第二十五話
穏やかな日々が続いていた。
忙しくはあった。
「
「予言、でございますか?」
「はい。長歌による神話のような……」
嘉乃は夢を思い出しながら言った。
「……失われた神話かもしれません」
「失われた?」
「はい。国の成り立ちや
「そう」
「……なぜ、このような質問を?」
「ううん、別に何でもないの」
沈黙が続いたとき、「よ…――
「清原王」
嘉乃はほっとして、名を呼んだ。
「……どうかした? 顔が青いよ」
「大丈夫よ」
「頑張り過ぎではないか?」
「覚えなくてはいけないことが、たくさんあるから」
「――
嘉乃はふいに気持ち悪さが込み上げてきて、口元を押さえた。
「すみません……気持ち、悪くて」
座っているのも辛くなり、机に寄りかかる。
「
「清原王……」
「
「ごめんなさい」と嘉乃が言うと、
「ご懐妊されたのでは?」
「……懐妊? 子どもが?」
清原王は喜びに満ちた表情でそう言うと、嘉乃の頬をそっと触れた。
「
「清原王」
二人の視線がからまった。――そこに慌ただしく人が入って来て、言った。
「清原王!
清原王は天皇に即位することになった。
近いうちに即位することになるだろうと予想はされていたが、想定していたよりも早い段階での即位であった。即位の儀の準備は慌ただしく行われた。
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