第四節 選択
第三十話
「
人々が立ち去ったあとの閑散とした部屋で、
「なるほど」
「文字の能力のない女を
「私は
「文字の力があるからの」
「そうです。妃に文字の力がないと、天皇一人で責を負わねばならぬことも多い」
「……そのようなこと、分かっていて、
「正直、私も驚きました。せめて
「だろう? しかも、早々に懐妊した。これをなんと読む?」
「――私には分かりかねます」
「わたしはおもしろいと思うておる。あの
「と、申しますと?」
「あの娘の目にも覚悟が見える。それに」
「それに?」
「なんとなくだが、――
「と、申しますのは?」
「わたしは、
「それは私も見ましたよ。
「――わたしには、それだけでないように見えるのだよ」
「しかし、もし、文字の力があれば、ここまで追い込まれないのですから、あることを隠す方がおかしいでしょう」
「いかにも。……そうだなあ。文字の力はないのであろうなあ」
二人の間にしばらく沈黙が流れたあと、
「
「……わたしの担当は海だからの。それに、
「なるほど」
「そういう、おぬしも参加しないのであろ?」
「……私は武人でありますゆえ」
「そうですね」
「その中で、
天皇は、長歌による
それに対する反歌を詠むと、効力は増す。当然反歌の数は多い方がよい。通常は妃がこの任を担うのだが、嘉子妃には文字の力がないため、今回の豊饒の祈りで反歌を詠むのは
「しかし、
「さて。
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