる女性の愛情を、嘉乃は見た。そして、その息子たちと心の底からの信頼関係を構築している光景も。
病がちな
苦しそうな
どんなあなたでも、わたしは愛している。
あなたがどんな選択をしても、愛している。
ふいに嘉乃の頭に声が響いた。
運命の子の母よ。
運命の子と運命の子の父の困難を汝が引き受けることで、運命の子は生を全う出来るであろう。そして、運命の子の父は運命の子を、長く導くことが出来るであろう。
運命の子の母よ。
汝は、たとえ肉体は滅んでも、
それでいい、と嘉乃は思った。
この手にこの子を抱くことは長くはないのだろう。この子と
それでいい。
この子が生きていられるのなら。そして、愛しいあの人が生きていられるのなら。
嘉乃は天を見上げ、舞い落ちるユキヤナギの花をそっと手のひらに乗せた。
手のひらのユキヤナギは歓ぶように舞い、そして花を増やし、嘉乃と
花と光の祝祭が、降りやむことなく天からもたらされた。
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