第三十一話
「
「……
嘉乃は
「心配ない、大丈夫だ」
「ここのところ、祈りの儀式が続きましたから。文字の力をお使いになり過ぎたんです」
「
嘉乃は
「いや、……大丈夫だと思っていたんだよ。私も自分の能力がいかほどか分かっている。これくらいで倒れるはずはないのだ」
「――確かに。それはその通りです。
「じゃあ、どうして?」
「私も父上と同じ病なのだろうか? 父上も即位してから、急に病がちになったのだ」
「
「でも、じゃあ、なぜ?」
「――調べてみましょう。
「毒⁉」
「念のためです」
嘉乃は夢の声を思い出していた。
運命の子たる予言の王は
運命の子は、
もしかして、
嘉乃は迫りくる黒い予感に身震いをした。
*
嘉乃は夢の中にいることを自覚していた、
そこは真っ暗で光のない場所だった。
声が降って来る。
運命の子たる予言の王は
運命の子は、
汝、運命の子を、命を賭して守り給え。
嘉乃は声にならぬ声を出した。喉に石が詰まったかのようで、なかなか声は出なかったが、ふり絞って言った。
「もちろん、命を賭けてお守りします、もうすぐ生まれて来るわたしの子を。だけど、わたしは月原さま――
天皇家は何代か力のない
世界の
本来、この国には無かったものが持ち込まれ、
「
運命の子を産み給いし、運命の母よ。
命の
変えようとすれば、汝の命を削ることになる。
「かまいません。
汝の命を全て捧げよ。
さすれば、願いは聞き届けられるであろう。
真っ暗な情景がふと掻き消え、白い髪と金色の瞳の男性が見えた。
嘉乃そっくりのその男性は、真っ青な顔をして倒れた。
嘉乃が悲鳴を上げそうになっていると、濡烏の髪の女性が来て、祈言を唱えた。
次の場面では、その女性が和紙を鳥のような形にしたものを飛ばしていた。和紙の鳥が光りを放ちながら舞う姿はとても美しかった。
そして、その光が白い髪と金色の瞳の男性を癒していくのが分かった。
ああ、だいじょうぶだ、と嘉乃は思った。
わたしはきっと、この子を産むことしか出来ない。大きくなるまで育てることは出来ないのだろう。だけど、この子は多くの人に守られて、ちゃんと成長していくのだ。
それが、はっきりと分かった。
大丈夫。
それまでは、わたしの全部で守ってみせる。
――愛しいあの人も。
わたしの命に代えても。
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